報復


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題名:報復
原題:Retribution (2004)
作者:ジリアン・ホフマン Jilliane Hoffman
訳者:吉田利子
発行:ヴィレッジブックス 2004.11.20 初版
価格:\903



 『このミス』にアンケート回答を寄せたり、フォーラムの新刊情報を頂いているからだと思うだが、出版社が格別に力を入れた新作などを、ぼくはたまに寄贈いただくことがある。ヴィレッジブックスとして製本前の状態でいただいたのは初めてだから、これが格別な作品なのだろうということは想像が着く。10月中に頂いていたのだが、11月以降の発売作品ということで本年度『このミス』の対象作品としては間に合わなかったことになるが、もし間に合っていれば少々衝撃的な作品になっていたかもしれない。

 しかし本書の骨格はサイコ・スリラーである。<史上最凶>を謳い文句にするくらいのサイコパスは、確かにハンニバル・レクター以来の存在感を見せつけるシリアル・キラー。サイコ・スリラーの時代は十年前に終わったと言えるのかも知れないが、同時にリーガル・サスペンスとしても楽しめるところが本書の魅力であると思う。

 衝撃の導入部に始まるテンポのよい展開が、本書の600ページ超の分厚さを忘れさせてくれる。検察官であった女流作家ならではのリアリズムが作品全体に現代的な陰影を与えているばかりか、レイプされた女性のその後の再生と挫折という心の物語を主軸に進めてゆく物語の深みが何とも印象に残る。ストーリーはシンプルでありながらどこか伏線や仕掛けの匂いがして、見かけよりずっと罠に引きずり込まれてゆく感覚が離れない。

 楽しみが半減すると思うので、内容についてのほとんどを紹介することができないのだが、三部編成の構成も極めて納得がゆくように展開されている上、悲鳴をあげたくなるくらいの恐怖と残酷が多くの人間たちをクライマックスに収斂してゆく様は新人作家にはとても思えない凄みがある。

 敢えて言うならプロフェッショナルであるはずの作中人物たちが大きなヒントを見逃し、なかなか解決に持ち込めないことの不自然さ。また。司法も、ヒロイン自信も、最終的な決着のつけ方に少々強引で皮肉めいたものがあり、このあたりは女性作家ならではの選択肢なのだとは思うが、一方で煮え切らないものが残る。イラクを叩き潰しにかかるブッシュに繋がるアメリカ的正義。罰する正義。銃の正義。そういった日本人的にはなじめないものを感じる人が多いのではないかとの懸念が残る。

 しかしそれ以上に肩の凝らないB級スリラーとして理屈抜きで怖さと謎解きを楽しんでいただいたほうが宜しいかもしれない。レクターのシリーズをぼくのようにB級スリラーへとして割り切って楽しめる方であれば本書には作家の確かな底力を感じていただけるであろうし、何よりも次の作品はやはり相当に楽しみな気がする。

(2004.11.21)