ドッグ・イート・ドッグ




題名:ドッグ・イート・ドッグ
原題:DOG EAT DOG
作者:EdwardBunker (1996)
訳者:黒原敏行
発行:ハヤカワ文庫NV 1997.7.31 初版
価格:¥700



 ノワールの王道を行くような作品。犯罪者生活からまさに作家になることで足を洗うことのできた元囚人エディ・バンカーの尊顔を、ぼくは昨日ようやく映画『レザボア・ドッグス』で確認することができた。うーむ、渋い。

 そういう人の手になるにしては、この作品はノワールの王道を行っているのだ。刑務所を出た途端に次の仕事にかかり始める主人公とムショ仲間たち。一見更生して見えるのに、ダチの誘いには攻し切れず簡単に家族に背を向けてしまう"ビッグ・ディーゼル"っていかにもリアルな存在だ。仲間なのに何をやらかすかわからないサイコ野郎の"マッド・ドッグ"は、こうしたチームには欠かせない危険な存在。こんな連中一ヤマ踏まなくてはならない。

 それだけでドラマなんて十分出来上がってしまう、と言わんばかりにスタンダードかつ王道をゆく重厚な作品である。スタンダードだから地味目な展開ではあるけれど、多くのお約束事である、仲間同士の裏切り合い、突発事件による予想外の結末、など、ただのリアリティというだけでは済まされない、物語性豊かな語りがここには確かにあるように思う。

 男たちの哀歓。運命の非情。人生の短さと過酷。甘さを廃した骨太のストーリー展開の向こうに作者の無言の姿が浮かんできた。ピュア・ハードボイルドとはこの作品のことだろう。

(2000.01.04)
最終更新:2007年07月15日 14:50