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*白き嶺の男 #amazon(4087741346,left,image) #amazon(4087488764,image) 題名:白き嶺の男 作者:谷甲州 発行:集英社 1995.4.30 初版 価格:\1,400(本体\1,359)  うーん、これって山男以外の人が読んだらどうなんだろう? ぼくの場合、山関連の本はノンフィクションをいやと言うほど読んでいるので、この手の基本的で起伏のない、しかも短編小説集というのは苦手である。『サージャントグルカ』のときと似たような読後感。  事実は小説より奇なりで、 山の本はドキュメントがとにかく面白い。 以前からMES 5 あたりで紹介してお勧めしてはずれたことのないモーリス・エルゾーグ『処女峰アンナプルナ』(白水社) や、何度も谷川岳の岸壁に挑んでゆく松本竜雄『初登攀行』(中公文庫) などは目の覚めるような傑作冒険ノンフィクションであるし、谷甲州も『白き嶺の男』のあとがきで述べている加藤文太郎の『単独行』、松涛明『風雪のビバーク』などのタフな先人たちの遺稿集は、涙が出るほどのヒューマンなドラマを秘めていたりしたものだ。  そういう意味では、この手のフィクションというのはどうも弱い気がする。そこをわかっているからこそ、山岳小説というジャンルを日本小説史に開拓したと言える新田次郎も、山岳遭難に材を取った安川茂雄なども、山岳史という事実に基づいた小説作りをしていたのが成功しているように思う。これらが作り物の山物語でなく、事実を脚色したところにできた作品だからこそ、尽きぬ深みが出ていたような気がするのだ。  フィクショナルな山岳小説というのは意外に弱い、と感じたのが本書だった。フィクショナルならこれほど山と正面から向き合わずにもう少しドラマチックなものが欲しいところだが、敢えて生々しい地味な極面に興味をむけたところが、谷甲州であると言えば言えるのかもしれない。  もっとひねりのある大長編小説を書いてくれることを、この作者には期待しちゃいます。 (1995.05.10)

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