横断



題名:横断
原題:THE EDGE (1989)
作者:DICK FRANCIS
訳者:菊池光
発行:早川書房 1989.11.30 初版
価格:\2,000(本体\1,942)

 やっとハードカバーに追い着いた。

 さて今回の作品はカナダ鉄道に乗りこんで、悪党をマークするジョッキー・クラブ調査員の話。とっても地味な「見えない男」という主人公だが、あまり私生活とは無縁なので、『奪回』あたりの主人公と同じプロフェッショナルという意味でイメージが重なる。だけど『奪回』の派手さがストーリーにない上に、問題の列車が「競馬ミステリー列車」なというイベント列車であり、劇団が劇中劇のミステリーをからめたりするという、まことにサービス満点ぶり。

 でもサービスがよければいいということにはならないのが、旧来のフランシス読者だったりすることも事実なのだ。ぼくはこの作品もあまり好きではないぞ。

 カナダ鉄道なんていうだけで十分魅力的な設定なのだが、やはり物語の方がは、特に事件が起きたわけでもないという何だか弱々しいプロットのように思え、納得がいかないまま進むのである。ぼくなぞはLDを取り出して、映画『カナディアン・エキスプレス』まで再鑑賞して自分を盛り上げようとしたのだが、こんなことも助けにはならなかった。

 ここのところのフランシスの作品、最近登場人物が多すぎる気がする。スケール的にアップしようという気持ち、実験的な試みもわからなくはないのだが、彼はフランシスとして期待されているスタイルだけで書いてもらえればいいような気がするのは、ぼくだけであろうか?

 マンネリがいやだと言いながら、いざマンネリから外に出られると当惑するという、誠にもってわがままな読者であります

(1994.03.25)