夜明けのフロスト クリスマス・ストーリー 『ジャーロ』傑作短編アンソロジー3




題名:夜明けのフロスト クリスマス・ストーリー
   『ジャーロ』傑作短編アンソロジー3
編者:木村仁良
作者:R・D・ウィングフィールド、他
訳者:芹澤 恵、他
発行:光文社文庫 2005.12.20 初版
価格:\571



 『クリスマスのフロスト』とは別のクリスマスを過ごす、あの警部フロストの新しい中篇ストーリーを収録したアンソロジー。クリスマスのたった一日にいきなり沢山の事件が押し寄せて、窒息しそうになりながらも、次々と解決に導いてゆくフロストの八面六臂の活躍ぶりが、とても懐かしいし、こうした物語を、別のすべてのクリスマス作品集と一緒に読めるアンソロジーなんて、とても気のきいた本であると思う。

 短編の名手エドワード・D・ホックの引退刑事レオポルドのシリーズ『クリスマス・ツリー殺人事件』。同じく短編作家ナンシー・ピカードの獣医と孫娘のやりとりシリーズ『Drカウチ、大統領を救う』。本職はロック・ミュージシャンだというダグ・アリンの『あの子は誰なの?』、レジナルド・ヒルはダルジール&パスコーのシリーズ『お宝の猿』なる本格ミステリ。夫婦による共同執筆短編が興味深いマーシャ・マラー&ビル・プロンジーニのそれぞれのシリーズであるシャロン・マコーン&名無しもの合体作『わかちあう季節』。ピーター・ラヴゼイのピーター・ダイヤモンドのシリーズ『殺しの口づけ』といったラインナップ。

 いずれも長短編のシリーズ主人公を活躍させたアンソロジーであること、クリスマス・ミステリーであることなどが特徴。もちろん浅学なぼくの知る主人公はフロスト警部だけであるが、なかなか他にも興味深い作品が詰まったお徳用福袋みたいな一冊であった。

 個人的にとても印象に残ったのがダグ・アリンの一作。クライム味をのっけからさらけ出す危険なまでの一人称文体で綴られるタイトなストーリーだが、最後の最後にほろりと泣かせる。ミステリーそのものを軸にしながら、たったこれだけのページ数で、ここまで頑固な男どもをしっかりと描き、最後にぐらりと心を揺さぶる作家というのは、ホンモノだよな、と思う。思わず本職のロックの方まで聴きたくなってくるのは、おそらくぼくだけではあるまい。

(2005.12.25)