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ブラッド・キング


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題名:ブラッド・キング
原題:Blood Stained Kings (1995)
作者:Tim Willocks
訳者:峯村利哉
発行:角川文庫 1996.12.25 初版
価格:\880(本体\854)



 ティム・ウィロックス第二作。三作目に関してはまだ噂もないというから、この気まぐれな若い作家の貴重な第二ステップと言える本書。世の二作目への期待は相当なものだと思うが、これを裏切らぬ凄絶な物語作りを、この作者はまたもやらかしてくれた。

 入念に練り込まれたプロット。用意された異常なキャラクターの数々。伝奇的な叙述。修辞学的心理描写。舞台設定、時間設定の妙。まさにこの作者以外に書くことのできない物語を、またもまたも紡いでくれたのだ。

 この作者は大の映画好きとあって、アメリカン・アクション・ヒーロー・ムーヴィーを観ているのに近い印象がある。おどろおどろしく血腥い描写や、どろどろの情念のぶつけ合いの中にも、どこかふっ切れたアクションの野太さみたいなものを感じさせるのは、そのあたりの映画っぽさとでもいうべき部分だと思う。

 前作もそうだったが、最初はわかり難い混沌なのに、その中からいつのまにか、敵と味方の陣営が真っ二つに分かれ、やがて戦争が始まる。そのクライマックスへの筋運びが楽しい。

 西部劇というのは、いつだって最後は決闘シーンで終わるものだ。その決闘シーンを演出するために2時間弱もの時間を、観客は登場人物たちに付き合ってゆく。決闘シーンを際立たせるための、そこまでのストーリーがきちんとしていない映画はクライマックスにどんなに金を注ぎ込んでもたいていは出来の悪いものになってしまう。

 そのあたりの呼吸を掴んだ作品というか。まあ、ある意味での天才作家ではないかな。日本では花村萬月氏が天才肌の作家だけど、きちんとプロットを組んでくれる読者サービスに足りないものがあるので、プロット組みにまで天才肌を発揮するティム・ウィロックスは、やはり世界版の天才肌だ。

 と書いたところで、彼の作品世界に近いムードというと、船戸与一かもしれない、などとふと思ってしまった。どろどろの情念の人形たちが血塗れのダンスを踊りにある点に終結する道行きの物語、という意味では、船戸ワールド、意外にこの作者と近いものがあるかもしれない。いつも出てくる人種のごった煮もイギリス人作家らしくないし、ある意味で自国にとどまっていられないスケールの大きな作家として、共通点などがあるのかもしれない。

 そう。英国版船戸与一。舞台は船戸も得意とする北アメリカ。なんていいかげんなことを言ってしまっていいものだろうか?

(1997.01.16)