黄金



題名:黄金
原題:HOT MONEY (1987)
作者:DICK FRANCIS
訳者:菊池光
発行:ハヤカワ文庫HM 1993.10.15 初刷
価格:\700(本体\680)

 誰かが褒めたと思えば、誰かが嘆いている作品だけど、ぼくは、この作品に限っては嘆き派に一票。フーダニットなんぞフランシスは書かなくていいのだよ、まったく。登場人物が、一族郎党大変数多く名を連ねて、その上遺産がどうたらこうたら、となるとさすがに巧いフランシスでも、読んでいて疲れた。

 『黄金』が読み進まなくて……と嘆いておられたお一人は、一ヶ月後にお聞きしたら『黄金』の記憶がない……というお返事で(苦笑)、まあつまり、その程度の作品なのではないかなあ、というのがぼくの正直な感想。

 もしかしたらシリーズ中一番長い作品なのだけど、これがまた冗長という感じで、余計な部分が多く、切り詰められた従来のフランシス世界とは別のものであるように思われたのでした。

 この作品はきっと、フランシスが、たまには違う種類の小説にも挑戦して見ようとした実験作ではないのだろうか? 解説でもこの作品を機にフランシスは少し色調を変えてゆく、みたいなことが書いてあるので、それが本当ならたまらないなあとの思いであるのだ。

 この作品で一気にフランシス読破のイキオイがそがれちまったい!

(1994.03.25)
最終更新:2007年07月15日 23:23