「ハァ……ハァ…ハァ…。ここまで来れば大丈夫か」
肩で息をしながら俺は、家から近いとある公園に入っていく。
日も暮れた今、中には誰もいない。
俺はベンチに腰掛けた。もう今日は家に帰れないだろう。
「ったく……あいつら」
 星空を見上げながら俺は飼い犬、いや同居人たちを思い浮かべた。
なんでレトもハスキも万年発情期なんだ?毎日のように迫ってきて、このままだと俺が枯れ果てる。
特に最近は犬本来の発情期と被っているらしく、朝から搾られっ放しだ。
「やれやれ……ん?」
 ため息をついた時、公園の入り口に人影が見えた。
「君、何してるの?」
 綺麗な妙齢の女性。俺やレトと同じか気持ち上か。
くっきりした目鼻立ちからすると純日本人というわけではなさそうだ。
特別飾り立てる服装ではないが、服を押し上げる胸の膨らみと引き締まった腰に思わず目が行ってしまった。
「いや、ただの散歩ですよ」
まさか家から逃げてきたとは言えない。
「ふ~ん。私の名前はニエル。君は?」
「犬養誠司」
 ニエルは俺の横に座ると、ぐっと顔を近づけてきた。
くっきりした目に釘付けになる間、くんくんと鼻を動かしていた。
「誠司くん、犬飼ってる?二匹くらい」
「えっ!?あ、ああ…はい。よくわかりましたね」
 この人は随分と鼻が利くらしい。まさか数まで当ててくるとは。
「だって誠司くん、仲が凄くいいみたいだし。臭いが移ってるよ」
 『仲が凄くいい』という言葉が引っかかった。
まさか……いや、そんなはずない。擬人化した犬なんて誰が信じることか。
「ねえ、一緒にきて」
 ニエルはそう言うや否や俺の手を掴んでいた。訳も分からずされるがままにされる自分。

 ガチャン……

連れて来られたのはトイレだった。個室に押しやられ鍵をかけらる。
狭い室内では必然的にニエルの艶やかな肢体が密着し、動悸が早まった。
「少し臭いけど…ま、いっか」
「なんのつもりだ!?」
「あれ?誠司くんなら分かるでしょ?」
 息がかかるほど近くまで顔を寄せたニエルが、自身の髪を掻き分けた。
「な……なん…で?」
 目を疑った。
毎日見慣れているもののはずなのに、第三者にあるとなるとやはり声も出ない。
「どう?上手く隠せてたでしょ」
 明らかに人とは違う『犬耳』を頭から垂らしながらニッコリと笑顔を作る。
「誠司くんと暮らす二人だけじゃないの。気づいていないだけでね」
 ワケが分からなかった。
レトやハスキだけじゃないだと?
一体どれくらいの数がいる?
この人はなぜそのことを知っている?
数々の思いが脳内を駆け回る。
「でもね、今はそんなことどうでもいいの」
「んむ…んむむむ」
 呆然としていた俺の唇を彼女の唇が覆う。
それは優しいものではなく自らの欲を満たすためのもののようだ。
容赦なく入り込む舌が歯茎を舐め口内を攻め立てる。
体を密着させるものだからお互いの胸が触れ、ニエルの胸が柔らかく形を歪めた。
「ほら、誠司くんもソノ気じゃない」
 正直に膨張しテントを張っているそこにニエルが指を這わす。
ツーっと下から上になぞるだけで言いようのない快感が襲った。
その隙をつきバックルに手をかけ、俺は一気にズボンとパンツを下ろされてしまった。
「すごい…立派……」
 愚息とはよく言ったもんだ。
襲われているのに、こんなに元気だなんて。我ながら呆れてしまう。
「それじゃあ、いくね」
いつの間にか立て膝をついていたニエルがにこりと笑う。
上目使いのニエルはとても可愛らしくてついドキドキしてしまった。
口を開きゆっくり肉棒に顔を近づけるニエル。後ずさろうにも狭い個室では叶わなかった。
こじ開けるようにニエルは口に含んでいくと、
全体を頬の内側にこすりつけながら時間をかけて呑み込んだ。
ねっとりと纏わりつく口内はまるで膣内に挿入しているかのようだった。
しばらくの間、舌で転がすように亀頭をなぶるとゆっくりと頭を引いていく。
カリの部分に少しだけ引っかかる感触を残して乗り越え、
最後に唾液まみれの亀頭が口内からつるりと滑り出た。
「さてと……んちゅッ」
 もう一度俺に優しくキスをすると、いつの間に脱いだのか何も隠すことない秘所を披露した。
ニエルが指先で秘唇を開くとそこはイヤラしい蜜で濡れていた。
「準備オッケー。じゃあ、挿れるよ」
 座っている俺に正面から跨り、片手で肉棒を掴むと勢いよく肉壺に迎え入れる。
反抗しようにもニエルの力は人間以上でまるで効かない。
しかも一度肉棒を呑み込んだ膣内が離すまいと締め付けてきていた。
「はぁ……んッ、んッ、ねえ…気持ち、いい?」
「う、うるさい、早く離れ、ろ……」
 精一杯の強がるものの意味がなかった。
気を緩めればすぐにでも達してしまいそうなのだ。それくらいニエルの中は気持ちいい。
俺の態度に気を良くしたニエルは俺にしがみついてさらに腰を揺する。

 狭い個室には大量の愛蜜が飛散し独特の匂いが立ちこめていた。
「んぁッ、ん……あぁ、いいよ、誠司くん…いいッ、ほら、もッと…うごいて」
 性感が高まるにつれ一層肉襞も活発に動いて俺を攻め立てる。
対面座位というお互いに動きにくい体勢だというのに迫り来る快楽は凄まじい。
それだけニエルが名器の持ち主ということなのかもしれない。
突然、ニエルが俺の手を取り自身の背中に回した。
手にはフサフサとした感触、これはようするに……ここぞとばかりに俺は思い切り掴んだ。
「あああぁぁッ!!!」
「うぅ……くっ、そ」
 限界だった。
尻尾を掴まれたために膣内の締まりが一段と強くなる。
耐えきれなくなった俺は勢いよくニエルの中に精を放出した。
「ちょっとー。先にイくなんてずるいじゃない。私まだイってないよ」
 射精後の倦怠感に浸っているとニエルが腰を揺する。
「私が満足するまでどかないから」
 一瞬だけ口から覗いた犬歯がやけに怖く感じた。

「ただいま……」
「主人様!!無事でしたか!?昨日はすいませんでした……グスン…
帰ってこないから私たち、私たち…嫌われちゃったのかと…ヒック」
「誠司……」
 翌朝、一晩中絞られ逃げるように帰った俺を、泣きじゃくったレトと悲しい顔をしたハスキが迎えてくれた。
「大丈夫だから、二人とも……嫌いになんかならないって」
「よかったです……グス。って、ご主人様!?どうしたんですか!?なんか顔色が悪いですし、
服もなんだか汚いですし……それにこの匂い…クンクン」
 まずい、匂いが付いてることを忘れていた。
「いや、これは……その」
「あのー、ここ犬飼誠司くんのお家?」
 声を濁していた俺の後ろから聞き覚えのある声が……
「……誰?」
 突然の訪問客にハスキが警戒心を露わにする。
「いや、この人はだな、つまり」
「ニエル!どうしてここに?」
「や、レト。この姿では初めてね」
「え??レトの知り合い?」
「ええ、まぁ、お散歩中に会ったりしてましたから。犬の時ですけど……」
 なるほど、そういうことか。
お互い人になっても覚えてるもんなんだな。
「(なんで家がわかった?)」
「(バカねぇ、犬の嗅覚を甘く見ないで)」
 あ、……なるほど。
「で、何しに来た?」
 まさか昨晩のことを言いに、いや、そんなことはしないと思うが……
「私、誠司くんのこと好きになっちゃったの。だからここに住む」
「なっ!!?」
「あの、え、ニエル!?」
「………!」
 目を丸くする俺とレト。ハスキさえもハッと息を飲んでいた。
 「あなた達も誠司くんのこと好きなんでしょ?独占するのはダーメ」
 いや待て、その理屈はおかしい。そんなことで二人を言いくるめられると思ったらーー
「そうですね、わかりました。これからよろしくお願いします。」
「よろしく……」
 なんだって!?二人とも尻尾を嬉しそうに揺らしてなにしてんだ。
主人の俺を放って勝手に話を進めるなよ。
「というわけで、誠司くんよろしくね」
 笑いながら尻尾を振るニエルを見ると反対する気を失ってしまった。
「はぁ……わかったよ。よろしくな」

おわり

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最終更新:2010年06月12日 15:55