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*危険な選択 #amazon(text,414005204X) 題名:危険な選択 原題:The Touch Of Innocents (1994) 作者:マイケル・ドブズ Michael Dobbs 訳者:布施由紀子 刊行:1994.12.20 定価:\2,000(本体\1,942)  読み終えてみれば非常に重苦しく現代的・国際的な主題を扱っているんだけど、そこに辿り着くまでがけっこう長く、個人的で、焦点が絞りにくいかもしれない。でも、クライマックスへの持って行き方は十分劇的だったし、なにしろクライマックスの日付が、クリスマス・イブの一週間前 (つまり明日だ) という、テレビ局出版部らしいタイムリーな本であった。  ワーキング・マザーという主人公に特異な光を当てて、こういう主人公が謀略に巻き込まれると、男にはないこれほどの苦労が次々と立ち現われるんだ、ということを作者はもっとも言いたいらしく、そのことは前書きで述べられている。  興味深かったのは、本当にニューヨークの描写ではないのだろうかとまで思わせるほどの、イギリスの裏町の危険さ。そしてはびこる麻薬は、イギリスの社会をもこうして腐蝕しているのかということへの今さらながらの興味。なぜってこういうのって、ほとんどアメリカ小説のモチーフではないか。主人公の女性をアメリカ人の設定にしたことと言い、どこかイギリス離れしたスリラーであるのだ。  母であり、女であることの悲しさがよく書けていて、反面、この作者の本当に得意な方のポリティカルなシーンに関してはなんだか含みが多くよくわからず、要らないんじゃないという気もした。でも男の世界o翌フ悲しみに対照させて男の作家が描くという方法だと、こういうシーンも致し方ないのかなあとも思える。けっこう複雑な心理になる本であったのだ。  作品を通して一貫して女性主人公への感情移入ができるし、女性の側の描写というものに秀でているし、 仕事を持った母・女の闘いということで、FADV の女性読者にはぜひとも手に取って欲しいところ。長男との空港でのシーンは、子を持つ親としてグリシャムの『依頼人』と同じくらい泣けました。  人称が右往左往する描写って、少し気になるんだけど、このあたりをしっかりさせて、なおかつ登場人物の絞り込みをもう少しご都合主義じゃなく、リアルにしてもらうと満点だったかもしれない。国防大臣がちょろちょろ本筋に関わってくるために世界がすごく狭小に見えてならなかったが、これは作者がサッチャーの相談役をやっていたくらい大物政治家であるゆえの、世間への「俯瞰感覚」みたいなものなのだろうか? ぼくとしては、どうしても、もう少し庶民の視点での小説として書いて欲しかった気がしてならないのである。 (1994.12.06)
*危険な選択 #amazon(text,414005204X) 題名:危険な選択 原題:The Touch Of Innocents (1994) 作者:マイケル・ドブズ Michael Dobbs 訳者:布施由紀子 刊行:1994.12.20 定価:\2,000(本体\1,942)  読み終えてみれば非常に重苦しく現代的・国際的な主題を扱っているんだけど、そこに辿り着くまでがけっこう長く、個人的で、焦点が絞りにくいかもしれない。でも、クライマックスへの持って行き方は十分劇的だったし、なにしろクライマックスの日付が、クリスマス・イブの一週間前 (つまり明日だ) という、テレビ局出版部らしいタイムリーな本であった。  ワーキング・マザーという主人公に特異な光を当てて、こういう主人公が謀略に巻き込まれると、男にはないこれほどの苦労が次々と立ち現われるんだ、ということを作者はもっとも言いたいらしく、そのことは前書きで述べられている。  興味深かったのは、本当にニューヨークの描写ではないのだろうかとまで思わせるほどの、イギリスの裏町の危険さ。そしてはびこる麻薬は、イギリスの社会をもこうして腐蝕しているのかということへの今さらながらの興味。なぜってこういうのって、ほとんどアメリカ小説のモチーフではないか。主人公の女性をアメリカ人の設定にしたことと言い、どこかイギリス離れしたスリラーであるのだ。  母であり、女であることの悲しさがよく書けていて、反面、この作者の本当に得意な方のポリティカルなシーンに関してはなんだか含みが多くよくわからず、要らないんじゃないという気もした。でも男の世界o翌フ悲しみに対照させて男の作家が描くという方法だと、こういうシーンも致し方ないのかなあとも思える。けっこう複雑な心理になる本であったのだ。  作品を通して一貫して女性主人公への感情移入ができるし、女性の側の描写というものに秀でているし、 仕事を持った母・女の闘いということで、FADV の女性読者にはぜひとも手に取って欲しいところ。長男との空港でのシーンは、子を持つ親としてグリシャムの『依頼人』と同じくらい泣けました。  人称が右往左往する描写って、少し気になるんだけど、このあたりをしっかりさせて、なおかつ登場人物の絞り込みをもう少しご都合主義じゃなく、リアルにしてもらうと満点だったかもしれない。国防大臣がちょろちょろ本筋に関わってくるために世界がすごく狭小に見えてならなかったが、これは作者がサッチャーの相談役をやっていたくらい大物政治家であるゆえの、世間への「俯瞰感覚」みたいなものなのだろうか? ぼくとしては、どうしても、もう少し庶民の視点での小説として書いて欲しかった気がしてならないのである。 (1994.12.06)

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