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悪党パーカー/電子の要塞




題名:悪党パーカー/電子の要塞
原題:Firebreak (2001)
作者:リチャード・スターク Richard Stark
訳者:木村二郎
発行:ハヤカワ文庫HM 2005.2.15 初版
価格:\760




 旧作にまだまだ読み残しがあるというのに、新作が出れば出たですぐに読みたくなる。もっとも今回の場合は紆余曲折があって、『怒りの追跡』『掠奪軍団』の後日談として引き受けている本編ゆえに、先にこの二作を事前準備的に読んでおいた。格別それらを読まなくても本書そのものは十分に楽しめる構成になってはいるが、『怒りの追跡』で初登場した個性的な悪漢どもに後日談があるという楽しみはシリーズ読者の宿命として味わえるものは何でも味わいたい。単独ではなくシリーズとして、というのが人情。

 さて本書ではいよいよパーカーもデジタルで防御された要塞に乗り込んでゆくという、いわば時代を感じさせるストーリーになっている。87分署シリーズが9・11を乗り越えたように、パーカーのようなレトロな犯罪者はテクノロジーは新参の仲間にお任せして自分は荒っぽいところを担当するということで徹底しており、そのあたりの距離感や違和感がなんとなく楽しい。旧人類の中に入ってくる新人類の仲間がこれまでのパーカーの判断基準にないタイプであり、彼がパーカーのテストを合格するかどうかという興味も、この小説の副次的な楽しみの一つとなっているわけである。

 さてそうした電子の要塞に挑もうというパーカーが、過去から甦った亡霊どもの問題を片付けなくてはならなくなる。ほとんど本編とは関連のないところにありながら、今度の仕事がなければ彼らとの運命の再会もなかったというあたりが味噌。本編を食い散らかすようなサブストーリーへの興味に引きずり込まれてゆくあたりが、また嬉しくもあり、楽しくもあり……。

 人間の複雑怪奇さを抉り出す人物造詣テクニックが凄い。離合集散を繰り返す仲間たちも、要塞の主も、過去からの亡霊たちも、生き残った被害者の心理も、どれもこれもがねじくれ曲がっていて、一癖も二癖もある印象にまみれている。どの人間も有機的に作用し合う。そんな複雑さの中で、なんと主人公パーカーがシンプルであることか。ある意味健康的なまでの一途さと一貫性。彼と取り巻く周囲の人物たちとの対比を見るだけでも、なぜパーカーがこのシリーズの主人公であり続けているのか、そのあたりの気配がふとわかったりするのである。

(2005.03.07)