カジノ・ムーン



題名:カジノ・ムーン
原題:Casino Moon (1994)
作者:Peter Blauner
訳者:岡田葉子
発行:扶桑社ミステリー 1997.9.30 初版
価格:\686

 アトランティック・シティ、燦然たるカジノの夜、シチリア出のけちなマフィアたちとバイオレンス……そんな中であがきにあがき、アメリカン・ドリームと堅気の生活を夢見る若者が、ボクシングのマネージメントという一大事業に身を乗り出す。

 地味ながらもこれだけの素材の良さと、純文学的とも言えそうな凝った文体、描写の魅力等で、引っ張らってゆく力技の一作。マフィアが大物でなくどこか「一家」を匂わせる雰囲気で、ボスよりもその右腕たちの義理人情の世界が日本の侠客を思わせたりもするが、やはり暗黒街は「非情」の二文字で綴られている。いいムードの本だなあとつくづく思う。

 なにやら最近めっきり翻訳されなくなったユージン・イジーのあのシカゴなどを髣髴とさせる。これは、社会の裏路地小説であるのだ。そして、最後はやっぱり泣ける。それも心で。しみじみと。うーむ、こういう小説を読みたいとつくづく思っているのである、ぼくは。

 ハードカバー『イントルーダー』と合わせて今年翻訳されたこちらは文庫だが、発表年度が古くなければこちらの方がハードカバーの値段にふさわしいかもしれない。かなりの拾い物。ブローナーというこの作家、残り一作も探し出して読まねば!

(1997.11.25)