ハートブレイカー


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題名:ハートブレイカー
原題:Heartbreaker (1999)
作者:Robert Ferrigno
訳者:浅尾敦則
発行:アーティストハウス 1999.10.31 初版
価格:\1,900



 帯に「J・エルロイ、M・コナリー大絶賛の超A級ハードボイルド!!」とあるので、見かけない出版社だけど騙されたと思って意を決し買った本。フェリーニョという作家はこれが初物というわけではなく講談社文庫から既に『無風地帯』『チェシャ・ムーン』と邦訳されているのだそうだ。

 悪党ばかりが、欲得ずくでカリフォルニアを蠢き化かし合うという、言わば世紀末版ノワール。プロットの懲り方よりも、表現の懲り方に力点を置いているように見える。

 何よりもキャラクター造詣にとても力を注いでいて、会話の格闘技とでも言うべき世界をのっけから飽かず展開してくれるせいで、ぐいぐい引っ張られてしまう。少しどぎつめのバイオレンスで品を落しているかもしれないが、主人公の精神はまさにこの汚く卑しい世界でひたすらストレートに見える。

 湾岸戦争の英雄なのに血と暴力に走る巨漢。奇天烈なファッションに身を包んでいながら一瞬で相手を切り裂くティーンエイジャー。下劣の代名詞のようなドラッグディーラーのボス。洒落者の軟派師でありながらどこかタフさを感じさせる富豪の二代目。あくまで強気で殺伐としていながら魅力ある悪女。何よりも印象に強いのは湿地帯で独りたくましく生きているばあちゃん。

 ここまで魅力的な人物を揃えてしまえば、小説なんてあとは勝手に進むと言わんばかりの豪華個性ラインナップがこの本の最大の魅力であるかもしれない。海岸線の岩のトンネルの脱出行や、拷問、殺人、対決。どれも最大の凄味を聞かせた辛口エンターテインメントに仕上がっている。

 これだけのキャラクター。使い切れなかった分は次作に回してシリーズ化して欲しいと思うのは、きっとぼくばかりではないだろう。チャンドラーの正統派後継者というマスコミの賛辞はちょっとずれているような気がするが、日常の中に強烈なスパイスを効かせてしまうとても魅力的な作品であることは間違いない。むしろ純粋にノワールとして楽しんで欲しい一冊。

(1999.10.28)