Angler 市毛、多田、小野
Writer 小野

3月24日。春合宿最終日。
といってもこの日の釣りは希望者だけで、残ったのは2年生の市毛さんと多田さん、そして1年生の僕、の3人のみであった。
そんな春合宿の日程の中ではオマケ的位置づけであると言えなくもないこの日の釣行を、僕はかなり特別なものとして意識していた。理由は単純、この日が僕にとって人生初の渓流デビューとなるからだ。


昼前、本日の目的地である河川に到着。車を道路脇に止め、各々支度を始めた。すでにウェーダー(僕もこの日のために事前に購入)を3人とも装着済みであったので、身支度はほんの数分で終わり狙いのポイントまで歩いて行くことになった。途中、着なれぬウェーダー姿を市毛さんから農家の息子のようだと完全に馬鹿にされながらもポイントに到着し、まず渓流の水質のよさと渓流独特の雰囲気に感動し、それだけで今日参加してよかったと思えた。

そしていざ入水!
川の中に入ると水が冷たく水圧でウェーダーに締め付けられるような感じだし、流れが強く足をすくわれそうだしで初めは慣れなかったが、歩いているうちに感覚をつかめてきて気にならなくなった。
少し進んだのち市毛さん、多田さんのアドバイスのもとポイントを一つ一つ探るようにキャストしていく。が、まだまだキャストの下手な僕はうまく狙った所に飛ばすことができない。渓流はキャスト一発勝負!狙いの場所との誤差十数センチのところに飛ばせるようにならなくちゃ釣りにならない!と先輩たちから聞いていたがそのことのむずかしさを改めて体感した。

なかなか魚がいないようなので一度川から出て、目で魚を探そうということになった。
しばらく歩いて行くと先を進んでいた市毛さんが魚の群れを発見!それを聞いて多田さんと僕は息を殺してゆっくりとその場所へと近寄っていく。
まずは多田さんが草陰から慎重にキャスト。何度かキャストすると「うおっ!!」という多田さんの声が!ついにバイトがあったという!一同興奮して同じ場所で粘ってみたが結局バイトはその一度きりで多田さんはアワセまで至らなかったことを心底悔しがっていた。

その後、車で本格的に移動して上流まで上がってみたが市毛さんにも一度バイトがあった程度で思うような釣果があげられぬまま本降りの雨に見舞われ午後3時前納竿となった。



ただ僕は初めて渓流で竿を振れたことだけで楽しかったし、普段管理釣り場に慣れてしまっていただけにネイティブの釣りの容易でないことを思い知らされてよかったと思っている。エリアにはエリア独自の楽しみ方があり僕は大好きだが、やはり釣りをする者としては常に魚を目で見て確かめられるような場所に身を置くのではなく、ボウズになる恐怖にさらされながら、魚のいる場所や棚を探り、その時々に応じた釣り方をして価値ある1匹を釣りあげる本来的な釣りというものも体験していくべきだなということが今回の釣行を通して一番感じたことだった。

今回の春合宿は全体的に釣果は良いとはいえないというのがみんなの感想だがそれはあくまで釣果だけをみればであって、それ以外の点、美味しい食事や仲間との談話、ルアーボックス盗難未遂事件などさまざまなハプニングもあり面白おかしい素晴らしい合宿だった。次の合宿もぜひ参加したいし、次に渓流に行く際には必ずや釣果をあげてやる、と帰りの電車の中で雪辱を誓った。
最終更新:2010年05月18日 22:09