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ボビーZの気怠く優雅な人生




題名:ボビーZの気怠く優雅な人生
原題:The Death And Life Of Bobby Z (1997)
作者:Don Winslow
訳者:東江一紀
発行:角川文庫 1999.5.25 初版
価格:\780



 スラップスティックな味わいのピカレスク・アクションとでも分類したいような気がするが、多くの傑作がそうであるように分類しきれない部分がこの本にも当然多々存在する。

 現在形の文体による疾走感は、あるところではドタバタ感であり、あるところではむしろハードボイルドでさえある。正体の掴み難い作品ではあるが、より大きな分類である「エンターテインメント」の名がこれほど相応しい本というのはあまり世の中に存在していないかもしれない。

 どちらかと言えばじっくりと主人公まわりを描きこむ力作タイプの探偵ニール・ケアリーのシリーズに比べると、このノン・シリーズ作品は驚くほど端的であっさりと表現を連ねてゆく。

 シリーズ作品『高く危険な道を行け』に似た西部劇方向のプロット。そしてシリーズとの共通点である擬似父子という主人公まわりの設定。一方で時と言う名の砂を積み上げてゆくような作業をしながら、こちら側でウィンズロウは遊び心たっぷりの楽しいアクション編をスケッチしていたのだとわかる。作家の二つの気分が書かせたのであろう、二種類の違ったテイストの物語世界。

 とにかくサム・ペキンパもびっくりの超弩級アクションを引っさげて、多くの敵という敵が主人公である泥棒のティムに迫ってくる。どう収まりをつけるのか心配になってくる頃にきちんと、パズル絵のようにすべてを填めなおしてくれる手腕は、シリーズ作品でも実証済み。

 今年、もい一冊ノン・シリーズが発売される。シリーズと合わせて年間3冊の邦訳というのも、彼の作品のハイグレード・エンターテインメント性を考えれば容易に頷くことができるというものである。

(1999.09.19)