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*クレイジーヘヴン #amazon(4408534668,text,image) 題名:クレイジーヘヴン 作者:垣根涼介 発行:実業之日本社 2004.12.15 初版 価格:\1,600  『サウダージ』で見られたような反骨も意地もあるブラジル出身者の滅びと恋。あれに近いという印象だが、一方では馳星周あたりが書きそうなノワールの気配もある。少しずつ変異する垣根ワールドの、もう一つの屈折面がここに出現したのかもしれない。  『サウダージ』の強烈なデカダンスは、いわゆるゴダールの『勝手にしやがれ』や『吉外ピエロ』に繋がるネガティブ・エネルギーの発露みたいな部分があった。根底にあるニヒリズムは、自分が世界から認められないことに対する存在の証。  本書の主人公はブラジル出身でもなければ、泥棒業界に入門しようという色気もない。ただの旅行代理店のサラリーマン……といえば処女作『午前三時のルースター』への先祖帰りか、と思えないこともない。だが、どこか違うのは『ヒート・アイランド』で生まれたアキのシリーズにこの主人公が少しだけ似ていること。意地とタフさを兼ね備えている。  主人公は通常はフレームということを意識に遡上させている。フレームを逸脱してはならないと自らに言い聞かせている。そういう人間だからこそ、何かの折に不意に日常生活というフレームから、彼は逸脱してしまうのだろう。その逸脱の向こうには、常にアキのような無法のタフガイが立っている。  この小説の面白いところは、普通の日常を送る男や女がふとしたきっかけから、裏社会の戦いでのサバイバルを強いられてゆくところだろうと思う。それでいて営まれる日常生活に無理があるからこそ、日常的に少しだけ逸脱を、行う。  逸脱とはクレイジーヘヴンというコカの液体がもたらす愉悦であり、逸脱とは顔面を陥没する蹴り砕く暴力である。このまま死体や、離別や、破滅の方角に向いてしまえば、ほとんど馳星周のノワール世界だが、垣根の世界は常にタフでクールで爽やかである。この物語はその意味では、その意味で暗黒の側に片足をどっぷり浸かっている印象があり、おや、少し変だぞ、と思わせるところがある。  ストレートなアクションというよりも屈折そのものである。普通にに生きているだけでは足りない男の内面で飼育されている獣の存在がどこかに匂う。結末はどうなるのか。失踪感溢れるこの作品は、抵抗がないだけにさらっとした印象だけれども、才気走った文体とリズム感は、いつものように、この作者らしい。まるでブラジルのサンバなのだ。 (2005.1.17)
*クレイジーヘヴン #amazon(4408534668,text,image) 題名:クレイジーヘヴン 作者:垣根涼介 発行:実業之日本社 2004.12.15 初版 価格:\1,600  『サウダージ』で見られたような反骨も意地もあるブラジル出身者の滅びと恋。あれに近いという印象だが、一方では馳星周あたりが書きそうなノワールの気配もある。少しずつ変異する垣根ワールドの、もう一つの屈折面がここに出現したのかもしれない。  『サウダージ』の強烈なデカダンスは、いわゆるゴダールの『勝手にしやがれ』や『気狂いピエロ』に繋がるネガティブ・エネルギーの発露みたいな部分があった。根底にあるニヒリズムは、自分が世界から認められないことに対する存在の証。  本書の主人公はブラジル出身でもなければ、泥棒業界に入門しようという色気もない。ただの旅行代理店のサラリーマン……といえば処女作『午前三時のルースター』への先祖帰りか、と思えないこともない。だが、どこか違うのは『ヒート・アイランド』で生まれたアキのシリーズにこの主人公が少しだけ似ていること。意地とタフさを兼ね備えている。  主人公は通常はフレームということを意識に遡上させている。フレームを逸脱してはならないと自らに言い聞かせている。そういう人間だからこそ、何かの折に不意に日常生活というフレームから、彼は逸脱してしまうのだろう。その逸脱の向こうには、常にアキのような無法のタフガイが立っている。  この小説の面白いところは、普通の日常を送る男や女がふとしたきっかけから、裏社会の戦いでのサバイバルを強いられてゆくところだろうと思う。それでいて営まれる日常生活に無理があるからこそ、日常的に少しだけ逸脱を、行う。  逸脱とはクレイジーヘヴンというコカの液体がもたらす愉悦であり、逸脱とは顔面を陥没する蹴り砕く暴力である。このまま死体や、離別や、破滅の方角に向いてしまえば、ほとんど馳星周のノワール世界だが、垣根の世界は常にタフでクールで爽やかである。この物語はその意味では、その意味で暗黒の側に片足をどっぷり浸かっている印象があり、おや、少し変だぞ、と思わせるところがある。  ストレートなアクションというよりも屈折そのものである。普通にに生きているだけでは足りない男の内面で飼育されている獣の存在がどこかに匂う。結末はどうなるのか。失踪感溢れるこの作品は、抵抗がないだけにさらっとした印象だけれども、才気走った文体とリズム感は、いつものように、この作者らしい。まるでブラジルのサンバなのだ。 (2005.1.17)

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