ストリート・キッズ




題名:ストリート・キッズ
原題:A Cool Breeze On The Underground (1991)
作者:Don Winlow
訳者:東江一紀
発行:創元推理文庫 1993.11.19 初版 1999.2.19 20刷
価格:\800



 掟破りの読み順のせいで著しく興が殺がれ、甚大な被害を個人的、心情的に受けたのが、ぼくの場合、間違いなくこの作品であったろう。何しろシリーズ始動作ということで、さすがに読んでみてショックばかりなのは、この作品が主人公の生い立ち・環境描写にその多くの部分を費やしていること。

 プロフェッショナルで老獪な探偵ジョー・グレアムにニールが拾われた経緯はもちろん、探偵稼業のイロハを叩き込まれる過程、エピソードの数々。そしてニールの職業的基盤が出来上がってゆくさま、すべての意味でシリーズにとって当然重要な作品である。

 それをぼくは『高く孤独な道を行け』の後に読んでいるのだ。こんなに悲しいことは滅多にない。たいしたシリーズじゃないと高を括っていたわけではないけれど、これほどの傑作シリーズと知らなかったのは事実。衝撃は大きく、悲しみは深い。

 活劇という意味では『高く孤独な……』に負けるけれど、内容的にニールという独自な主人公設定に最も重心を置いた作品である。だからこそ……なのであった。こんな失敗は犯してはいけない!

(2000.01.16)
最終更新:2007年07月15日 15:50