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*LAコンフィデンシャル
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題名 LAコンフィデンシャル 上/下
原題 L.A.Confidential (1990)
著者 ジェイムズ・エルロイ James Ellroy
訳者 小林宏明
発行 文藝春秋 1995.10.15 初版
価格 各\2,200(本体各\2,136)
第一作『ブラック・ダリア』はとりあえずの出発点だから初期混沌として理解できるにしても、二作目の『ビッグ・ノーウェア』はハチャメチャな構成に思われる作品であった。一作目も肝心のブラック・ダリア事件にいたるまでに100ページ以上のロング・プロローグがあって、事件などはこの糞熱血漢の主人公どものための添え物なんだと言わんばかりであった。
二作目はさらにヒートアップして三人の男たちのクレイジイな生涯を唸るような奔放な筆遣いで描き切ってくれた。そしてこの三作目はいきなり二作目の終わりより繋がってしまう。というわけで、この本は『ビッグ・ノーウェア』未読の方には絶対に進められないのだ。三作目の序章はいきなり二作目の終章に持ってきてもいいほどのサム・ペキンパ的クライマックスでもある。
これを二作目の終章に持って行かなかったところが、なんともまあ粋であると同時に、奔放に見せながらもきっちりと年代記のごとく計算され尽くした、このLA暗黒史四部作という偉大なるプロットである事実が見えてくるのである。
この作品も前作と同じく三人の警官の物語。物語のストーリーが複雑に絡み合って野太くなった様は、前作のままなので安心して取りかかられたい。じっくり読みたい濃密な文章なのだが、どうしても作品のもつパワーに押されて一気読みに近くなってしまうのが、読者的ジレンマであったりする。でもジレンマは快感でもあるのだ。とにかく相変わらず凄い作品ですよ。
前作の黒幕が今回も迫力のあるフィクサーとして登場し、戦後のロスという巨大なチューブから四作目は確実にひねり出されようとしているこのことが、ここに来てはっきり見えてくる。この時代感覚は『ブラック・ダリア』一冊だけでは確実に見えてこないものだと思う。
いつもそうなのだが、この人の作品を読んでいると、悪徳警官なんていうつまらない観念の向こうに、善悪を越えた人間の生き様がストレートに出てきているせいか、最初、最も好きになれないタイプの男が、最後にはぼくの中でヒーローに育っている。こういう変異感覚をあじわわせてくれる作品と言うのは、そうはないんじゃないかと思うし、ぼくはこの力技で持って行かれるような感覚が、最終的には読書という行為の中でいちばん好きなものなのだ。 今年になって三作ほぼ続け様に読めて幸せな方だと思う。原文が奔放なので翻訳家は苦労されると聞いている。このシリーズは訳者の統一もされていないし、邦訳が異様に遅いんだが、そういう困難があるからだろう。四作目の出版予定は来年だそうです。訳者は、あの佐々田雅子氏です。うーむ、待ち切れないのである。
(1995.10.28)
*LAコンフィデンシャル
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題名 LAコンフィデンシャル 上/下
原題 L.A.Confidential (1990)
著者 ジェイムズ・エルロイ James Ellroy
訳者 小林宏明
発行 文藝春秋 1995.10.15 初版
価格 各\2,200(本体各\2,136)
第一作『ブラック・ダリア』はとりあえずの出発点だから初期混沌として理解できるにしても、二作目の『ビッグ・ノーウェア』はハチャメチャな構成に思われる作品であった。一作目も肝心のブラック・ダリア事件にいたるまでに100ページ以上のロング・プロローグがあって、事件などはこの糞熱血漢の主人公どものための添え物なんだと言わんばかりであった。
二作目はさらにヒートアップして三人の男たちのクレイジイな生涯を唸るような奔放な筆遣いで描き切ってくれた。そしてこの三作目はいきなり二作目の終わりより繋がってしまう。というわけで、この本は『ビッグ・ノーウェア』未読の方には絶対に進められないのだ。三作目の序章はいきなり二作目の終章に持ってきてもいいほどのサム・ペキンパ的クライマックスでもある。
これを二作目の終章に持って行かなかったところが、なんともまあ粋であると同時に、奔放に見せながらもきっちりと年代記のごとく計算され尽くした、このLA暗黒史四部作という偉大なるプロットである事実が見えてくるのである。
この作品も前作と同じく三人の警官の物語。物語のストーリーが複雑に絡み合って野太くなった様は、前作のままなので安心して取りかかられたい。じっくり読みたい濃密な文章なのだが、どうしても作品のもつパワーに押されて一気読みに近くなってしまうのが、読者的ジレンマであったりする。でもジレンマは快感でもあるのだ。とにかく相変わらず凄い作品ですよ。
前作の黒幕が今回も迫力のあるフィクサーとして登場し、戦後のロスという巨大なチューブから四作目は確実にひねり出されようとしているこのことが、ここに来てはっきり見えてくる。この時代感覚は『ブラック・ダリア』一冊だけでは確実に見えてこないものだと思う。
いつもそうなのだが、この人の作品を読んでいると、悪徳警官なんていうつまらない観念の向こうに、善悪を越えた人間の生き様がストレートに出てきているせいか、最初、最も好きになれないタイプの男が、最後にはぼくの中でヒーローに育っている。こういう変異感覚をあじわわせてくれる作品と言うのは、そうはないんじゃないかと思うし、ぼくはこの力技で持って行かれるような感覚が、最終的には読書という行為の中でいちばん好きなものなのだ。 今年になって三作ほぼ続け様に読めて幸せな方だと思う。原文が奔放なので翻訳家は苦労されると聞いている。このシリーズは訳者の統一もされていないし、邦訳が異様に遅いんだが、そういう困難があるからだろう。四作目の出版予定は来年だそうです。訳者は、あの佐々田雅子氏です。うーむ、待ち切れないのである。
(1995.10.28)