悪党パーカー/掠奪軍団


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題名:悪党パーカー/掠奪軍団
原題:Plunder Squad (1972)
作者:リチャード・スターク Richard Stark
訳者:汀 一弘
発行:ハヤカワ・ミステリ 1981.12.15 初刷
価格:\620

 シリーズの何冊かを飛ばして本書を手にとったのは、何よりも『怒りの追跡』のダイレクトな続編に当たるからという単純な理由から。収まりの悪かったパーカーの処理に疑問を感じないでもなかったから、本書での決着は、パーカーという男の非情を完成させるためにも是が非とも必要なのだ。

 ウエストレイク名義になるが、ちょうどドートマンダーものを書き始めたのが1970年。『ホットロック』のアイディアは、パーカーように考えたが、どうもパーカーのシリーズと合わない滑稽さがあるということで、一気にユーモア・クライムの味を出し、明るいシリーズを別立てで書き始めたようである。

 本書はどことなく『ホットロック』に似たところがあると思う。不運なドートマンダーの何度もの仕事(ヤマ)に挑んでゆく姿が、本書のパーカーたちにかぶるイメージがある。強奪という仕事がいつも上手く行くわけではないし、それを阻む原因こそが小説のねじれ力となって読者側に興奮やスリルを提供する。失敗を重ねてゆく過程で苦しむ仕事師たちの季節を描いたのが本書だと言っていいだろう。パーカーはパーカーなりの非情のプロフェッショナリズムを貫徹させているのに、その姿勢さえもが不運を呼ぶ下りなぞは、作者の面目躍如たるシーンであると思う。

 なお、あるシーンがジョー・ゴアズの『死の蒸発』でも使われている部分だと解説にある。自分は未読の作品なのだが手元にある該当の章を繰ると、なるほどそっくりそのままあちらの主人公ダン・カーニーとこちら側のパーカーとが会話をしている。こんな前衛的でサービス万点な章が用意されているというのが何とも粋である。互いに遜色のない当代の作家であるあたりが何とも嬉しい。『死の蒸発』をすぐにでも読みたくなったが、いつまでも『電子の要塞』に取り掛かれないため、これはまた、後日。

 それにしても本書の邦訳が、件の『怒りの追跡』の五年も前に成されているという矛盾はリアルタイム読者にとって辛いものがあったろう。キャラクターの最期に関わるような物語の邦訳を前後させるというのは、シリーズ読者にとって最悪としか言いようがないはずだ。本国での出版順に正しく読める後発読者はある意味幸運なのである。海外ミステリの読者が多かれ少なかれどこかでは味わうことになる矛盾の一つである。

(2005.02.27)
最終更新:2007年07月15日 17:48