歓喜の島


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題名: 歓喜の島
原題: Isle of Joy (1997)
作者: Don Winslow
訳者: 後藤由季子
発行: 角川文庫 1999.9.25 初版
価格: \952



 クリスマスは過ぎ去ってしまったけれども、クリスマスに読みたい本というのが確かにある。たとえばこの作品。クリスマスを軸にストーリーが展開する話でありながら、クリスマス前後の描写がひたすら美しいこと。それがぼくのクリスマス小説の条件。こういうのを満たすのは、ぼくは今まではエド・マクベインの『ダウンタウン』だったのだけれどこれを機会に、宗旨替えをしようと思ったくらいだ。

(ちなみに装丁にごまかされて村上春樹の『ノルウェイの森』を読んではいけない、あれは暗い小説なのだ)、

 でも、『87分署』でバート・クリングがクレアとデートしたシーンのように、街中でウォルター・ウィザースとアン・ブランチャードがデートして過ごす夜は素敵で美しい。恋人がジャズ・シンガーで、彼女の歌を客席から聴いてうっとりする。

 <きみのため、ぼくのため、そして神と罪の赦しのために>

 ジャズのタイトルで綴られるページを繰っているうちに、もう一つ思い出したのは矢作俊彦のマンハッタン・オプ・シリーズだった。やはりマンハッタン島(=歓喜の島)にはジャズがこれ以上ないくらいに良く似合う。同じインプロビゼーションを利かせてくれるハードボイルド小説も。

 ニール・ケアリーのシリーズと比べるとぐっと控えめで渋味のあるアダルトなムードの長編小説。エルロイ『ブラック・ダリア』、そしてテレンス・ファハティ『耀ける明日へ』の時代。多くの作家が書きたがる50年代はジャズに映画に彩られてかかれることが多い。新しくも古臭い作家ウィンズロウがそんな時代、そんなニューヨークとどう出会ったか、そんな興味の尽きることない一冊である。

(1999.12.26)