27



題名:27(トウェンティ・セヴン)
原題:27 (1990)
作者:WILLIAM DIEHL
訳者:田村源二
発行:角川文庫 1994.9.25 初版
価格:上\760(本体\738)・下\720(本体\699)

 ディールは『フーリガン』で虜になり、遡って『シャーキーズ・マシーン』『カメレオン』を入手した後すっかりやみつきになった、ぼくのかなり贔屓な作家であるのだけど、その後『タイホース』が出て、しばらくご無沙汰。12年間で何とこれが5作目という寡作な作家である。寡作な作家のたまの作品は力作が多いのだけど、これもまたそう。しかも相変わらずうまい、巧い、美味い……!

 ディールにしては珍しいナチもの、すなわち時代劇ということで、楽しみに紐解いた本書であるが、大戦中の風俗を背景に散りばめながら、実に楽しくはらはらと盛沢山にストーリーを展開してくれるこの力は相変わらずである。

 ナチものということで特有の仮借のない悪が、前半部すっごく暗く感じるのだけど、その悪の体現者みたいな27と呼ばれる工作員がすごいだけではなく、これを追跡する側の主人公がそれなりの状況へ追い立てられて、鬼のように変貌して行く様が凄い。

 そしてディールの一番いい点だとぼくが常々思っている脇役一人一人の造形が、相変わらずたまらない。例えば三人のグループがいるとすると、この三人がすべてしっかりと性格分けされている。このあたりヒギンズ『鷲は舞い降りた』のシュナイター小隊の皆がシュタイナーのコピーに近いところにいることなど考えると、ちょいと人物の扱い具合が英米の差だろうか、かなり違うような気がするから面白い。

 そういえばヒギンズも書いている銀行強盗のデリンジャーがストーリーに重要な影響を及ぼしているあたりもサービス満点。主人公の冒険追跡行に行き合うすべての人びとが、癖があって忘れ難くて、本当に悪党マフィアの追跡のプロなんて人物ひとり取っても、ううむと唸らしめてくれるのである。

 「白鯨読んだことありますか?」という主人公への行きずりの保安官のセリフがぐっと来た。そうだ、どうせなら追う相手は大きければ大きほどいい。強ければ強いほど、闘いはタフでハードになるし冒険小説は冒険小説として凄味を帯びるのである。

 というわけで、この本はぼくは、文句なし、今年のベスト3本指に入ります。

(1994.10.05)