「ソー・ザップ!」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

ソー・ザップ!」(2007/02/10 (土) 20:01:33) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

*ソー・ザップ! #amazon(4041886015,text,image) #amazon(4803326134,text,image) 題名:ソー・ザップ! 作者:稲見一良 発行:大陸書房 1990.1.20 初版 価格:\1,300(本体\1,262)  初期二作目までは思えば大陸書房から出ていたのである。そんなわけでハードカバーは割と早めに書店から姿を消し、後に文庫本になるか、早川書房が『ダック・コール』を出すまでこの作家の存在は、あまり多くの人の手に取られることはなかったのだと思う。  さて二作目のこの本だが、作者が言うに決闘小説。もっとも危険な狩猟を闘い合う男たちの話なのだが、 4人のいわゆる「手練 (てだれ)」を相手に一人の男が命を賭した勝負を挑む。それだけなので、むしろプロットなどはないのだと言った方がよさそう。すぐに男たちの殺戮冒険シーンが連続的に開陳されてしまうので、劇画的という言葉の方が似合ってしまったりしそうでもある。  この小説の絶対的な弱点は、まあその点である。この本に合わせて原点の一つともいうべきギャビン・ライアルの『もっとも危険なゲーム』を読んだが、あちらはそのタイトルに辿り着くまでの紆余曲折の方がむしろプロットの大半。決闘シーンはクライマックスのために用意された大切なヒトコマという印象であった。しかしこの本はそのクライマックス・シーンだけに限って大きくクローズアップしてみたのだぞ、森の中の対決シーンを書きたいのだぞ、という作者のミーハー的意識で書かれたオマージュなのかもしれない。  オマージュと言えば、この本の章題が「第一章 パピヨン」「第二章 華麗なる週末」「第三章 戦雲」「第四章 華麗なる挑戦」「第五章 ハンター」「第六章 ゲッタウェイ」「第七章 華麗なる賭け」……である。一つ二つぼくには覚えのないタイトルがあるんだが、類推するにこれは全部スティーヴ・マックィーンの主演映画でしょう? 作者は狩猟と映画に非常に思いを寄せているのだけど、この章題からも、その作者の遊び心がわかったりして、ぼくは楽しかった。  ラストに、エッセイ『銃撃小説決闘考・深夜の銃声』というのがあって、これまた男と男のすべてを賭した一瞬の決闘というものへの憧憬が込められている。癌により命の限界を宣言された男が、一瞬の生死の分かれ目、その華麗さに思いをぶつける。死を前にした男の矜持と捉えると、作者のタフさぶりが伺えるような気がして、ぼくには非常に感慨深いものが感じられるのである。 (1994.07.17)
*ソー・ザップ! #amazon(4041886015,text) #amazon(4803326134,text) 題名:ソー・ザップ! 作者:稲見一良 発行:大陸書房 1990.1.20 初版 価格:\1,300(本体\1,262)  初期二作目までは思えば大陸書房から出ていたのである。そんなわけでハードカバーは割と早めに書店から姿を消し、後に文庫本になるか、早川書房が『ダック・コール』を出すまでこの作家の存在は、あまり多くの人の手に取られることはなかったのだと思う。  さて二作目のこの本だが、作者が言うに決闘小説。もっとも危険な狩猟を闘い合う男たちの話なのだが、 4人のいわゆる「手練 (てだれ)」を相手に一人の男が命を賭した勝負を挑む。それだけなので、むしろプロットなどはないのだと言った方がよさそう。すぐに男たちの殺戮冒険シーンが連続的に開陳されてしまうので、劇画的という言葉の方が似合ってしまったりしそうでもある。  この小説の絶対的な弱点は、まあその点である。この本に合わせて原点の一つともいうべきギャビン・ライアルの『もっとも危険なゲーム』を読んだが、あちらはそのタイトルに辿り着くまでの紆余曲折の方がむしろプロットの大半。決闘シーンはクライマックスのために用意された大切なヒトコマという印象であった。しかしこの本はそのクライマックス・シーンだけに限って大きくクローズアップしてみたのだぞ、森の中の対決シーンを書きたいのだぞ、という作者のミーハー的意識で書かれたオマージュなのかもしれない。  オマージュと言えば、この本の章題が「第一章 パピヨン」「第二章 華麗なる週末」「第三章 戦雲」「第四章 華麗なる挑戦」「第五章 ハンター」「第六章 ゲッタウェイ」「第七章 華麗なる賭け」……である。一つ二つぼくには覚えのないタイトルがあるんだが、類推するにこれは全部スティーヴ・マックィーンの主演映画でしょう? 作者は狩猟と映画に非常に思いを寄せているのだけど、この章題からも、その作者の遊び心がわかったりして、ぼくは楽しかった。  ラストに、エッセイ『銃撃小説決闘考・深夜の銃声』というのがあって、これまた男と男のすべてを賭した一瞬の決闘というものへの憧憬が込められている。癌により命の限界を宣言された男が、一瞬の生死の分かれ目、その華麗さに思いをぶつける。死を前にした男の矜持と捉えると、作者のタフさぶりが伺えるような気がして、ぼくには非常に感慨深いものが感じられるのである。 (1994.07.17)

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: