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騒然とした空気が当たりに立ち込めている。普通、神社というのはもっとしんみりとしていて、ザワザワした空気とは無縁な、静かな場所ではなかろうか?普段は間違いなくそうなのだろうが、お正月という今はその常識から外れるらしい。
「お祭り騒ぎが好きな奴が多いんだな」
「勝紀君は嫌いなんですか?お祭り騒ぎ?」
晴れ着姿の未来が隣に座ってムスッ、と座ってる勝紀に尋ねる
「嫌いじゃないがこういうのは嫌いだ」
「なんでですか?」
「意味もなく五月蝿すぎる」
勝紀も騒ぐ事は好きだ。
気心知れた相手と一緒に飲む酒は旨いし、食べる飯は格別だ。そういった連中と馬鹿話をし、笑いあうのは何よりも楽しい。それの生で酒が進んで、食が進んで今年は二日酔いにかなり悩んだのだが、それもいつか笑い話になるだろう。
そんな事を考えながら無意識に頼んだ大福に手を伸ばす。
噛み切ったはずの餅は非常に粘りがよく、そのままビロ~~ンと動かした右手の分だけ伸びる。中のあんこともちを一緒に口の中でかき混ぜ、その味を堪能し、次に手を伸ばそうとそっちを見ると既に残りは三つ。最初頼んだのが6個だから未来に二つ食われているということになる。
「(ま、いいわ)」
和菓子は好きだがそれは洋菓子より好きというだけで、大好きというわけではないし、もともと甘いものはあまり好きではない。そもそも、今日の初詣すら自分は来るつもりはなかったのだ。
気心知れた中のしんたや藤たちと一緒に小さな、ささやかな忘年会を行い何時もより酒量を超えて飲んでいた勝紀は初詣なんて行かないで寝正月を満喫するつもりだったのだが・・・
「一緒に初詣に行きましょうw」
晴れ着姿でニコニコと顔一杯に笑みを浮かべた未来に寝正月計画を叩き潰され、彼女のために足となってバイクを動かす事になった。これが未来でなければ彼は、帰れ。の一言で追っ払って再び眠りの世界に逃避しただろう。
それが出来ないのは、惚れた弱みなのかそれとも彼の世話好きな性格ゆえなのか・・・。
二個目の大福をたいらげると彼はぼんやり、空を見ながら溜息を吐き出し
「そろそろ帰るぞ」
そう言って立ち上がる。それを聞いた未来が慌てて大福を口に押し込み
「はい。行きましょう」
よっこらせと立ち上がるが勝紀は見来の方を見て動かない
「どうしたんですか?」
「ついてる」
勝紀がそう言いながら自分の口の周りを指で示す
「え!?」
それを聞いた未来が慌ててティッシュで口元を拭うのだが、まだ一箇所、拭いきれて居ない部分がある。
「まだ付いてるぞ」
そう言いながら指でその示すのだがなかなか未来はそこに行き着かない。近場に言ったかと思えばはずれ、ようやくまた来たかと思えばまた遠くなる。だんだんとイライラしてきた。
「おい」
「はい?」
「動くな」
そう言うと勝紀の指が未来の変わりにそこからあんこを拭い取る
「ありがとうござ」
未来が礼を言おうとそっちを向くと
ぺロリ
勝紀がそのあんこをペロリと舐めてしまった。
「どした?」
彫像と化してしまった未来の変化を勝紀がいぶかしむのだが未来からの返事は無い。それほど強烈な衝撃だったようだ。
勝紀は一体なんだってんだ?と首をかしげて暫く悩んだ後、固まった未来を引きずってその神社を後にした。
もう少し女心を勉強してください
未来は本気でそう思った。