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*蒼い瞳とニュアージュ II 千里眼の記憶 #amazon(40438361,right,image) 題名:蒼い瞳とニュアージュ II 千里眼の記憶 作者:松岡圭祐 発行:角川文庫 2007.11.25 初版 価格:\514  『霊柩車No.4』にしても、本書にしても、文庫書き下ろしというサービス性が凄い。売れっ子作者であり、おまけに本書などはテレビドラマ化に合わせての出版であろうに、部数の少ないハードカバーではなく、大衆受けする文庫の形で売り出してゆく。出版とメディア・ミックスのコマーシャリズムに乗って疾走する作家はやることが違う。  しかも手抜きというわけでもない。例によりご都合主義的偶然と無理なシチュエーション設定を優先するゆえに、ジェットコースター・サスペンスになってしまうところは長所でも短所でもあるのだが、相変わらず好きになれない。しかし、心を科学する主人公たちの眼線を綴る下りとなれば、いつもながらに魅力的な作家だ。  前作で過去を明らかにした一ノ瀬恵梨香が、本書では、巻き込まれた事件をきっかけにより深いトラウマと対決することになる。今回彼女は、ドリトル症候群に陥るが、これは動物たちが人間の言葉を喋るという幻聴に悩まされるものである。しかし元臨床心理士(前作で資格返上)である彼女は、この病を客観的に見つめ、自己を治療しつつ、事件と戦ってゆく。猫や鳥たちと話をすることで、動物たちの言葉は自分の深層にある意識と割り切って、自分と向かい合うという方向で、心を鼓舞してゆくのである。  映像的な展開を見せるのが巧い松岡圭祐であるが、行く先々で動物たちと話をする魅力的なヒロインの姿は、まるでディズニー映画のようにファンタスティックなものである。  前作は、「完全版」にて設定を変更しているらしく、クライマックス・シーン、即ちベンツ爆破の場面の記憶が少し異なる。  また、前作と本作との間に『千里眼』の新シリーズのエピソードが挟み込まれているようである。千里眼・岬美由紀の両親の死に、本作のヒロインが関わっていた事などが明らかにされるのだが、そちらのシリーズでこの件がどう扱われているのかは、また別の話だろう。  車を使った活劇と、精神領域に踏み込んだ物語が交互に立ち現れる不可思議な松岡ワールドは本書でも健在。動と静を持ち合わせた物語造形の天才ぶりにはいつも驚嘆を禁じ得ない。娯楽性を抜けと言いたいのだが、無理なんだろうな。『催眠』はその意味で最大の成功作だと未だに思えるのだが。 (2007/12/08)
*蒼い瞳とニュアージュ II 千里眼の記憶 #amazon(4043836147,right,image) 題名:蒼い瞳とニュアージュ II 千里眼の記憶 作者:松岡圭祐 発行:角川文庫 2007.11.25 初版 価格:\514  『霊柩車No.4』にしても、本書にしても、文庫書き下ろしというサービス性が凄い。売れっ子作者であり、おまけに本書などはテレビドラマ化に合わせての出版であろうに、部数の少ないハードカバーではなく、大衆受けする文庫の形で売り出してゆく。出版とメディア・ミックスのコマーシャリズムに乗って疾走する作家はやることが違う。  しかも手抜きというわけでもない。例によりご都合主義的偶然と無理なシチュエーション設定を優先するゆえに、ジェットコースター・サスペンスになってしまうところは長所でも短所でもあるのだが、相変わらず好きになれない。しかし、心を科学する主人公たちの眼線を綴る下りとなれば、いつもながらに魅力的な作家だ。  前作で過去を明らかにした一ノ瀬恵梨香が、本書では、巻き込まれた事件をきっかけにより深いトラウマと対決することになる。今回彼女は、ドリトル症候群に陥るが、これは動物たちが人間の言葉を喋るという幻聴に悩まされるものである。しかし元臨床心理士(前作で資格返上)である彼女は、この病を客観的に見つめ、自己を治療しつつ、事件と戦ってゆく。猫や鳥たちと話をすることで、動物たちの言葉は自分の深層にある意識と割り切って、自分と向かい合うという方向で、心を鼓舞してゆくのである。  映像的な展開を見せるのが巧い松岡圭祐であるが、行く先々で動物たちと話をする魅力的なヒロインの姿は、まるでディズニー映画のようにファンタスティックなものである。  前作は、「完全版」にて設定を変更しているらしく、クライマックス・シーン、即ちベンツ爆破の場面の記憶が少し異なる。  また、前作と本作との間に『千里眼』の新シリーズのエピソードが挟み込まれているようである。千里眼・岬美由紀の両親の死に、本作のヒロインが関わっていた事などが明らかにされるのだが、そちらのシリーズでこの件がどう扱われているのかは、また別の話だろう。  車を使った活劇と、精神領域に踏み込んだ物語が交互に立ち現れる不可思議な松岡ワールドは本書でも健在。動と静を持ち合わせた物語造形の天才ぶりにはいつも驚嘆を禁じ得ない。娯楽性を抜けと言いたいのだが、無理なんだろうな。『催眠』はその意味で最大の成功作だと未だに思えるのだが。 (2007/12/08)

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