ダンスは死の招き




題名:ダンスは死の招き
原題:Dead Man's Dance (1995)
作者:Robert Ferrigno
訳者:深井裕美子
発行:講談社文庫 1999.12.15 初版
価格:\1,000



 前作では親友が、そして本書では育ての親が殺されるという、ある意味、悲劇の記者クィンのシリーズ第二弾。前作『チェシャ・ムーン』のバイオレンスが色褪せるくらいにまたまたどぎつい暗殺者たちの登場がこの物語のハイライトと言える。

 『ハートブレイカー』で描かれた殺人者である、一方の巨人タイプ、そしてもう一方の奇怪ファッションのはしゃぐ若者タイプ。その原形は実は『チェシャ・ムーン』と本書とで既に書き分けられていたのだとわかる。

 ここで出てくる奇怪な殺人者たちは、その生い立ちも現在も、そして姿形も、すべてにおいて他を圧倒してしまう。読書を通じて多くの犯罪者に出くわしているけれど、モンスターと言える殺人者をこれほど何度も巧く書き分けられる作家をぼくは知らない。フェリーニョは人を書くのが巧いのではなく、実は個性を創り出すのが巧い作家だったのだと確信。

 そう言えばどの作品にもモンスターは出現する。ヒーロー、ヒロインも何だか妙な連中。さらに、このシリーズ二冊に限っては、犠牲者たちにも一票を投じたくなる。殺され方というものがあるのなら、このシリーズの冒頭を飾る二人の犠牲者はどちらも、殺され方大賞を獲得できるほどに見事な殺され方をしてみせる。殺し屋の側の狂気に見事に対抗するくらいに。

 また本書は『チェシャ・ムーン』に比べると、遥かに入り組んだストーリーで、最後まで巻置くあたわずの面白さ。地味ながらも、ぼくはこれは大変な大傑作だと思う。

 文体に大変に癖のある、それでいて肩の凝らない娯楽作家の代名詞であったロス・トーマスがこの世を去った今、ようやく彼の後釜に座るような独特のリズム・文体・キャラクター造形で「魅せる」作家が出現してきたか、との思いがぼくの中でいささか強まりかけているところである。

(2000.01.24)