侵入


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題名:侵入
原題:BREAK IN (1985)
作者:DICK FRANCIS
訳者:菊池光
発行:ハヤカワ文庫HM 1991.8.15 初刷
価格:\640(本体\621)

 驚いたことに、この作品の主人公キット・フィールディングは大変タフである。タフな騎手である。おそらくシリーズ中で最もタフさを前面に出した、強気の主人公ではないのだろうか? 今までの主人公たちは一つやられて一つ返すといった形に終始していたような気がするが、今回はやられる前にやっておくという形がほとんどであり、主人公自体は、あくまで弱き者たちを救うナイトである。

 ロミオとジュリエットをもじったような二つの家の闘いを構図に置いているが、実際的な戦いはスクープ新聞に対し行われる。このスクープ新聞とマスコミの影響力の大きさに関しては『名門』で一度取り上げられた方法そのものを、フランシスがさらに凶悪にして一冊に相当する悪玉に昇格させたというところ、ではないだろうか。名門の悪質なコラムと今回のコラムは、かようによく似ている。

 いつもは巻末近くになると必ず大きなピンチを迎えるパターンであるのだが、この本ではそのアレンジがちょっと変わっていて、三つ巴の形になっている。この辺りで主人公がかなり冷静に処断を下す辺り、遠山の金さんばりの快哉を叫びたいところなのだが、いつもの一対一の対決に較べるとかなり焦点は絞りづらくなってきているように思えた。悪党が多すぎる分だけ、主人公が能力過剰になってしまい、かえって物足りなくなっているのだ、きっと。

 それにしても障害レース・シーンの描写の多いこと。こんなに競馬自体を執拗に描いている作品は、むしろ少ないのではないだろうか。ぼくは少し驚きました。こういう点で最近の作品が、少々厚手になっているのかもしれない。水増しはされていないと、ぼくは思う。

(1994.02.06)