悪党パーカー/殺人遊園地



題名:悪党パーカー/殺人遊園地
原題:Slayground (1970)
著者:リチャード・スターク Richard Stark
訳者:石田善彦
発行:ハヤカワ・ミステリ 1999.10.31 4刷 1977.1.15 初版
価格:\1,000

 ハヤカワ・ミステリ復刊フェア参加作品、十作中に選ばれた唯一の<悪党パーカー・シリーズ>。一冊でも多く読みたい絶版追っかけ読者としては嬉しい一作。

 この物語は、のっけから現金輸送車の強奪シーンに始まり、パーカーは奪った金を持って単身、雪の遊園地に逃げ込む。警察は彼を追うことができなかったが、何とパーカーは所轄警官と取り引きをしているマフィアに目撃されてしまう。

 悪徳警官とマフィアの合同追跡チームを相手に、閉ざされた雪の空間で一匹狼のパーカーがどう死闘を繰り広げるかという、いきなり理屈度外視の死闘アクション小説なのである。うーん、これは面白い。

 敵がやってくる前に遊園地ならではの多くの仕掛けをチェックして、罠を張り巡らせておくパーカーの頭脳と、アドリブ的死闘に対処してゆく度胸とが、この本の見せ場である。

 ぼくは、この手のペーパーバック的な乗りは大好きである。1970年代にはこの手のノワール系アクション路線はペーパーバックの定番であり、今もこれらは腐敗していず、新しい読者の時間を楽しませてくれることが多い。<87分署シリーズ>がそうであり、このパーカーがそうである。これらの作品は古くなるということがない。その点にいつも驚かされる。思えばぼくらの求める娯楽をエッセンスのようにコンパクトにまとめあげて作られたようなペーパーバックの名品には、腐り果てるような余分な装飾は何もないからなのだと、いつもつくづく思うのだ。

(2000.02.06)
最終更新:2007年07月15日 17:46