男の視点と第三者の視点が入れ替わるところがあってわかりにくいかも試練。  「恋って…楽しいことばっかじゃないんだよね…。」   好きだから許せない。   色々求めてしまう。        俺も覚悟を決めて言わないと…。   言わないと…。   丘の上に一陣の風が吹く。      今日も午後から勉学の時間。   閣下はいつも通りぶーぶー言いながらも、しっかりと勉学に勤しみ、   今日の範囲は無事に終わることが出来た。  独 「ふぅー。やっと終わったか。」  男 「ご苦労様でした。」  独 「おい男、いつものを頼む。」  男 「はい、閣下。」   そっと閣下の頭に手をのせる。   なでなでなでなで  男 「今日も良く頑張りましたね。」  独 「〜♪この為に頑張ったのだからな。」  男 「え、あ、はい。左様ですか。」   最近は閣下も、恥ずかしげも無くこんなことを言うようになり、   逆にこちらが照れてしまうことの方が多くなった気がする。        あの秘密の場所で、俺は閣下に誓いを立てた。      『一国の総統とその補佐官であると同時に恋人同士』だと。      そうして閣下と恋人という関係になったものの…      実際変わったのは俺よりも閣下の方だった。   宮廷内でも俺を見つけては抱きついてきたり、   公務の時間であるというのに俺の部屋に遊びに着たりで、   色々と問題になったりもした。      もちろんそんな俺達を見て周りの宮廷に仕える人たちは色々噂したのだが…     『やっぱりね、こうなると思っていたわ』   『昔っからあの二人仲が良かったものね』   『まぁ麻生の妻になるよりずっとマシよ。    男さんは閣下のこと良く知っていらっしゃるし…。』   なんか皆こうなると最初から予想してたらしい。  男 「なんだかなぁ。」    独 「ん?どうした?」  男 「あ、いえ、独り言です。」  独 「そうか、いいから続けろ。」  男 「はい。仰せのままに。」   なでなでなでなで。   まぁでも、これはこれでいいのかな〜。と呑気に考えてしまう。   実際俺も凄く幸せだったりするし。  独 「〜♪」   それに…こうやって見ると閣下はやっぱりただの女の子であることを強く感じてしまうわけで…    独 「何をじろじろと見ておる。」  男 「いや、閣下も普通の女の子なんだな〜と思いまして。」  独 「お前はわらわが男に見えるのか?」  男 「いや、そういう意味ではなく…」  独 「ふふ。わかっておるわ。…わらわだって恋をする。     こうやって初恋の人と恋人になれたら、誰だって嬉しいものであろう?」  男 「(/////)さ、左様ですか。」  独 「ふふふ。赤くなっておるぞ。」  男 「(///////)」   なんかからかわれてるみたいだ。やられっぱなしもしゃくに障るので   ぐしゃぐしゃぐしゃぐしゃ!  独 「きゃ!」   今までなでていた頭を両手でぐしゃぐしゃと掻き回すと、閣下は小さく悲鳴を上げた。  男 「今日はここまでです。」  独 「えー!もっとやれ!」    男 「ダメです。この後にも予定があるんですからね。」  独 「ぶー。ケチ!」  男 「はい。私はケチですとも。」  独 「もう良い!…時に男。」  男 「はい?なんでしょう。」  独 「男、わらわはまた外に行きたい!」  男 「閣下。急にそう申されても…」  独 「なぜだ!あの時は連れて行ってくれたではないか!」   屋根裏部屋での事を言っているのだろう。  男 「いや、アレは…なんというか…」  独 「…。」   閣下はうつむき方を震わせている。   まさか…  男 「閣下…?」  独 「うっ…うっ…ひぐっ…」   げげげ!泣いてる!?  男 「かかかか閣下!わ、わかりましたから!どうか泣かないで下さい…。」  独 「ホントか…?」  男 「…はい。約束します。ですから…泣かないで下さい。」   自分の好きな女の子が目の前で泣いているのはかなり気まずい。   そう返事をするしか俺には無かった…。   しかし…。  独 「…。…。ふ♪」  男 「閣下?」  独 「そうか!連れて行ってくれるか!わらわは嬉しいぞ♪」  男 「な!」   …ウソ泣きでした。  男 「ちょ、ちょっと閣下ぁ!」  独 「男!もう約束したんだからな!デートは決定だ。」  男 「…はぁ。もうわかりましたよ。行きます。行きますよ!」  独 「ふふふ、よろしい。」     〜そんな二人の様子を向かいの部屋から双眼鏡を使って覗く女がココに一人〜  参 「それにしても最近は随分と閣下も女らしくなったわねぇ。」     その横には一人の男も立っていた。  執 「そ…そうなんですか?」  参 「んもぅ!見てわからない?男の子ってホント鈍感よねぇ。」  執 「はぁ…。」  参 「なんていうか、あの二人、自然な感じに成ってきたわね。うん。」   執 「でも…参謀殿は男殿のことが…。」  参 「…もういいのよ、それは。あそこまで見せ付けられちゃ…ね。もう吹っ切れたわ。」  執 「参謀殿…。…。そ、そのよろしければ…僕と…」  参 「あー!そういえば私の明日の演説の原稿作っとかなきゃいけないんだった!     そういうわけで、またね!執事君!」     そう言って参謀は持っていた双眼鏡をポイと執事の方に投げ、   軽くウインクをしたあと、自分の部屋に小走りで向かった。  執 「(/////)参謀殿…。」     〜再び閣下の部屋〜  独 「男、そういえば最近新しい執事が宮廷に入ったな。」  男 「え?あ、あぁ。あの男ですか。若いながらしっかりやってくれてますよ。     まだまだ半人前のようですが。」  独 「参謀ともよく一緒に居るらしいが…面白くなりそうだな。」  男 「参謀?え?何が面白いんです?」  独 「はぁ…。どうして男というものはこうも鈍感なのか…。」  男 「?」  独 「まぁ良い。で、デートはいつにするのだ?」  男 「…そうですねぇ、閣下の今後の予定は…。」   閣下の予定表を眺めてみたけれど、やはり一国の総統。   空いている時間は少ないわけで…。  男 「三日後ですね。」  独 「えー!そんなにかかるのか!?もうこの後行けば良いではないか。」  男 「ダメです!先程も申し上げたように、今日はかの国の要人達との食事会がこの後予定されてます。」  独 「めんどくさいのー。わらわはお前と二人でご飯が食べたいのに…。」   う…。この上目遣いは…反則だ。   一瞬食事会なんてもうやめてしまって…とも思ってしまう。  男 「閣下。私も同じ想いなのですが…こればかりは。」  独 「そうか…しかたないな。では三日後、約束だぞ。必ずだからな。」  男 「はい。では食事会の会場に参りましょうか。」   そういって歩き出そうとした俺の服を、閣下がぎゅっと掴む。  独 「手!」  男 「はい?」  独 「ばか者!手を繋いでいかぬか!」  男 「は、はぁ。」   そういうわけで三日後にデートをすることになったのだが…   三日後?   そうだ…   三日後って確か…。   しかし…デートを次の日に控えた二日目の夜…。   事件はおこった。  男 「閣下、夕食の準備が出来ました。」  独 「うむ。今日のメニューはなんだ?」  男 「今日は中華料理です。」  独 「…。まさか、青椒肉絲もあるのではないだろうな?」  男 「えーと、そうですね。メニューの中に青椒肉絲もあります。」  独 「わらわがピーマン嫌いなのは知っているであろう?」  男 「はい、存じております。しかし好き嫌いなくなんでも食べてもらわないと。」  独 「説教は良い。中華は止めだ。」  男 「し、しかし…すでに料理も出来てしまっています!」  独 「他の者に食べさせればよかろう。」  男 「せっかく料理長達が閣下の為に腕を振るって作ってくださったのです。そんなわがまま言わずにどうか…」  独 「男。わらわの言う事が聞けぬのか?すぐに作り直すようにと言っておるのだ!」  男 「閣下、もっと食べ物を大切に考えて下さい。」  独 「うるさいうるさい!食べ物なんていくらでも代わりがあるではないか。早く違う料理を作るように命じて来い。」  男 「そっ、そんな…!子供みたいなわがまま言わないで下さい!」  独 「なんだと!誰が子供だ!」  男 「閣下の事ですよ!」  独 「子ども扱いするな!」  男 「閣下はまだまだ子供です!」  独 「うるさーい!もうお前の顔なんか見たくない!出て行け!」  男 「こちらこそもう付き合いきれません!」   そう言い放って、俺はその場から去った。   そのままその足で中庭に向かい、そこで一人、星を眺めていた。   なんであんなに怒ってしまったんだろう。   いつもならあれくらいのこと、笑って見過ごすことが出来のに。   でもさっきは許せなかった。   嫌だったんだ。   あんな事を言う閣下を見たくなかった。    ??「男さん。」  男 「ん?」   不意に背後から声をかけられ、思考を中断して振り向く。  男 「あぁ。執事か。」  執 「また随分派手に喧嘩したみたいですね。」  男 「まあなー。」   どこか上の空な返事をしてしまう。  執 「後悔…してるんですか?」  男 「あぁ。今まで何度も閣下のわがままにつき合わされてきた…。でも、     あそこまで怒ることはなかった。何でだろうな。許せなかったんだよ。」  執 「…。男殿は閣下の事をどう思ってるんです?」  男 「閣下は俺が忠誠を誓った主君。それは今も昔も変わりない。けど…最近は、     一人の女性として見てしまってるんだ。とても大切な人…。いけないことなのかもしれないけれど、     閣下がこの国の総統であることなんて、どうでも良く思えてしまう時だってあるんだ。」  執 「…。それが答えなんじゃないんですかね。」  男 「え?」  執 「大切な人だからこそ許せなかったんですよ。本当に好きだから。」  男 「…。そう…なのか?」  執 「好きな人には色々求めてしまうものです。」   そうか…。   好きだから許せない。   色々求めてしまう。   そういうことだったのか。  男 「自分の気持ちってわかりにくいものだな。」  執 「そうですね。でも喧嘩するほど仲が良いって言うじゃないですか。」  男 「そうだといいんだが…。」  執 「…ところで男殿。明日は閣下とデートでしたよね?」  男 「あ、あぁ。一応な。明日は…先代の…。」  執 「…♪」  男 「ん?」  執 「男殿、僕に良い考えがあります!耳を貸してください。」  男 「あ、あぁ…」   こそこそこそこそ…  男 「ええええええええ!?そ、そんなこと!」  執 「えー、嫌なんですか?」  男 「べべ、別に嫌というわけではないんだが…その…」  執 「なら決定ですね!では早速準備に取り掛かりましょう!」  男 「え?あ?ちょっと…」   そういって執事は俺を半ば無理やり宮廷に停めてあった車に乗せると、   夜の街へと走り出した。   なんかコイツ最近参謀に似てきたな…。   〜一方閣下の部屋では…〜   コンコン。  参 「失礼します閣下。夕食をお持ちしました。」  独 「…。」   何も言わずにそれを受け取り、静かに口にする閣下。  参 「派手に喧嘩したみたいですね。廊下の方まで声が響いてましたよ。」  独 「そうか。しかし…」  参 「?」  独 「男が…男が怒るなんて初めてだ…。」  参 「…。そうですね。男君はあぁ見えてあまり怒らない人ですから。」  独 「わ、わらわのこと…嫌いに…なったのかな…。」   参 「閣下…。」    目に涙を浮かべた閣下の頭をそっと撫でる参謀。  参 「恋って…楽しいことばっかじゃないんだよね…。」   しばらく閣下の頭を撫でた後、どこか自分に言い聞かせるように参謀は話し出した。    参 「好きだから許せなくなっちゃうこともあるんだよ…。」  独 「そう…なのか…?」  参 「喧嘩の原因は何だったんですか?」  独 「わらわがピーマン食べたくないって…言ったのだ。     そしたら男が食べ物は大切にって…。いつもなら許してくれるのに…。」  参 「そうですか…。閣下には…話しておかないといけないのかもしれませんね。」  独 「?」  参 「実は…。」   …。   参謀の話は終わる頃、閣下はまた泣いていた。    独 「…そんな…うっ…うぅ…男に…謝らないと…」  参 「そうですね。ですが今日はもう遅いです。男君の頭が冷えるまで待ったほうが良いかと。     明日、デートなんでしょう?その時に謝れば良いのでは?」  独 「…。わ…かった。参謀…。今日は一緒に…。」  参 「はい。今日は久しぶりに一緒に寝ましょうか♪」  独 「ありがと…。」  参 「いえいえ。    …それにしても…執事の奴、上手いことやってるかしら…。」  独 「ん?どうした?何か言ったか?」  参 「べ、別になにも!…では寝る前にお風呂に参りましょうか。」  独 「…うむ。」   二人は浴室に向かって歩き出した。   そして翌日…。   宮廷の要人専用の駐車場で閣下を待つ。      執事と参謀が此処での待ち合わせをセッティングしてくれた。      本当に閣下は来てくれるのだろうか…。   スーツ姿でそわそわしていると…   『お、男!』   駐車場内に閣下の声が響く。  男 「閣下。お待ちしており…」   …そこに居たのは…女の子。   ごく普通の。   この女の子が閣下?  独 「な、なんだ。じろじろ見るでない!」  男 「そ、その服…。」   いつもと軍服姿ではない私服姿の閣下。   胸の鼓動が早くなっていくのが自分でもわかる。  独 「参謀が選んでくれた。その…ダメかな?」  男 「と!とんでもない!とても可愛らしいですよ。」  独 「そ、そうか(//////)」  男 「…では参りましょうか。」  独 「…あぁ。」   閣下を助手席に乗せ車を走らせた。   …。   …。   妙な沈黙が車内に訪れる。   気まずい…。      …昨日の夜あんな言い合いしたばっかだもんな。      それに今日の閣下はなんか別人みたいで…   妙に意識してしまって話しかけにくいんだよな。  独 「男…。」   沈黙を破ったのは閣下の方からだった。   男 「はい?」  独 「昨日は本当に…すまなかった。」  男 「そんな…。私の方こそカッとなってしまって…」  独 「違う!悪いのはわらわの方だ。男の気持ちも全然知らないで…」  男 「私の気持ち?」  独 「昨夜参謀から聞いた。お前の生い立ち…」  男 「…あぁ。その事でしたか…。」   俺の生い立ち…。      今でこそこうやって宮廷に仕え、何不自由ない暮らしをしている俺だったが、   もともとは貧しい村の生まれだった。両親も早いうちに亡くした。      そんな身寄りが無い子供が一人で生きていく為には自らの手を汚さなければならないわけで…      毎日畑や店から食べ物を盗んだ。      生きるの為に必死だった。   そして捕まった。   冷たい牢獄の中で生きる気力も希望も失っていた俺に手を差し伸べてくれたのが     先代の閣下…今の閣下の父上だ。  独 「男が…そんなに苦労していたなんて知らなかったから…」  男 「…。」  独 「お前が言うようにわらわはわがままだな。今の何でも食べることが出来、好きな事も何だって出来る…     そんな生活が当たり前だと思ってしまっていた。でも…それは違うのだな。」  男 「そうですね。この国にもまだまだ満足に食べることが出来ない者がたくさんいます。」  独 「そういう者達の為に政治を行うのが…国の総統であるわらわの責務。」   男 「はい。」  独 「でも…まずは我々国の指導者から生活を変えていかなければいけないな。」  男 「閣下…。」  独 「これからは色々無駄な経費は削減することにする。今の宮廷内には無駄が多すぎる。」  男 「素晴らしいお考えです。私は…閣下が民のことをそこまで考えて下さって嬉しゅう思います。」  独 「ではその…わらわのことを許してくれるのか?これからは…     その…好き嫌いはしないようにするから…。ピーマンも頑張って食べるから!」  男 「もちろんです。私も昨日は言いすぎて申し訳ありませんでした。でも…わかっていただけて嬉しいです。」  独 「良かった…。もう嫌われてしまったのかと思って…。」  男 「閣下のことを嫌いになるなんて、あるわけないじゃないですか。こんなに愛おしく思っているんですよ?」  独 「男…ありがとっ!!!」  男 「あ!ちょちょちょっと閣下!!危ないですって!!」   涙を浮かべ、運転中の俺に抱きついてくる閣下。   車はその後何度か蛇行運転を繰り返しながら目的地に向った。  独 「ところで何処に向っておるのだ?」  男 「もうすぐ着きますよ。閣下、今日が何の日か覚えていらっしゃいますか?」  独 「…そういえば…。お前、よく覚えておったな…。」  男 「えぇ。もちろんです。ほら!着きましたよ。」     俺たちが降り立った場所は…小高い丘の公園。   ココは閣下の父上と母上が眠る場所。   詳しいことは知らないが、此処がお二人にとっての思い出の地らしく、   此処にお二人のお墓、そして先代の功績が称える石碑が建てられたのだった。  独 「父上、母上…最近忙しくて此処にも来れていなかったな。」  男 「そうですね。閣下コレを。」   そういって俺が閣下に渡したものは花束だった。  男 「今日はお二人の大切な記念日ですからね。」  独 「ありがとう。今日は二人の結婚記念日であったな。二人共きっと喜んでると思う。」  男 「この日は毎年盛大にお祝いしてましたよね。今年でたしか…。」  独 「結婚20周年だな。生きていれば…。」  男 「そうですね…。」  独 「二人とも本当に仲がよくって、羨ましかったな。わらわも…ああいう夫婦になりたいものだ。」     閣下は花束を墓前に置き、静かに目を閉じている。       覚悟を決めて言わないと…。  男 「閣下…。」  独 「なんだ?」  男 「お伝えしたいことがあります。」   のどがカラカラする。   久しぶりに味わう緊張。   閣下に告白した時もこんな風に緊張したっけ…。   でも、言わないと。  男 「閣下。私は閣下に、いや、貴女に誓いたいことがあります。」  独 「…。ん?」   閣下の目をまっすぐに見つめ、俺は大切な言葉を言う。  男 「これからも、ずっと…貴女と共に生きたいです。恋人という形じゃなく夫婦という形で。     貴女のことを守っていきたいんです。それに、何より俺が…貴女と居る時が一番幸せだから…。          だから…俺と結婚してください。」   丘の上に一陣の風が吹く。   その風が閣下の髪をふわりと撫で上げた。   時間が止まったかのように思えるほどの   沈黙…。   閣下は目を真ん丸くしていたが…   やがて小さくうつむきながら答えた。  独 「はい。」   閣下の返事を聞くや否や閣下を抱きしめる。     男 「ありがとう。」  独 「こちらこそ…ありがとう。」   嬉しさを表そうと、俺は更に力をこめて閣下を抱きしめた。   閣下もそれに答えるように俺の胸に顔をうずめる。   そして囁く様に話し始めた。  独 「此処は父上が母上にプロポーズした場所だって小さい頃聴いたことがある…。」  男 「そうだったんですか。」  独 「わらわにとっても…此処が大切な場所になった。」  男 「屋根裏も大切な場所なんじゃありませんでした?」  独 「大切な場所はいくつあっても良いのだ!これからも二人で…もっともっと増やしていけばよい。」  男 「…そうですね。お二人にも認めてもらいたくてこの場所にしたんですけど…。認めてもらえたのかどうか…。」  独 「わらわが選んだ男だ。二人も認めてくれているに決まってるであろう。」   俺は抱きしめていたその手を離し、ポケットから用意していたものを取り出す。  男 「閣下。コレを。」  独 「コレは…」  男 「昨日執事と二人で選んだものなんですが。」   昨日あの後散々探し回った指輪。  独 「…。」  男 「閣下?」   閣下は何も言わずにぽろぽろと涙を流していた。    独 「す…すまない…。その…嬉しすぎて…こ…言葉が出ないのだ…。」  男 「そこまで喜んでいただけると私も嬉しいです。」  独 「ありがとうでは…言葉では…言い尽くせないこの気持ちが歯がゆいぞ!どうしたら…」  独 「!」      閣下の言葉を遮って唇を奪う。  男 「十分伝わってきましたよ。閣下の気持ち。」  独 「(/////)ばか者…。」  男 「あ!そういえば、まだ二人に正式に挨拶してませんでした。」  独 「そうであったな…。」   閣下が涙を拭うのを確認すると、手をつないで墓前に立つ。  男 「お父様、お母様、あなた方の娘は、私が一生をかけて大切にしていきます。」  独 「父上、母上、…私はこの人と結婚します。」   また一陣の風が二人を包む。   そろそろ冬に向う季節だというのに   なんだかとても暖かく感じる。   それが此処に眠る二人からの   返事である様な気がした。   〜そしてやっぱりそんな二人を遠くから双眼鏡を使って覗く男と女〜  参 「どうやら上手くいったみたいね。」  執 「ですね。良かったです。」  参 「いいなぁ閣下。私もいつかあんな風にプロポーズされて見たいなー。」  執 「あ、あの参謀殿…これ。」  参 「え?このピアス…。」  執 「昨日男殿と指輪を買った際、一緒に買ったのですが…」  参 「こ、これを私に!?」  執 「はい…。その僕…参謀殿の事…」   本当に好きだから、   大切に想っているから、     許せないこともある。   でも、それはお互いに知りたいと思ったから。   お互いにもっと近づきたかったから。   冬の始まりを告げる冷たい風が   それぞれの想いを乗せて丘の上を包む。   その風の中で   この国の総統も、彼女に仕える者達も   それぞれの幸せを見つけ始めたみたいです。           お      し     ま     い