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*おとり捜査
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題名:おとり捜査
原題:The Laundryman (1989)
作者:ブライアン・フリーマントル Brian Freemantle
訳者:真野明裕
発行:新潮文庫 1995.3.1 初版
価格:\680(本体\660)
単細胞さんからあらかじめ省エネ小説と聞いていたので警戒して読んだら、何の何の……ぼくには大変な好物であった。何がよいかと言って、小説全体を引き締めるような冷徹な構成力。一気読みできたのはその締まりに締まったストーリー展開ゆえだと思う。
とにもかくにもチャーリー・マフィンのシリーズが傑作駄作を問わず先にどんどん翻訳されていった中で、こういう佳品ともいうべき作品が置き去りにされてきたわけで、フリーマントルの懐の深さや作家としての歴史を感じてしまった。
今回は珍しく国際諜報ものではないのだけれど、この作家の描くスパイというのは、いつも家族を大事にする家庭人の顔を一方で持つというはなはだ人間臭い人たちであり、その点はこのコロンビア麻薬シンジケートを相手にしたこの小説も同じである。それどころか家族というのがストーリーを追いかけさせるテーマになっているくらいだ。
だからこそ作戦準備が緊迫し、主人公の一途さが見え、クライマックスの極度の残虐さと皮肉な始末の付け方が、いかにもフリーマントルしているのだ。こうまでに多くの情報を小説という形で文章に定着できるという一点だけでも、国産エンターテインメントとは違うよなあ、などと感じてしまうぼくであった。
比較的元ジャーナリストとしての性格を前面に出した作品であるように思います。
(1995.04.11)