「処刑宣告」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「処刑宣告」(2007/06/28 (木) 23:56:24) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
*処刑宣告
#amazon(4576050222,left,image)
#amazon(4576961845,image)
題名:処刑宣告
原題:Even The Wicked (1996)
著者:ローレンス・ブロック
訳者:田口俊樹
発行:1996年12月25日
価格:\1,900
『処刑宣告』は、ぼくには短編集の乗りの延長でした。おもしろい話をそれなりに書いているという安っぽい感じね。あのミック・バルーとの夜明けの会話の深み、凄味は、いったいどこに行っちゃったんだよお(;_;) 。こうなると、もうスカダーでなくてもいいかなというお話しだし。
シリーズというのは読み手にとっても書き手にとっても扱いにくいところがあるんだと思う。ある程度ぐっとくるステータスを持っている主人公も(この場合命がけのアル中というステータスだけど)、その同じステータスばかりではプロットもいい加減不自然となる。誰が見たって『八百万の死にざま』で終わるべき物語に、回想の『聖なる酒場の挽歌』が加わって、これでまあ終了すべきシリーズだった。
ところが無理矢理続けちゃったものだから、アル中の直ったスカダー・シリーズは、新しいステータスとでもいうべきエレインとの中年の恋に走る。その後、アル中治療は保留状態のまま、エレイン関係だけが、スカダーの年齢と同時に進行してきてしまったわけだ。
シリーズの限界はとうに越えているし、もともとウェットであった物語は、最近ますます人情もの路線を突っ走っている。そして短編と同じ乗りの、プロット主体の軽めのミステリー。87分署シリーズは最初から87分署だから許せるのに、スカダーは、突然進路を変えてしまった。こんなところが、スカダーと長年付き合ってきた読者にとってはやっかいなところなんだと思う。
P・コーンウェルの『検屍官』シリーズの主人公の老齢化もそうなんだけど、最近は、主人公そのものよりも主人公の置かれる環境そのものをいじくって、何とか話を次いでゆく、というシリーズが多いようです。その点、途中で年齢を重ねなくなってしまって、周りの時代だけが過ぎてゆくという荒業に出た87分署ものなどは、エンターテインメントの鑑と言っていいのかもしれないのだ。ううむ(^^;)。
(1997.01.09)