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*無法の正義 #amazon(right,4102395067) 題名:無法の正義 原題:A Wild Justice (1995) 作者:クレイグ・トーマス Craig Thpmas 訳者:田村源二 発行:新潮文庫 1999.5.1 初版 価格:\895 スパイ小説家が警察捜査小説を書いた、と言えば最近ではフリーマントルの『猟鬼』が驚きであったが、何とまあクレイグ・トーマスまで警察捜査小説を。どちらの作家も何度もロシアとの国境をまたぐ小説を書いてきたためか、スパイ小説から警察捜査小説に色を変えても、事件のスケールは大きく、国際的なカラーは相変わらず捨て去らず、ためにロシアを舞台にした点でも、捜査側が米露の両サイドからという作りまでもが、何故か不思議と共通してしまった。  逆を言えば、今ロシアに混沌があるからと言うことも言えるかもしれない。冒険小説作家たちは東西冷戦構造の崩壊とともに、湾岸戦争前後の第三世界に注目したが、かつての傑作が並び誇るようなスパイ冒険小説はなかなか立ち現れなかった。やはり傑作小説は、東西冷戦構造と第二次大戦に戻るといったところがある。  そこに来て東西冷戦構造の瓦解後に、その廃墟の中から現れた新たな敵ロシアン・マフィアというものに注目し始めたのが、フリーマントルであり、クレイグ・トーマス。勿論ロシアン・マフィアは国境を越えて世界中と繋がり今ではロバート・B・パーカーの世界にまで顔を出すくらいの人気敵手。まだなじみが薄いだけに、無気味さがあり、またスペツナズやKGBが出所だったりするというだけで、冷戦構造の時代を引き継げるだけの実力者であることを思わせるものがある。  さてそうしたことを物語中にストレートに投じたのが、本書『無法の正義』であるように思う。シベリア開発に群がる外国企業の謀略と繋がる殺人。ベトナムにさかのぼるほどに緊密な時代的な繋がりも含ませて、ロシアとアメリカでの殺人事件が二つの国の捜査チームを結びつける。舞台はブリザード唸る極寒の町ノヴィ・ウレンゴイ。  設定がいい。モチベーションがいい。ロシアン・チームの面々の個性がいい。何よりも舞台がいい。後半は死闘、また死闘となる辺り、フリーマントルの世界とはまた大きく離れて独自の路線を走り始めるが、これがクレイグ・トーマスのらしさと言えばらしさであろう。    訳者も解説で触れているようにこのロシアの捜査チームの面々にはぜひ続編で再会したい。ハイド、ガントに明け暮れていたここ数年のクレイグ・トーマスとは別のところで、チームプレイ的な魅力を存分に味わいたいと思っている。オーブリィが去ってからはやけにそう感じていたのだ。 (1999.05.29)
*無法の正義 #amazon(right,4102395067) 題名:無法の正義 原題:A Wild Justice (1995) 作者:クレイグ・トーマス Craig Thpmas 訳者:田村源二 発行:新潮文庫 1999.5.1 初版 価格:\895  スパイ小説家が警察捜査小説を書いた、と言えば最近ではフリーマントルの『猟鬼』が驚きであったが、何とまあクレイグ・トーマスまで警察捜査小説を。どちらの作家も何度もロシアとの国境をまたぐ小説を書いてきたためか、スパイ小説から警察捜査小説に色を変えても、事件のスケールは大きく、国際的なカラーは相変わらず捨て去らず、ためにロシアを舞台にした点でも、捜査側が米露の両サイドからという作りまでもが、何故か不思議と共通してしまった。  逆を言えば、今ロシアに混沌があるからと言うことも言えるかもしれない。冒険小説作家たちは東西冷戦構造の崩壊とともに、湾岸戦争前後の第三世界に注目したが、かつての傑作が並び誇るようなスパイ冒険小説はなかなか立ち現れなかった。やはり傑作小説は、東西冷戦構造と第二次大戦に戻るといったところがある。  そこに来て東西冷戦構造の瓦解後に、その廃墟の中から現れた新たな敵ロシアン・マフィアというものに注目し始めたのが、フリーマントルであり、クレイグ・トーマス。勿論ロシアン・マフィアは国境を越えて世界中と繋がり今ではロバート・B・パーカーの世界にまで顔を出すくらいの人気敵手。まだなじみが薄いだけに、無気味さがあり、またスペツナズやKGBが出所だったりするというだけで、冷戦構造の時代を引き継げるだけの実力者であることを思わせるものがある。  さてそうしたことを物語中にストレートに投じたのが、本書『無法の正義』であるように思う。シベリア開発に群がる外国企業の謀略と繋がる殺人。ベトナムにさかのぼるほどに緊密な時代的な繋がりも含ませて、ロシアとアメリカでの殺人事件が二つの国の捜査チームを結びつける。舞台はブリザード唸る極寒の町ノヴィ・ウレンゴイ。  設定がいい。モチベーションがいい。ロシアン・チームの面々の個性がいい。何よりも舞台がいい。後半は死闘、また死闘となる辺り、フリーマントルの世界とはまた大きく離れて独自の路線を走り始めるが、これがクレイグ・トーマスのらしさと言えばらしさであろう。    訳者も解説で触れているようにこのロシアの捜査チームの面々にはぜひ続編で再会したい。ハイド、ガントに明け暮れていたここ数年のクレイグ・トーマスとは別のところで、チームプレイ的な魅力を存分に味わいたいと思っている。オーブリィが去ってからはやけにそう感じていたのだ。 (1999.05.29)

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