覗く銃口




題名:覗く銃口
原題:The Murder Exchange (2003)
作者:サイモン・カーニック Simon Kernick
訳者:佐藤耕士
発行:新潮文庫 2005.10.1 初版
価格:\857




 『殺す警官』で鮮烈デビューした作家の翻訳第二作。英国ネオ・パルプ・アクションの潮流とも言うべき、従来のミステリーとは一線を画す動きを見せる作家の一人が、このサイモン・カーニックである。

 少し荒っぽいストーリー・テリングが巻を厚くしている印象はあるものの、二人の登場人物を交互に錯綜させて描く暗黒世界の死闘は、まるでエルロイの様でもあり、それでいてレナードのユーモアを忘れず、L・ブロックの情感も入れてゆく。アメリカンな影響を多分に感じさせる作風でもある。通貨単位や地名が出てこなければ、英国作品とはわからないくらいに。

 元傭兵のマックスは、事件にいきなり巻き込まれ、一方でロンドン警視庁のしがない捜査官ギャランは、事件を追跡する。二人はそれぞれ別の事件に関わっているように見えるが、実は錯綜するその裏側の真実の根は同じところに繋がっていそうに見える。

 互いに互いがときどきその影を意識し合いながらも、徐々にウォームアップを済ませ、助走をたっぷり取り、大きなクライマックスに向けて疾走してゆく迫力は、前作に劣らないばかりか、スケールにおいても、プロットの厚みにおいても凌駕してゆく。

 やりすぎかと思われるくらいにたっぷりと盛られた裏切りに罠のなかで、二人の主人公は何ともナイーブで憎めない存在となっている。

 特にギャランのコロンボばりの真実追求へのねちっこさと、反骨精神は、シンプルな善意に基づいていて、グロテスクなほどに暴力的なドラマ進行の中では、一種たまらないアクセントになっている。

 過激でスピーディで痛快と三拍子揃ったクライム・アクションとして、少しパルプでB級のイメージはあるものの、英国エンターテインメント小説の今後を背負って立ってゆきそうな勢いを感じさせる作家である。


(2005.10.23)