Writer 多田

忙しくて本格的な釣りに行けないとき、それでもどうしても魚信を味わいたいとき、私は近所の川に出かける。そこは自転車で5分もしないポイントで、たまたまキャスティング練習をしていたときに、ナマズがトップウォータールアーに食いついた事で発見する事ができた『秘境』である。

この釣りが楽しいのは、特に構える事なく、実にゆるゆると釣りを楽しむ事ができる点だ。幾度も通っているため、どこでバイトがあり、どこで釣れるのか熟知しているからこそ、お決まりの面白さ、繰り返しの美学とでも言えようか、ドラマ「水戸黄門」的な楽しさがある。

ナマズは視覚が極めて弱い分、周囲の音には敏感で警戒するとバイトが一気に遠のいてしまうために、ゆっくりと水に近づき、まずはディスタンスをとって足下 を探る。足下に魚の気配が無い事を確認してから釣り座を構える。ルアーは水面で音を出すノイジープラグを使う。スミスのキャタピーというナマズ専用ルアー である。これは目の部分に発光体を挿入する事ができ、夜間の視認性を高めることが可能であるが、実はあんまり使った事がない(笑)

まずはシャローラインで休んでいるであろう魚を狙いダウンストリームで、着水音を大きめにするように意識してキャストする。このラインでトレースすると一度はバイトがあり、乗らなければ下流に少しずつ移動し、探る範囲を変えていく。すると

「ボフッ!!!」

という独特の吸い込み音を出してナマズがバイト。ナマズは捕食が下手なので、びっくり合わせは禁物。穂先に聞くようなイメージでゆっくりと大き めのモーションでアワセをいれると、ロッドにずしりと重みを感じる。ナマズはかかると障害物に突っ込むので、一定のスピードで巻いてこないとバレてしま う。私はロッドワークで浅瀬からナマズを離してから寄せる。次にバレる確率が高いのは目の前に来たときの取り込みの瞬間だ。ナマズは反転したり、ロールし たり首を振ったりと最後のあがきを見せる。ダメージを与えないためにも、スムーズなランディングが求められる。私はフィッシュクリッパーで口を掴むと無事 ランディングに成功、60cmの立派な魚であった。


その後はルアーをウェイクベイト系のルアーANTHRAX100に変えてさらに下流を釣る。このルアー、多摩川の鯰人(鯰釣りに勤しむ者の俗称)の間では、反則とまで呼ばれる、かなり釣れるルアーだ。私個人としては別にこれじゃなくても釣れる気がするが、確かに流れに負けずポイントを選ばないであろうこのルアーは釣りやすいと感じる。しばらく浅瀬のラインを引いていると再びバイト!しかしこれは運が悪く乗らない。その後も同じところを通して何度もバイトを得るが乗らない。このじれったさも、この鯰釣りの醍醐味の一つである。さすがにバイトが遠のいた所で、今度は流れに絡むポイントでうろうろしてる魚を狙う。これはかなり大きめの着水音でリアクションバイトを誘い、出なければすぐさま回収、という釣りだ。これの狙いが成功し、鯰がバイト!今度は確実にのった。流れの緩い所に誘導してキャッチする。


40cm程とサイズダウンしてしまったが、十分に楽しめたので帰途につくことにした。気合いを入れた魚との真剣勝負が釣りの楽しみであれば、こうしたゆったりとリラックスした魚との対話も釣りの楽しみである、と私は思う。

ロッド :fenwick GFS77CMH-2J"Seventy-Seven"
リール :cronos150
ライン :剛戦+ファイアーラインショックリーダー
ルアー :キャタピー、Anthrax100
最終更新:2010年05月24日 16:40