報復ふたたび




題名:報復ふたたび
原題:Last Witness (2005)
作者:ジリアン・ホフマン Jilliane Hoffman
訳者:吉田利子
発行:ビレッジブックス 2005.11.10 初版
価格:\830


 B級サイコ・バイオレンスと個人的には位置づけている『報復』のこれは続編。ピエロの仮面を被った男にかつてレイプされたトラウマを持つ女性検事補C・Jが、刑務所に叩き込んだ……はずの容疑者の裁判、つまり前作の後日談をサブ・ストーリーに組み込みつつ、本筋はまたも不気味な展開を始める。

 マイアミ州デート郡。警察官連続惨殺事件が唐突に始まる。パトカーの運転席で首を切り裂かれ、おびただしい血液にまみれた無残な死体。警察官殺人に対し、怒りを燃やすマイアミ市警の喧騒を背景にして、C・Jは前作の逮捕劇に絡んだ不当捜査の疑惑を、独り握り締める。

 一方である匿名の贈り物が届けられる。あの過去のレイプ犯しか知り得ないはずの記念品が。

 次々と重ねられてゆく警察官の死骸に加え、C・Jを心理的に追い詰めてゆく過去からの警鐘、そして裁判の進行のさなか不敵にC・Jに笑いかける『報復』のサイコ・キラー。これは全く別の犯罪なのか、それとも『ふたたび』の『報復』なのか、全体像が把握できないまま、張り詰めた空気だけが世界をよぎる。

 前作と濃密に絡み合ったプロットが、読者を深い罠に連れ出し、ラストはまたも前作のようにお決まりの一対一の対決シーン。女性主人公は必ず最後に命の危機に瀕するのだ。頼りになるのかならぬのか定かではない捜査官ドミニクとのラブ・ロマンスを含め、定番の活劇を組み立ててみせる、アメリカ流のB級犯罪スリラーだ。

 『報復みたび』と言われても、また一年後には大筋以外はたいてい忘れてしまいそうな、あまりに娯楽主義に徹したジェットコースター小説に、ぼくはちと食傷気味である。

(2005.12.04)
最終更新:2007年07月15日 15:32