「コウモリのイメージ、どうにかしたい」

 学校から帰り、いつものように俺の部屋でマンガを読んでいると、そいつ――河堀 真宵(かわほり まよい)は突然そんなことを言い出した。
 河堀はコウモリの獣人で、その腕は薄い皮のような翼になっている。茶色と黒が混じった前髪を垂らして目元を隠している、いわゆる前髪っ娘だ。

「どうした?」
 河堀は翼の先端の爪にマンガを引っかけ、それを俺の目の前に突き出す。そのページには、人に噛み付いて血を吸うコウモリが描かれていた。
「……で?」
「血を吸うのは、ほんの一部。主食は、果物とか虫とか」
「んー、コウモリって血を吸う悪魔みたいなイメージが痛い痛い冗談だからやめろ!」
 ジョークだとわかってはいるだろうに、コウモリ獣人にとってはよほど屈辱的だったのか、河堀は怒りのあまり逆に無表情になってバシバシ叩いてくる。マンガ本は殴るための道具じゃねーぞ。辞典は殴るための武器だけど。
「ま、たしかにお前は果物好きだよな」
 殴られた頭をさすりながら言うと、河堀はこくこくと頷いた。
 そして、とことこ寄ってくると、俺の肩に手(爪?)を乗せる。
「そういうわけで」
「は? いったい何――を?」
 瞬間、俺の視界がグニャリと歪み、気がつけば床に倒れていた。そんな俺を、河堀は(前髪のせいで口元しか見えないが)企み笑顔で見下している。
 コイツ、超音波ブチ当てやがったな。
 耳というより、その奥の三半器官がおかしくなってるらしい。視覚はしっかりしてても、平衡感覚がイカレてたらそりゃあ立てない。
 と、河堀はおもむろに膝をつき、俺の腰の上に跨がる。上体を屈めて唇を重ね、その舌が俺の口内を蹂躙していった。
「~~~!!」
「………♪」

 さんざん舐め回されてから、ようやく俺は解放された。
 何はともあれ、真っ先に聞きたいことは、
「はあっ……今の話から、どうしてこういう展開に!?」
「果物の汁と書いて、果汁」
「……は?」
「ココナッツミルク」
 いつの間にかズボンは下ろされ、マイサンが露になっていた。
 河堀は、まだ半勃ちなそれをちょいちょいとつつきながら、歌う。
「ヤシの木いっぽん、実がふたつー」
「そんな表現をされるとは思いもしなかったよ!」
「てい」
「ぉうっ!?」
 舌先が触れるか触れないか、そんな微妙な感じで、河堀はなぞるようにマイサンを刺激していく。くすぐったいような、焦れったいようなその快感に、俺のヤシの木はみるみる成長し大きくなった。
「かーめさん、かーめさん、お~くびが長いのね」
 なんだ、何なんださっきから。歌責めか。言葉責めならぬ歌責めなのか。
 俺がそんなことを思っていると、河堀は小さな口をいっぱいに開けて、その亀さんを飲み込んだ。
「ん、ふ、んむ……」
「ぅ……く、やっぱ、イイ……」
 フェラをしてくれるようになったのはつい最近だけど、河堀は上手いと思う。いや、他の女を知らないから比べようがないけど、俺はすごく気持ちいい。
 河堀は口が小さいから、俺のを全部飲み込むことはできない。それでも懸命に奉仕しようとするその表情が、いや前髪でほぼ見えないんだけど、何て言うか、その様子が、すごくクる。
 しかもストロークのとき、たまにその鋭い犬歯がかする。まともに当たってしまったら、もしかするとヤバイかも知れない。こう、ズバッといくかも。そんなドキドキ感が、俺の興奮を一層駆り立てる。
「か……わ、ほりっ……!」
 ヤバイ、だんだん上がってきた。
 俺はある程度堪えるのが男の意地だと思っているので、力を込めて射精を我慢する。しかし、俺のその変化に気がついた河堀はさらに激しく俺のモノを責め立てる。
「あ……くぅ……出、るっ!」
 俺の降伏宣言と同時、河堀が頭を引き、そして一気にバキューム。内から外から力を加えられ、俺の白い欲望はものすごい勢いで飛び出した。

  ※※

「それをココナッツミルクと言うのはさすがに無理だろ……」
 ようやく平衡感覚を取り戻し、俺は上体を起こして言った。
 視線の先には、さっきから何やら口をモゴモゴ動かしている河堀。口の中で転がしてるということなんだろうか。
 少しして、河堀は軽く上を向き、ノドが動くのを俺に見せ付けるかのように飲み込んだ。それから、口の周りについたものを、やけに淫猥なそぶりで舐め取る。
「また、伸びた」
「……うぐ」
 恥ずかしいことに、そんな河堀の様子に俺のヤシの木は再び成長しきっていた。我ながらとんだ節操なしだと思う。
「いいよ、別に」
 四つん這いになってソレに顔を寄せながら、河堀は恐ろしいことをのたまった。
「どうせ悪魔だから、枯れるギリギリまで吸い出してあげる」
 うわ……こいつ、完全に根に持ってるぞ。今更だけど、フォロー入れとかないとマズイかもな。
「いやいや、それ――はっ?」
 弁解しようと口を開いたら、またしても視界が歪んだ。世界がぐるりと回転して、目には部屋の天井が映る。
 おいおい、マジかよ。
「おかわりはいりまーす」
「この、食いしん坊がっ……」
 精一杯のイヤミだったが、河堀はむしろ舌なめずりして笑った。
「キミの果汁が、美味しいから」

( 了 )

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最終更新:2010年11月07日 11:39