世の中には常識では解決できない問題‐というかなんというか‥‐がある。
俺の隣でポテチを食べているこのガキもそんな一人であるわけでー


「しかし、この『大ざっぱすぎて伝わらないものまね選手権』というのは本当に面白いではないか!
まだ録画されているのがあれば観せるとよいぞ!」
「これはたまにしかやらないんだよ。もっと観たいなら動画サイトでもあさっとけ。
‥まーお前みたいなお子ちゃまには無理か?」
「むむっ!?言いよったな‥ならばこのパソコン、しばらく私が占領させてもらうぞ。」
「好きにしろって、俺の仕事の邪魔にならないなら、さ。」

こいつの名前はプレイグ。
なんでも、吸血コウモリの化身とかいう存在らしい。
しばらく前からこの借家に居候している迷惑な奴だ。

「あーそうだ、お前が来てから明日で1週間だろう?」
「そうであるが、それがどうしたというのだ?」
「家賃払え。」
「な!?何を言っているんだジャック!?」
「お前‥いきなり人の家に押しかけてきたやつをタダで泊めてやるわけがないだろうが。」
「ふぇぇ‥また故郷が遠ざかるのか‥」

あいつとの出会いはいきなりだった。
突然ベランダの扉が開いたと思ったら、あいつがいて、
「父上の仇っ!覚悟せよっ!」とか言いつつ飛びかかってきたのは覚えている。
無我夢中で気が付いたらあいつが頭にマンガみたいに大きなタンコブを作って倒れてたんだっけか。

気が付いたあいつから話を聞いてみると、なんでも父親をバンパイアと間違えられてハンターに殺されてしまったらしく、
仇を討つために情報を集め続けた結果、俺の顔ブックのアカウントにたどり着いたらしい。
本人は藁をもすがる思いで俺に狙いを定めていたらしく、勘違いだと分かると盛大に泣き出していた。
「ううぅっ、わ、私は何のためにこれから生きていけばよいのだぁ‥‥‥‥」
と言っていたのをよく覚えている。仇討ちなんてできっこないのに。
なんでも父親が倒されたのは200年前らしい。
いつの時代だよ。日本まだ江戸時代じゃね?
そういうわけで彼の仇討ちは間違いなく無理なのだ。人間200年生きるなんてできるわけがない。
‥まぁこいつのことも考えるとそのハンターとやらも人間かどうかは怪しいものだが‥‥
ともかく、日本生まれ日本育ちの25歳のハーフの俺には全く関係がないことだ。
それにしても下の名前が同じってことだけではるばる日本にやってきたこいつはあまりにも不用心で、
「‥実は、故郷の父上の墓に仇討ちはできなかったと報告に行きたいのだ。」
「なら行けばいいじゃねーか。お子ちゃまだからってお前の行動にわざわざ俺の意見を求めるつもりか?」
「そ、そうではなくて、その‥‥旅費が底を尽きて‥だな、帰りの飛行機の運賃の持ち合わせがないのだ‥」
という始末のため、仕方なく家に泊めてやっているのである。もちろん宿泊費はとるが。


「ん?」
「どうしたのだ?パソコンならさっき使い終わったから持っていくがよい。」
「そうじゃなくて、お前さ、吸血鬼じゃないんだよな?」
「左様。私は吸血コウモリの化身であって、
あのような感染病のように広がるくせに、貴族や王のように人の上に立った気でいる屍人とは違うわ。」
「じゃあなんで人の姿をしてるんだ?なんかこう、もっとコウモリの感じが‥」
「あぁそのようなことか。
私たち化身は字のとおりさまざまな姿に化けることができるのだ。
化けると言っても幻覚を見せるようなものではなく、実際に変身することができる能力を持っている。」
「へぇ、じゃあその姿も仮の姿、ってことか?」
「左様だ。この姿はパスポートを取得するときにとった姿だな。
写真を撮るときに私としたことが緊張してしまい‥変身の調節に失敗してこのような小さな姿になってしまったのだ。」
「へーぇ、じゃあ元のコウモリの姿に戻ってみたらどうなんだ?」
「うむ?」
「だから、だから元の姿に戻ったらどうなんだって?」
「いや‥一度変身すると大きく魔力を消費するのでな‥あまりむやみに変身を解除するわけにもいかんのだ‥」
「その魔力っていうのを補給する方法ってあるのか?‥お前のことだからロクな事じゃなさそうだが。」
「おぬしの思うロクな事とは何なのかは知らぬが‥確かにあまり好ましいことでもあるまいて。」
「へぇ、でもちょっとくらいのことなら我慢してやるからさ、見せてくれよ。
そこまで言われると気になっちまうじゃねーか。」
「‥覚悟があるのならばこちらも拒んでばかりもいられないか、見ておれ。」


くるりと“彼”が回ると足元から煙のようなものが噴き出て前が見えなくなる。
煙が染みて涙が出るので目を閉じて待っていると、声をかけられたのでゆっくりと前を見る。
「おい、どこにいるんだ?」
「上だ、おぬしの上。」


見上げた俺の前にぶら下がっていた“彼女”の衝撃を、決して忘れることは絶対にないだろう。

体格は小さく、“彼”と同じように子供にしか見えない大きさだ。
同様に胸も小さく、かろうじて男性の持つそれではないと分かる程度の膨らみしかない。
雪を人の形に固めたような肌の色と銀色の髪が、“彼女”の出身をうかがわせる。
しかし、そんな美しい少女の姿を持つ“彼女”には異様な点がいくつもあった。
瞳はまるで血の色そのもののように紅く染まっており、
普通の人間の二倍はあろうかという黒く大きな耳が頭頂部からピンと上に向かって生えており、
ふさふさの毛に覆われた四肢の付け根からは同じく黒い色をした手足が生えている。
その手足の異様さは色だけにとどまらず、
手には鋭く長い指が三本生えており、手首からコウモリの翼となる被膜が伸びている。
足も人間のそれよりかなり大きめで、横ではなく縦に伸びた爪がケモノの持つそれであるとすぐにわかる。

「‥え?どなたですか?」
「何をとぼけたことを言っておるのだ。‥これが私の本当の姿であるぞ。」
それだけ言って天井から飛び降りておれの目の前に降り立つ“彼女”
ロングヘアーが舞って幻想的に思える。
「いやいやいや、いろいろ聞きたいことがいっぱいあるんだが。」
「この姿のことか?私たち化身の真の姿はこのような人を模した姿であるのだ。」
「そ、それはなんとなくわかるんだが、なんで裸なんだ!?なんで女になったんだ!?」
「あぁ、そのことであるか。
私たちの変身は服装も含まれている。よって、変身を解くというのはこのように裸になることと同義なのだ。
また、私たちは人間と真の姿にて交わることで子を作る。
化身の子は化身にしか産めぬゆえ、人の姿を取っているときは威厳を損なわぬよう男の姿をとっているのだが、
この通り私の真の姿は女である。」
“彼女”は淡々と語る。
俺はこんな美少女と1週間も一つ屋根の下で暮らしていたってのか。世の中何が起きるかわからないものだ。
呆気にとられ、ぼんやりと見つめていた視線を急いで“彼女”の体から離す。
「ははは、私が年端のいかぬ少女の、それも異形の姿をとっておってもおぬしの雄の部分は反応しているようだな。
たしかこういう時に『このロリコンどもめ!』と言うのであろう?」
「わ、わかったから早く変身するか服を着てくれ。いつまで俺はあっちを見てなきゃいけないんだ。」
「ふむ、そう言われても変身するための魔力は足りぬし、
おぬしの持っている服は大きすぎて、とても着れそうにないぞ?」
「じゃあその魔力を今すぐ溜めろよ!」
「ふむ、よいのか?」
「よいも何もねぇ、さっさと服を着ればどうだっていいから、さっさとしろよお子ちゃまが。」
「あいわかった。ならば少しおぬしの精気、頂かせてもらうぞ。」
「え?」

“彼女”は左にあるカレンダーを見て煩悩を押さえつけていた俺にいきなり覆いかぶさった。
あぐらをかいていた青年に少女が抱きつく光景は、はたから見ると姪に甘えられる叔父のようだろう。
突然のことで驚きを隠せず逃げようとする俺だが、“彼女”の力は強くて振りほどくことができない。
「何やってんだよ!裸のお子ちゃまに抱きつかれるとか、犯罪だぞ犯罪!」
「暴れるでない!じっとしているのだ!」
視界に星が散る。“彼女”が頭突きをしてきたようだ。
俺があまりの痛さにくらくらしていると、首筋に息がかかり、


「‥‥‥っうぁ‥!?」

“彼女”の牙が突き刺さった。

痛みはない。だが、あるべきはずの痛みがないということが違和感を呼び、恐怖となる。
「な、に、を‥?」
「‥‥‥」
俺に上下の犬歯を深々と差し込んでいるので、“彼女”は答えることはない。
その代わり、恐怖で青ざめた俺を慰めるように抱きつく手で背中をさすってくれている。
「俺を、食い殺そうってのか‥‥?」
「‥‥‥」
やはり返事はない。
しかし、背中をさする手が離れ、指で背中に「×」と書いた。

俺を食い殺そうというわけではない、しかし首筋に噛みつく、コウモリの化身‥‥‥‥
混乱する頭でこれから起こることが何か考え付くことと、
“彼女”の牙が刺さる首筋に甘い痺れが起きるのは同時だった。

「っっふ!‥‥ふわぁぁぁぁ!‥ぁあ!」
牙の刺さった傷口から出てきた血を吸われてる!
心臓が動くのと同じリズムで、感じたことのない気持ち良さが首筋から広がっていく。
頭の中にお花畑ができたように何が何だか頭の中がまとまらない。
それどころか、痺れが頭に広がりこの感覚に身を投げ出してしまいたくなる。
体が死後硬直のように張りつめたり、逆に脱力したりを繰り返し、“彼女”ごと跳び上がってしまいそうだ。
「ぅあっ‥!‥ぁ‥!‥‥‥っぁ!」
しだいに、体の筋肉の筋一つでさえ完全に脱力した俺は、眠るようにして気を失ったのだ‥‥と、思う。


「おい、終わったぞ。起きるがよい。」
「うん‥あははぁ、もう食えねぇって‥‥‥」
「何を寝ぼけておる‥そもそも食事の夢を見るほどよく食べるわけでもないくせに‥」
頭突きを喰らって目を覚ました俺の前にいたのは、1週間前に俺を襲おうとした“彼”の姿。
いつの間にか布団まで移動させられていた俺の枕元に座布団を敷いて座っている。
「う‥ん‥痛ってぇ‥‥あ、変身、終わったみたいだな。」
「うむ、おぬしの血は白人の上品な味と黄色人種の繊細な味が混じり、とても美味であった。」
「すごいくらくらするんだが。」
「すまぬな、久しぶりの吸血であったものでな‥危うく失血死させてしまうところであった。
だが、おぬしの精力‥血が上質であるため、多くの魔力を生成できた。礼を言うぞ。」
「おいおい、じゃあこれは貧血ってことか?」
「そういうことになるが‥代わりに私が生成した魔力を送り込ませてもらった。
今はつらいかもしれぬがじきに体の調子も戻るから安心するがよい。」
「魔力が?おいおい、そんなもん人間の俺に使っていいものなのかよ?」
「安心せい。もともと微量ながらも人間にも魔力は流れておる。
それが増えたからといって、元気になることはあるが調子を損なうことはないのだ。」
「うさんくさいなぁ、でも一応信じてやる。お前は嘘はあまりつかないしな。」
「な!?それは私が嘘をつく時があると言いたげだな!」
「へぇーこの前皿を割っちゃったのを必死で隠してたのは‥」
「そ、それを言うでない~っ!」
次の瞬間、俺の視界は“彼”の顔で埋まり、星が散った。
俺は気絶して疲れのためそのまま寝てしまい、起きたのは目覚まし時計が鳴ってからだった。


「機嫌がよさそうじゃないか。どうしたんだ?‥お子ちゃまだけに、駄菓子の安売りにでも出くわしたか?」
「違うわ!‥実は、旅費を稼ぐのに良いアルバイトを見つけたのだ。
夜勤は給料が多く出て、私にうってつけだ!」
「ふーん。‥その恰好で出勤するのか?」
「あ‥‥‥!」
考えればすぐに思いつくことである。今の“彼”の姿は完全に日本の法律では働けそうもない少年のそれだ。
「どうするんだ?って言ってもまた変身し直すしかなさそうだがな。」
「くっ‥おぬしを驚かせてはいけないと同じ姿に変身したのが裏目に出るとは‥
ジャックよ、履歴書の写真を早く撮りたい‥だから今夜、また頼むぞ。」
「へぇ?この前のじゃ足りないってのかよ?ったくこれだからお子ちゃまは‥」
「すまぬなぁ‥私は未熟ゆえ、一度の変身で魔力をほとんど使い切ってしまうのだ。
‥父上にきちんとした魔力の運用を教えてもらえていれば、このようなことにはならなかったのだが‥」
「‥ごめん。‥でもさ、魔力を補充する方法、まさか一つしかないってわけじゃないだろ?
もし、他に方法があるなら‥今日は付き合ってやってもいいぜ?」
「‥‥‥‥!?まさか、おぬしからそのような言葉を聞くとは、な。
‥父上、あなたへの報告は、嬉しいものになりそうです‥!」
「お前、何をぶつくさ言ってるんだ?方法があるんだろ?‥ならさっさとやっちまおうぜ。」
「‥!‥うむ、そうであるな‥これより、吸血コウモリが化身、プレイグ‥おぬしにこの操を捧げよう!」
「はぁっ!?おま、本当にわけのわからないことを言うな!
お子ちゃまだからって、そんな飛躍した勘違いされても困るんだっつーの!」
「何を言っておる。私のもう一つの魔力の生成方法‥
それはおぬしの精を我が体内で受け、その精気を吸収することであるのだ。
おぬしは先ほど、『さっさとヤっちまおうぜ』とはっきりと言ったではないか。
‥これを言質とせず何となるというのだ?」
「そ、それは言葉のあやだ!お前が揚げ足を取ってるだけだ!俺は、お前とヤりたいなんて思ってない!
俺にそんなロリコン趣味あってたまるか!」
「ふふ、ならば私の技術にて目覚めさせればよいこと‥‥‥
私は、おぬしの血の味を知ってしまった‥‥‥もう、虜なのだ。おぬしを私のそばに置いておきたいのだ‥
ならば、番となればよい。‥もちろんおぬしと、だ。」
「そんなこと言われたって、俺はお子ちゃまの、それも人外の告白を受けたって、頷く男じゃない!」
俺は“彼”の足元から噴き出る煙の中で叫ぶ。
煙の中から現れた“彼女”は面倒なことに俺の拒絶に動じていない。
「だからこそ体で理解させてやるのだ‥!
おぬしも本当は求めているのではないか?私の牙にて支配される日々を。」
“彼女”の目が、あのとき吸われた血のように紅い目が、俺を見つめ、その視線に体が震える。
“彼女”の牙が突き立てられたあの日から‥俺は確かに心のどこかで、あいつの牙を求めていた。
あいつに血を吸われる夢を見て夢精した日もあったくらいだ。
「うっ‥‥」
だから、反論は、できそうもない。
「ふふ、図星か。
私はおぬしの言うとおり‥実力のないお子ちゃまな化身だ。
しかし‥‥それでもおぬしの10倍は生きているということを失念したようだな。」
「‥っ!でも、嫌だ!お、俺の童貞を人外にやるなんて嫌だーっ!!!」
絶望交じりにひねり出した叫び声は空しく鉄筋の壁に飲み込まれてしまったのだった。

‥広き欧州の、とある丘に、小さな墓があった。そこに、一人の少年が近づき、手を合わせる。
「‥‥父上。今、戻りました‥!
今日は、良き報告をすることができます。その、仇討ちは、できませんでしたが‥」
「かかさま、このお墓はだれのものですか?」
「そうです。父上の孫ができました。夫は、隣の人間です‥
あぁ、これは、あなたのおばあ様のお墓であるぞ。」
「えー?かかさまはおばーさまを『父上』と呼んだです!おかしいです!」
「ふむ、たしかにそれもそうだ。考えたこともなかったわ。
‥負うた子に教えられるということか。ふふ、本当に日本のことわざとは面白い。
君に出会えてよかったと、なお実感させられるぞ。」
「そんなもんか?俺は生まれた時からずっと住んでるからわかんないけどなぁ。」
「かかさま!質問にはこたえてください!」
「えーっとだな‥おぬしが普段は男でいるように、おばあ様も普段は男の姿でいたんだ。
だから、私はおばあ様を父上と呼ぶのだ。」
「ふーん‥よくわからないけどわかった!」
「うむ、わかったなら良い子だ。」

「これからどうするんだ?」
「実家に帰ろう。しばらくはあそこで過ごすことになる。今のうちに部屋割りを覚えてもらわなければな。」
「それって、さっき立ち寄った豪邸のこと?」
「そうだ。私の一族はかつては神として崇められていたらしいのだ。
今は信仰も記録も失われてしまったが‥このとおり、我が一族の財がそれを示しておるよ。」
「へぇ、その割にはあの墓は質素だったし、お前が日本に来たときにはほとんど一文無しになっていたじゃないか。」
「‥あの墓は、生前の父上の言葉を尊重してあのような形にしたまでだ。
日本でのことは、その、あそこまで円高が進んでるとは思わず、手持ちの金の計算をしくじった私の失敗だ。‥笑え。」
「笑うかよ。‥おかげでお前とこんなことになれたんだし。」
「ふむ、『ツンデレ乙!』‥であるぞ。」
「あるぞー!」
「こ、こら二人してからかうんじゃない!」
「はは‥まぁとにかく安心するんだな。
あの家は一応の食料の備蓄や冷暖房はもとより、私が苦心して完成させたインターネットの環境がある。
そこでゆっくり帰りの飛行機の予約をするとしようではないか。
‥それに、こちらはもう何日も君の血を我慢し続けているのだ。今日1日は、二人の相手をしてもらうぞ?」
「ちょっと待てよ、一晩ならまだしも1日中吸われ続けたら、血がなくなってミイラになっちまう!」
「ふん、化身としての力を完全に身につけた私にそのような心配は無用であるぞ。
そこまで心配なら、私の血を飲むと良い。魔力にて君の体力を補ってくれるからな。
‥まあ、今の私にかかれば、君を血を抜かれた程度では死なないように改造することもできるのだが。」
「‥‥ちょっと待って、今なんか危ないこと言わなかった!?」
「よし、ここは誰に見つかるという心配もない。変身を解き、ととさまを家に運んであげるのだ。よいな?」
「はい!かかさま!」
煙が立ち上り、消えた後にいるのは二匹のコウモリの女獣人。
「ほら、こうやって足でととさまの肩を掴むのだ。」
「わかりました!」
「え、ちょっと待って、も、もう少し散歩でもしてから帰るとかよくない?」
「よくないな。私たちが向かうのはむこうに見える愛の巣。それ以外に存在せぬよ。」
「えっ、ちょ、嫌だ!お、俺は人間を辞めるのだけは勘弁なんだよぉぉぉぉぉ!!!」
諦め交じりの叫び声は、草生い茂る平和なこの丘に響き渡ったのだった。