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*サクリファイス
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題名:サクリファイス
原題:SACRIFICE (1991)
作者:ANDREW VACHSS
訳者:佐々田雅子
発行:早川書房 1993.5.30 初版
価格:\1,900 (本体各\1,845)
先に原書を読まれた方とは違い、佐々田雅子さんのあとがきで、ヴァクスが一応とりあえずはバーク・シリーズに終止符を打ったらしいことを知ってから読み出したぼくは、これが最後のバークの闘いなのだということを肝に命じて読み進めた。例の如く一つの文章を二三度ずつ、貴重なほどのスローペースで、ヴァクスの、いや佐々田さんの文章を、味わい尽くした。この作品を味わい尽くした。
初めての女性名以外のタイトルであるのは、内容を見るとなるほどと思う。これまでも繰り返されきたバークを取り巻く女たちの回想シーン。それがこの作品ではかなり意図的に絢爛豪華に繰り返されている。メリーゴーラウンドのようにリズムに乗って過去が復唱されている。ストーリーを断裂してバークが過去に沈潜するひとときの多さよ。
バークに似た経歴を持つルーク少年。 この物語はあとがきでも言われるように『24 人のビリー・ミリガン』と兄弟のような作品であるのかもしれない。とにかく、ぼくは『24 人……』を読む必然性を見出してしまったと思う。読まねば……。
またバークとその仲間たちに対比して、リリィやウルフたちの姉妹のようなチームがいて、彼等は変態どもと闘うという構図が初期に較べてずいぶん発展的にしっかりして来た。『ブルー・ベル』で飛散してしまった断片が、徐々にバークの回りでひとつになってきた印象がある。シリーズの仲間たちが徐々に成長を遂げているのが、新しいメンバーの登場などでも見えて来る。
街はいつもに増して地獄だが、バークの魂は、相変わらず救いを求め、仲間たちの情愛は形を変えつつある。彼にファミリーの存在がなかったら救いはないのだ。新たに登場する密教集団の存在も、ギャングたちも、バークの探し求める変態たちに較べれば、バークには新たな出会いの源泉でしかない。そういう具合に汚れた街でバークは新たな出会いを繰り返し、このシリーズは終りを告げたのだ。
この次にどんな作品が書かれるのかわからない。次の主役はルークであるかもしれない。第二のウェズリーであるかもしれない。『シェラ』の翻訳をひたすら待ちたいと思う。
(1993/06/24)