烈風





題名:烈風
原題:Second Wind (1999)
作者:Dick Francis
訳者:菊池光
発行:早川書房 2000.7.15 発行
価格:\1,800

 前作、前前作あたりでフランシスの老齢を慮ってしまうくらい元気のなさを感じていたのだけれど、そういう心配を吹き飛ばしてしまうほど力強い作品『烈風』の登場。

 今回の主人公は気象予報士。主人公はいつも世界のどこかにいる低気圧とその成長を気にかけている。変なミステリーと言われてみれば、かなり変な気もする。ぼくも山をやっていた当時は、けっこうな気象オタクだった気がする。地上天気図で飽き足らず高層天気図の本を買ってきて、短波放送の気象通報の時間に、漁業気象を聞いては天気図を引いて、あらゆる気圧配置を気にかけていた。等圧線を繋いで奇麗な天気図にまとまるとかなりの心地よさ、かつ満足感を得てほくそ笑んでいたものだった。今でも雲を観て、日本の気圧配置を想像するのはけっこう好きだけれども。

 さてそういった楽しさは個人的にあった。けれど今回の作品は競馬シリーズらしいこじんまりしたイギリスの田舎という舞台、あるいはそこに住む人たちによる庶民性のようなものが、スケールが巨大な話であるだけに失われていて少し面食らうところがあた。

 つまり俗に言う謀略モノに終始してしまっている点、要するにディック・フランシスっぽくないのである。ハリケーンの目のただ中をフライトしたり、大嵐の中を漂流したり、核爆弾関連の謀略にせよ、諜報組織らしきグループにせよ、大がかりだなあと感じる点。ちとサービス過剰なのかと思われる点などなど。こういうのはどちらかと言うと、ぼくはフリーマントル方面に求めたりするのであって、やはりフランシス関連での悪党は、むしろどこにでも潜んでいそうなスケールの小さい小悪党が小金目当てに悪さを企むという方が……と思ってしまう。

 作者が元気だという点では、本当にほっとしたのだけれども。

(2000.11.05)