名門


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題名:名門
原題:BANKER (1982)
作者:DICK FRANCIS
訳者:菊池光
発行:ハヤカワ文庫HM 1988.10.15 初刷 1991.2.28 4刷
価格:\660(本体\641)

 銀行家が主役というだけで、もう身が引けそうだが、そこはフランシスでやはり安心して読める一冊だった。どちらかというとハウダニットの小説で、薬剤関係の知識を駆使したトリックであるらしきことは創造がつく。トリック自体は技術的なもので推理小説へとは結びつかないけれども、主人公が謎に対決しつつ、成長してゆく物語であることはいつもの通り。

 今回の重要人物の突然の死についてはやりきれなかったけれど、それほどまでに脇役たちに息を吹き込んでいるところが逆に見事だったと言う他ない。背景で連続殺人事件が続いていて、警察はそちら方面と直結させたがるまるっきりの阿呆であり、いつものフランシスらしく警察は頼れない存在に成り下がっていたりもする。

 また主人公が道ならぬ恋に身を焦がすのだが、そこがまた欲望と抑制という、いつものフランシス節とも言うべき香辛料がよく効いていて、フランシス・ファンにはたまらない読みどころとなっていると思う。

 最後は少し甘すぎる嫌いはあるけれど、フランシスというのはハッピーエンドに徹しているのだから仕方ないのだろう。あとがきでの池上冬樹のこの作品への評価は大変高いのだけども、ぼくはそうでもない。前半のストーリー展開が重すぎる気がする。それもそのはずで、これは三年に渡るストーリー。馬の種付けを主題にしているから長大な時間構成が必要となったのだろうが、その構成の分だけ密度が粗くなっている気がしないでもないのだ。

 しかし、『罰金』『反射』の系譜を継ぐ、ホームドラマとしての人間関係の厚みは、相変わらず素晴らしいし感動的であると、ぼくは思う。

(1994.01.30)