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裸者と裸者 下 邪悪な許しがたい異端の




作者:打海文三
発行:角川書店 2004.09.30 初版
価格:\1,500

 上下巻というよりも、連作長編、あるいはサーガである。だから上下で終わらせぬために、作者が構想を練った全10巻くらいの大河小説を実現させるためにも、固定層の読者を惹きつけるだけのオーラをこの作品が発してくれたなら、と希う。

 本作は、関東北東部から舞台を一気に東京都下に変えて、そこに『ハルビン・カフェ』でもやったように架空の街(あるいは独立国)を地図入りで設定。政府軍、反政府軍という二色の支配の届かない中立無法地帯として、あるいは経済の闇ルートにおける放置されたアンタッチャブル都市として、作者は現在の多摩センター駅付近を中心とした<九竜シティ>を作り上げる。

 また主人公は、作者が比較的得意としている、若く、切れ味鋭い少女たち=月田桜子・椿子という双子の姉妹。上巻の主人公であった海人が、殺戮現場から救い出した二人である。海人、他、前巻でおなじみのレギュラーは本書では脇役の扱いで、登場機会も多くない。

 しかし軍隊に組み入れられ、孤児部隊の中でマシンと化してゆく海人の物語よりも、自力で戦争のシステムを破戒しようと立ち上がった少女トラック・ドライバー軍団<パンプキン・ガールズ>は、さらに過激で容赦のない物語を突き進んでゆく。

 前巻から継続している海人の母探しはサブストーリーとしてかろうじて生きているものの、こちらでは双子の少女たちの存在感が一対のコアとなって生々しく、印象深い。教育のない海人のセリフがひらがな中心であるのに比べて、少女たち、あるいは各組織の女闘士たちのセリフは抽象熟語を多用した哲学的(あるいは詩的)ニュアンスに満ちていて、同じく哲学的であった作品『Rの家』を思い出させる。

 スタイリッシュでハイテンポ。過激で、張り詰めた物語。この独自な打海的世界空間をこの二冊だけで終わらせて欲しくない。それなりに配置された新たな人物たちにも光を当てた形で、次の作品を今すぐにでも手に取りたくなるような、わくわくするシリーズとして際限なく膨らんでいって欲しいところだ。