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*獣たちの墓 #amazon(4576007033,right,image) 題名:獣たちの墓 原題:A WALK AMONG THE TOMBSTONES (1992) 作者:LAWRENCE BLOCK 訳者:田口俊樹 発行:二見書房 1993.11.25 初版 価格:\1,900(本体\1,845)  スカダー・シリーズは事件そのものよりも、遥かにスカダーという男の重荷を扱った点で世に評価されてきたのはよくわかるけれど、それだけではこうまでシリーズ全体の人気は出なかっただろうと思う。それほどまでに『八百万……』以前の作品は、やり切れない暗さを持っていた。ネクラ探偵マット・スカダーなんて呼ばれていて、そんなキャッチフレーズが、本当に本の売上に通じるものとは、ぼくは到底思えなかった。  ぼく自身マット・スカダーの悩める魅力につきあって来た点では、ほぼ同じだけど、それだけがすべてではないという点では、ぼくのスカダー・シリーズへの評価は一貫している。というのはこのシリーズの何が一番気に入っているか、という質問をした時におそらくはっきりぼくは答えるのだろうけれど、一言で言ってしまえば「おそろしくうまい小説」なんである。  『87 分署』を読み始めた時、うまいなあと思ったけど、このシリーズはその比ではなかったように思う。 それも当然で『87 分署』の最初の一冊を書いたマクベインはまだ二十代だったわけでほんの若造であったが、ブロックはこのシリーズ以前にも短編を中心に小説づくりにこだわって来た作家である。だから比較的評価の低い初期三作品を持っても、ぼくはこの作家はうまい作家だと、つくづく思ったわけである。  そんなうまさというのは、技巧の「巧さ」でもあるけど、とにかく「美味い」のでもある。読んで面白い小説であるから、どんどんページが進む小説である。人にお勧めできるし、自分もとことんシリーズにつきあえる。  そんな一貫したうまさに引きずられてここまで来ているのだが、相変わらず、作品そのものはぼくにとっては魅力的である。人間たちがたまらなく個性的であり、誰一人とってもただものではない。ストーリーが一気にぼくを捉えるし、サスペンスが段階的に盛り上がるし、やっぱりぼくには申し分のないシリーズなのである。こんなに申し分のないシリーズを『八百万……』で終わらされないで本当によかった、と思っても罪ではあるまい。  同時にまた、次作から元に戻るという話を聞いても、ぼくの目線は同じところにあるので、あくまでエンターテインメントとしての人間的な興奮を求めて満足を得られることだろうと思うのである。 (1993/12/22)

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