友はもういない



題名:友はもういない
原題:THE TAKE ,(1987)
作者:EUGENE IZZI
訳者:安倍昭至
発行:ハヤカワ・ミステリアス・プレス文庫 1991.4.30 初刷
価格:\560

 おお、風変わりな作風であるけど、なんて正当な主人公なんだ! ということですげえ作家見っけ!

 もともとが新聞広告を拾っているうちに、『地上九〇階の強奪』が眼に入り、どれどれなかなか面白そうな話じゃないの、というんで書店からそいつを仕入れてきたのだが、なんだか同じシカゴを舞台にずっと話は繋がっているような気配なので、一作目から読むことに決めた。 この本はしかしなかなか見つからないで、 結局BOOKS 深夜+1で仕入れた次第。

 そんないきさつで3作いっぺんに読みつづけてしまうつもりだけど、間の一作が抜けているのはどういうわけなのでしょうね (;_;)。

 金庫破り、刑事、マフィア、コロンビアの麻薬売人、囮捜査官、殺し屋と一通り、街のおもちゃ箱の材料が揃ったところで、派手なドンパチはあるわ、血は沢山流れるわ、だまくらかし合いのコンゲームは裏のその裏を行くわ、で物語グチャグチャになるところ、おまえは船戸与一かあ、と叫びたくなったが、本気で面白い小説なのである。

 難を言えば前半部の人物描写がしつこいしつこい。でもこれもヴァクスばりの裏街道人生が丁寧に語られてるんだと思えば、仕方がないことかも。またしつこく感じるのは、ワン・シーン毎の各々の心理描写が長いせいもあるかもしれない。だから最初はお世辞にもリズミカルとは言えないけれど、それでもデビュー作にしてはパンチ力がある作品です。

 ラストの刑事とのシーンは、思わずもらい泣きしそう (;_;)。そう、感動的なシーンもきちんと用意してあるのです。三人称ハードボイルドとしてはロス・トーマス以来の逸材かもしれない、と本気で予感している。年二冊のペースで書いているらしいのだが翻訳が追い付いていないのがとても残念。さてこの勢いで次の作品にかかろう。

(1992.12.06)