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*ジェネラル・ルージュの凱旋 #amazon(right,4796657541) 題名:ジェネラル・ルージュの凱旋 作者:海堂 尊 発行:宝島社 2007.04.23 初版 価格:\1,600  わざわざ買わなくても図書館で予約して読めばいいかな、っていう作家がいる。作家さんには失礼かもしれないが、読んでそこそこ面白い、しかし作品や登場人物に惚れこんでしまい、是非、哀願したいので手元において置こうとまでは思わない程度の娯楽小説、というようなものであれば、図書館の予約待ちの列に並んでおこうとぼくは考える。  絶対に待てないので買うぞ、という本は、やはり海外ミステリのシリーズものであったり、ぞっこんこれこそ惚れこんだ作家のものであったり、何かの賞を受賞したばかりで、今こそが旬、とでも言ったような作品であろうか。それから文庫書下ろしの新作などで値段が手頃、しかも嵩張らないので書庫を圧迫しない、といった手軽なものも買います。  そんな割合狭いフィルターを潜り抜けてまで買ってゆこうとは思わないが、文庫落ちすればお金を払いましょう、という作家の一人がこの海堂尊である。面白いのだけれど、やはりユーモア・ミステリの類いは、軽い部類に属するし、軽いものはさっと読んでそのひと時を楽しむ、ということでいいのだと思う。  本書は、東城大医学部のシリーズの直系であるようで、主人公も脇役もほぼ『チーム・バチスタの栄光』と直列つなぎになっている様子。この9月に『ナイチンゲールの沈黙』が文庫化されているので、そちらの方が後回しになるなど、ぼくの中でこのシリーズ、前後整えて読めているわけではないので、それが作品の味わい方としては正当ではないなと思いつつも、でも、一作一作が独立した形でもあるし、キャラはほぼわかっているし、と、さほど差し障りを感じることなく読めてしまう。  本書は東城大の心臓部とも言うべき救急部に焦点を当てており、救急医学の花形と言えるドクター・ヘリへの願望を持つ救急部部長、ドクター速水の造形がとにかく楽しい。学内の派閥争いは、現実にいくつも存在する世の医学部という組織を笑い飛ばすかのように、デフォルメされ強調された幹部連中の戯画模様といった有り様。それ自体が本書のストーリーの根幹を成してはいるのだが、それ以上に救急医療に携わるスタッフたちの悪戦苦闘の様子が、プロットの中でしっかりとフォーカスされているあたりが本書の読みどころか。  特に災害が勃発したところ、通常なら受け入れるベッドさえない医学部病院を、救急災害時の基幹病院のような機能を一瞬で持たせ、ロビーに患者たちを受け入れてゆく速水の決断は胸のすくシーンであり、実際に救急医の志の高さに沢山個人的に触れた経緯のあるぼくにとっては、そう、これぞ、救急医療、これぞ災害医療、といった光景が展開する、といったいささか個人的に旗振りをしてしまいたくなる大団円なのであった。  医療は科学に基づくものだが、医療という機関を動かすのは、医療に携わる人間たちの哲学の問題である、というようなことをこの作者はシリーズを通してどの作品でも声高にアジテートしているような気がする。いささか挑発的になりかねない現場サイドにくみした医療に関わる目線をもって、大学病院という象牙の塔を照射してみせるところにこのシリーズの人気の秘訣があるのだと思う。  図書館と文庫落ちした順番だけれど、どんどん読み続けてゆくつもりである。追いつかないくらいの勢いで作者は現在も作品を世に出し続けているけれど。 (2008/09/07)
*ジェネラル・ルージュの凱旋 #amazon(right,4796657541) 題名:ジェネラル・ルージュの凱旋 作者:海堂 尊 発行:宝島社 2007.04.23 初版 価格:\1,600  わざわざ買わなくても図書館で予約して読めばいいかな、っていう作家がいる。作家さんには失礼かもしれないが、読んでそこそこ面白い、しかし作品や登場人物に惚れこんでしまい、是非、哀願したいので手元において置こうとまでは思わない程度の娯楽小説、というようなものであれば、図書館の予約待ちの列に並んでおこうとぼくは考える。  絶対に待てないので買うぞ、という本は、やはり海外ミステリのシリーズものであったり、ぞっこんこれこそ惚れこんだ作家のものであったり、何かの賞を受賞したばかりで、今こそが旬、とでも言ったような作品であろうか。それから文庫書下ろしの新作などで値段が手頃、しかも嵩張らないので書庫を圧迫しない、といった手軽なものも買います。  そんな割合狭いフィルターを潜り抜けてまで買ってゆこうとは思わないが、文庫落ちすればお金を払いましょう、という作家の一人がこの海堂尊である。面白いのだけれど、やはりユーモア・ミステリの類いは、軽い部類に属するし、軽いものはさっと読んでそのひと時を楽しむ、ということでいいのだと思う。  本書は、東城大医学部のシリーズの直系であるようで、主人公も脇役もほぼ『チーム・バチスタの栄光』と直列つなぎになっている様子。この9月に『ナイチンゲールの沈黙』が文庫化されているので、そちらの方が後回しになるなど、ぼくの中でこのシリーズ、前後整えて読めているわけではないので、それが作品の味わい方としては正当ではないなと思いつつも、でも、一作一作が独立した形でもあるし、キャラはほぼわかっているし、と、さほど差し障りを感じることなく読めてしまう。  本書は東城大の心臓部とも言うべき救急部に焦点を当てており、救急医学の花形と言えるドクター・ヘリへの願望を持つ救急部部長、ドクター速水の造形がとにかく楽しい。学内の派閥争いは、現実にいくつも存在する世の医学部という組織を笑い飛ばすかのように、デフォルメされ強調された幹部連中の戯画模様といった有り様。それ自体が本書のストーリーの根幹を成してはいるのだが、それ以上に救急医療に携わるスタッフたちの悪戦苦闘の様子が、プロットの中でしっかりとフォーカスされているあたりが本書の読みどころか。  特に災害が勃発したところ、通常なら受け入れるベッドさえない医学部病院を、救急災害時の基幹病院のような機能を一瞬で持たせ、ロビーに患者たちを受け入れてゆく速水の決断は胸のすくシーンであり、実際に救急医の志の高さに沢山個人的に触れた経緯のあるぼくにとっては、そう、これぞ、救急医療、これぞ災害医療、といった光景が展開する、といったいささか個人的に旗振りをしてしまいたくなる大団円なのであった。  医療は科学に基づくものだが、医療という機関を動かすのは、医療に携わる人間たちの哲学の問題である、というようなことをこの作者はシリーズを通してどの作品でも声高にアジテートしているような気がする。いささか挑発的になりかねない現場サイドにくみした医療に関わる目線をもって、大学病院という象牙の塔を照射してみせるところにこのシリーズの人気の秘訣があるのだと思う。  図書館と文庫落ちした順番だけれど、どんどん読み続けてゆくつもりである。追いつかないくらいの勢いで作者は現在も作品を世に出し続けているけれど。 (2008/09/07)

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