~ちゅうい!~
☆生きものをさわったあとは、石けんで手をあらおうね!
※おうちの方へ
擬人化ナメ子×リーマン男性のラブラブ?物
ふたなりというか触手・ねばねば・虫嫌いのヒトは注意?
お子様の目の届かないところで閲覧してくださいw



「……っあー。やっぱこれが一番……」
仕事から漸く解放された俺は、少しぬるめの風呂に浸かりながら2本目の缶ビールを開けた。
プシュ、と小気味良い音が浴室に響く。
既に時刻は夜の11時を回っている。風呂で飲酒など、身体に悪いことは百も承知だが、これだけが近ごろの俺の唯一の楽しみだ。


と、突然に。
脱衣所と風呂場の間の扉がガラリと音を立てて開いた。
固まる俺の目の前、薄く漂う湯気の向こうにゆらり、と立つ人影。
「……あぁ、ここは暖かくて気持ちが良いですねぇ」
した、と足音をさせて、踏み入ってくる。


「――あ、あんた、どこから、入って」
俺は一人暮らしだというのに。なんだこの状況。
確か、玄関の鍵は掛けたよな?
こちらの精一杯の虚勢を張った問いかけを気にした様子もなく、相手は暢気に浴室内を見回している。
「ふうん。良いとこ、住んでますね」
物珍しげにそう言って、人影はこちらを見た。


色素の薄い、全裸の、女の子?――いや男かもしれない――だ。
酷くしっとりと、湯気の向こうに艶めく肌。つるりとした足の間になにも出っ張っていないのを認めて、確かに女の子だと思った。
……って、なんてとこを観察してるんだ、俺は!

どこか中性的な、角度によっては少年のようにも映る美貌に、俺は心を奪われていたようだ。
と、ともかく出ていってもらわないと。
貴重な癒しタイムは、既に大惨事になりかかっている。
「えっと、誰ですか?警察呼ぶけど……」
硬い声でそう呼びかけると、侵入者はにこっと笑って
「なに言ってるんですかぁ。貴方が奢ってくれたあのお水の味、忘れてませんよー?」
と言った。


その顔がうっすらと赤い。動作もなんだかフラフラゆらゆらしていて、見ていて不安になる感じ。
酔ってるんだろうか、この子。
もしかして、俺はどこかでこの子を口説いちゃったんだろうか?
いや、このところずっと忙しくて居酒屋に行く時間すら無かった筈……


などと考えていると、その子が急に
「あーそれ!その匂いだぁ!」
と、浴槽の縁に置いてあった缶を指さす。
キラキラした目でビールの缶を見つめてる、不思議な女の子。
その姿を見て、微かに心の中で何かが引っかかる。
俺、この子に何かしたんだっけ…

このままじゃあ埒があかないので。
手短に「とにかく出てけ」とだけ告げると、「えー、寒いのはいやです……」
とかのたまった。この世の終わりのような悲しい顔をして。


正直カチンと来ても仕方がない台詞だが、言った相手は可愛い女の子(?)。しかも全裸。
うなだれると、切りそろえたショートの髪がさらりと揺れて顔にかかった。
淡い栗色の髪。ちくん、と良心が痛んだ。
そして、次に俺の口から出た言葉は。
「……いいよ、明日までだったら。
 狭い家だけど一晩、泊まってけば」


勿論、下心もあっただろう。
だけど、途端にしょげ返った女の子があまりに可哀想で、儚げに見えたので。
どんな事情があったのかは知らないが、裸の少女を真夜中に放り出す程、俺は鬼じゃない。


「ほ、ほんとですかー?……嬉しい!」
途端に彼女はぱっ、と明るくなって。

手足が泥で汚れていたので、取りあえずはシャワーを勧めた。
一人で風呂に入れてあげようかとも思ったんだけれど、正直、俺が浴槽から立ち上がれる状態じゃなかった。
こんなん知らない人に見られたら、恥ずかしさで死んでしまう。
冷静に考えると、この異常事態にしかも綺麗な子を前にして、一体何を言ってるんだって感じだが……。


「あーっ、ちょっと染みる。でも生きてるー」
幸せそうに、全身せっけんの泡だらけでモコモコの怪獣になった彼女はシャワーの蛇口をひねった。
大量の湯気がふあっと舞い上がる。
ゆっくりと泡が流されていき、排水口に白い渦を巻いた。


その下から現れた柔肌に、俺は思わず息を呑む。
すべらかな皮膚は今や、艶を通り越して妖しいぬめりを帯びている。流れ落ちる水滴が、風呂場の明かりを反射した。
思わずゴクリ…と喉が鳴る。


気付かれたか、と慌てる俺に、ゆっくりと彼女が近付いてくる。
上から俺の顔をのぞき込んで、陶然と微笑んで。
「これ、貰いますねー」
そう言って俺の返事も待たず、飲み掛けだったビールを手に取るや。
上を向いてくぴ、と一気に呷った。
白い喉がうごめくのを、俺は呆気に取られて見守った。

「ああ、なんだか良い気分です」
そう言って浴槽の仕切りをよいしょ、と跨いできたので。
「え、ちょ、ちょっと!?狭いってば!?」
いきなり大胆すぎる行動に慌てふためく俺、しかし。
「だいじょぶです、狭いところは得意ですから」
にゅるり、と人間離れした軟体っぷりを披露して、彼女は俺の浸かったままの浴槽にぴったりと納まってしまった。


湯の下でみっちりと絡まる、脚と脚。
たゆたう水面に邪魔されて上からはよく見えないが、それだけにエロティックで痺れるような刺激が脳に伝わってくる。
触れ合う肌が、柔らかい。
煮込みすぎた餅のように、このままぐずぐずと湯船に溶けていってしまいそうな錯覚すら覚えた。


頭がぼんやり蕩けていた俺に、ふと声が掛けられた。
「あのー、コレはなんですかー?」
彼女の視線の先は、俺の腰のあたりに集まっている。
ちょっと待て、それって……


と、いきなりつん、と先端に触れられる。
急に与えられた刺激に、びくりと身体が震えた。
そこに指先を乗せたまま、彼女はしばらく首をひねっていたが、
「あっ!分かりました。ヒトの生殖器ですね?」
……とんでもない事を、さらりと言った。

「んふふ」
そのまま、彼女は俺の体にしなだれかかってきた。
互いに邪魔にならないよう、向かい合わせに膝を折っていたというのに、いつの間にか彼女の膝小僧は水面から消え、正座の姿勢になって体の下に折り畳まれている。
うーん、なんという身体の柔らかさ。
それと同時に、浸かっているお湯から、奇妙な粘性を感じる。
なにかが、おかしい。


と、俺のモノに触れていた指が動き出す。
周りのお湯ごと竿を包み込み、粘液を纏わりつかせながら、やんわりと上下しだした。
途端にぞわぞわとした感覚が、腰に火を点け、スパークを散らしながら脳髄に駆け昇る。
決して力の入った動きではなかったが、しなやかな指でゆるゆると、焦らしながら煽られる度に思わず息が詰まる。
「あっ、や、やめて……っ!」
残業続き、疲労困憊で枯れっぱなしの身には過ぎた刺激だ。


「うーん、良い感じの湿度です。
 絶好の繁殖日和だって、貴方のこれも言ってますよねぇ」
にこにこと、彼女は俺を追いつめる。
……が、その動きが段々と鈍ってきた。
俺が後もう少しで上り詰めるというところで、ついに手を止め、くったりとしてしまう。
「ど、どうしたの」
「……ああ、ちょっと水を吸いすぎました」
そう言って、彼女は目を伏せたまま、ぶくぶくとお湯の中に沈みかける。
これには流石に俺も慌てた。

どうやらのぼせてしまったらしい。
滑る肌をひっ掴み、脇の下から腕を通して彼女の身体を支え、浴槽から出た。
お湯の粘度は、うかつに立ち上がればつるんと滑って転びそうになる程だ。


洗い場に敷かれたウレタンマットに腰を下ろし、俺は彼女の様子を窺う。
「……大丈夫?暑い?」
「は、い。生きてます。」
ん、わりと元気そうだ。心配したよもう。
俺は次の言葉を探そうとしたが、口から出たのは彼女を気遣うのとは真逆のものだった。
「とりあえず、これ…その、舐めて…もらえるかな。
 この状態じゃ収まらないんで」
我ながら最低だとは思うが、もうどうしようもない。
無茶を覚悟でそんな注文をしてみると。
「……? なるほど。身繕いですね?」
分かったのか分かっていないのか、彼女はポン、とひとつ手を打って。
そのまま俺の胸の辺りにそっと、小さな口を近付け。


ざらり。
「ひ、ひぁっ?!」
……舌が。舌の表面がざらざらなのだ。
それはもう、昔飼ってた猫もかくや、と言った感じに。
それでいて口腔内の筋肉は、信じられない程の柔らかさを有している。
その口でもって、彼女は俺の乳首にぴたり吸いつき、周りの皮膚もろとも舐め回し撫で上げながら、一心不乱に吸いたてた!

小さな桃色の舌が、ねろねろと執拗に身体の上を這い回る。
多量の唾液がまぶされ、舌が通り過ぎた部分が複雑な軌跡を描いて光る。
反対側の乳首に吸い付き、鎖骨をかすめ、脇腹を過ぎて、臍の穴をくすぐり、そして……。
最後に下腹部で今か今かと待ち受ける、限界までいきり立ったモノに取り付いた。


「う、うあっ――!!」
強烈な刺激に、思わず声が出る。
けれど当然許してはもらえず、そのままゆっくりと口中へ包み込まれてゆく。
柔らかに絡み付く頬肉と、やや強めに擦ってくるざらついた舌と、じっとりと粘る潤滑液。
ぴちゃ、くぷ、ぢゅぱ、ねちょ。
少女の頭が少し捻れた上下運動を繰り返し、それに連れてつややかな髪が揺れる。
くちゃ、ぬちょと卑猥な音を立てて唾液が泡立ち、俺のモノの先端からとめどもなく溢れる液と混ざりあい、唇の端から垂れ落ちる。
目眩がするほど、非現実的な光景。


――あぁ、
もうそれだけで、すぐにぶるぶると大きく震えが来てしまった。
足が突っ張り、快楽で脳が白く染まってゆく。
俺はその奔流を止めることも叶わず。
実に呆気なく、彼女の口に降参の証を放出した。
「――わぷっ、んぐぐぅっ!?」
どくっ、どくっ、とくっ、ぴしゅー、……。

「ふあぁ、出ちゃいましたー」
久々で勢いが良すぎたのだろう。
……あるいは彼女の得体の知れないテクニックのせいか。
俺の出したものは口内だけには留まらず、色素の薄い顔も、栗色の髪もベタベタに汚し、白くまだらに彩っていた。
長い長い射精の余韻に浸っていた俺も、ようやくそのことに気付く。
ちょっとした罪悪感。だが同時に、視覚からくる効果が俺を再び奮い立たせた。


彼女は自分が汚されたことをそんなに気にはしていないようで。
垂れ落ちて邪魔になる分だけ、手のひらでへばりついた精液をこそぎ落とし、せっせと口に運んだ。
「ん……ちょっと甘いですね。疲れてますか?」
のんびりとこちらに問いかける。どこまでもズレた子だと思う。


が、俺が身体を起こすより早く、ゆらりと上にのしかかってきた。
そのまま、唇に唇をくっつけられ、ざらついた舌をねじ込まれて隅々まで味わわれる。
……自分の出したものの味を、こんなところで知ることになるとは。
ちょっと泣きそうになったが、それに反して下半身のモノはみるみるうちに堅さを取り戻してゆく。
なんだか身体が軽くなったような、ふわふわとした妙な気分。
触れ合う唇から、微かにビールの味がした。

「……ろうれふか?んっ、ちゅぱ、少し元気になれました?」
唇を離して、彼女はにっこりと笑ってそう言った。
「あ、もう一回いけそうです?それでは――」
彼女がそう言い終わる前に、今度はこちらから素早く動いた。


腹に馬乗りになった軽い体をはねのけて、一気に俺の体の下に組み敷いた。
洗い場にはマットが敷いてあるので、押しつけられてもそんなには痛くない筈だ。
俺はそのまま顔を沈めていき、有無を言わさず彼女の秘所に舌をあてがった。
「――!あぅ、あっあっ!?」
既にそこは溢れんばかりの粘液が、薄い桃色の肉を光らせてしとどに漏れそぼっていた。
俺は彼女を味わいながら、ささやかな、しかし形のいい胸も揉んでやる。
吸い付くようにしっとりとして、不気味な程に柔らかい。
柔らかな突起に指を這わせ、上と下から攻めたてれば、細い身体が折れんばかりにわなないた。


行けそうだと踏んだ俺は、彼女の中にゆっくりと指を沈める。
一本、二本、溢れ出る潤滑液のおかげで、指は何の引っかかりもなく奥まで呑み込まれた。
指先から伝わってくる未知の感触に脳を灼かれながらも、そこを激しく吸い、泡が立つ程掻き回した。
「ひあっ、やぁん、ふぁぁあ……!」

ぷしゃー……っ!
彼女のそこで何かが爆ぜ、一気に流れ出る。
何かと思い鼻を近付けても、特に変わった匂いもしない。
「は、あ……お湯、ですね、それ。
 さっき沢山取り込んで、全身たぷたぷになっちゃってましたから」
そんなことがあるものか。しかし、まぁ世の中にはそういうこともあるのかも知れない。
それは潮って言うんだよ、と教えてやろうかとも思ったが、バカバカしいのでやめた。


……改めて彼女の秘所をしげしげと観察したが、何だか、どこかがおかしいような気もする。
それがどこ、とは言えないのだけれども。
過去の記憶をたぐり寄せ、女性器ってこんなものだっけ?と考えたが、結局違和感の正体は掴めなかった。


ともあれ、準備は万端だ。
どちらからともなく見つめ合い、合図はそれだけで十分だった。
「行くよ……」
「はいっ」
ゆっくりと厳粛に、互いの身体が重なり合う。
ちらと目だけで位置を確認し、腰を進めて一気に貫いた。

「――うっ、うあ……!!」
中はまさに、人外魔境。
そう多くない過去の経験から比べても、そこは全く未知の空間だった。
そして、俺の身体の外からもしっとりと、みっちりと絡み付く、柔らかく弾力に富んだ、微かにほの暖かい女の肌。
その感触はもはや人間のものではない。


――生理的嫌悪感。
真っ先に感じたのは、それだった。
こいつは、この感触は……俺はそれに一つだけ心当たりがある。
……アレだ。彼女はあいつだ。間違いない。


総身が粟立つような恐怖も、すぐに与えられる快楽に押し流された。
ゾクゾクと襲ってくる感覚は刺激に変換され、恐れはスリルとなってたちまち新たな興奮と化した。
身体の皮膚がすべて粘膜でできているような女の子に、俺は今優しく全身を包まれている。
たとえ相手が何であれ、それは至福の出来事に違いなかった。

さっきまで浸かっていた湯のせいか、裸の身体は不思議なほどに冷えてこない。
俺はゆっくりと、抽送を開始した。


ぬぬぬ、と腰を進めるだけで、全身が砕けそうになる快感が襲ってくる。
たっぷりの粘液にまみれた中の肉は実によく滑り、何の引っかかりも痛みも感じさせない。
それでいて、強靱な輪状の筋肉が、ぎゅり、ぎゅりと絞るようにこちらを締め付ける。
先端に神経を集中させると、細かなひだがざわざわと震えているのが分かる。
ゆるゆると引き抜く度、入口の肉が一杯に咲き、そしてそのまま押し込めば、生暖かい圧力を持つ空間にずっぽりと包まれる。


少しずつ、理性が灼き切れて、全てが溶けだして、どろどろに混ざり合ってしまう。
そんな悪酔いにも似た感覚に陥り、俺はひたすらあがいた。
「……あぅっ、んっ、っは、私も、しあわせ、です……」
身体の下で彼女が呻いた。ありとあらゆる粘液にまみれて、それでも幸せそうだった。

背中を撫でられる感触に、ふ、と気が付いて顔を上げると、辺りが大変なことになっていた。


二人ぶんの身体は粘液に覆われ、それが丈夫な吊り糸となって僅かに床から浮いているようだ。
そして、うっすらと青白く輝くものが見える。先程から背中をさすっていたのはそれだった。
丁度、夜祭りで売っている蛍光リングのような優しい青色の光を湛えている、極太のひものような柔らかい何か。
そのなんだかよくわからない物体が長く伸びて、体の周りでのたうっていた。
「……なに、これ」
気持ち悪いというよりは、それは幻想に満ちた神秘的な光景だった。


「あっ、あは……
 それはっ、私の雄性生殖器、です。
 気持ち、よすぎて、伸びてっ、きちゃいましたー」
……雄性生殖器。つまり、それは。
「えっと、君って……男だった、の?」
恐る恐るの問いかけに、彼女はふっ、と笑って。
「いやだなぁ。私たちに、雄も雌もありませんよぅ。
 どちらとも、取ってくださって、結構です。
 貴方に、ふっ、お返し、しなきゃ、んぁう、いけないですよねっ」

一応その青白いモノの生え際を確認してみたが、よく分からない。
人間の男のあるべき位置から生え出ているわけではなさそうだった。
強いて言うなら首の裏側辺りかな……。
頭がぐるんぐるんしてきたが、もうそんなことは大分どうでもよくなっていた。
俺は彼女を喜ばせたい。一緒に気持ち良くなりたい。


緩やかに、だが力強く確実に、高ぶっていく。
腰はもう止まらない。止まれるわけがなかった。
自分の意志の及ばないところにまで、一気に踏み越えてしまった感覚。
彼女は俺の肩にしがみついて、切なげな声を上げ続けている。
その間にも、青白くまたたく触手は止まることなく俺たちの体を優しくまさぐり、隙間に潜り込み、快感を高めた。

つるん、と何の抵抗もなく、いきなり後ろの穴に潜り込まれて情けない声が出た。
優しい粘液に包まれた圧迫感だけが、俺の中に入ったその存在を伝えてくる。
それはしばしの間戸惑っていたようだったがすぐに馴染み、敏感な一点を発見するやそこを絶妙なタッチでくすぐってきた。
前立腺と呼ばれる部分に、胎内を通して直に触れられる。そこが高ぶりとともに膨らんでくるような錯覚すら覚えた。


「っあ、もう、出る――ッ!!」
それだけ告げるのが、精一杯だった。
世界全てがホワイトアウトする、味わったことのないとびきりの感覚。多幸感。
俺は盛大に、彼女の中にありったけの欲望を吐き出した。

ありったけの力を使い果たして、俺は柔らかな身体の上に沈んだ。
いつもの妙に醒めた気分には切り替わらなかったが、その代わりに猛烈な、頭が麻痺するような抗い難い眠気がどっと襲ってきた。
「……ごめん、ありがとう、……うぅ……」
瞼が下がり、ずるずると潰れていく俺に、遠くから彼女の声が響いた。ような気がした。


「私、ほんとに幸せでした。
 お互いよい卵を産みましょう。
 ああ、生きてて本当に、良かった……」
何か返事をしようとしたが、それが言葉になる前に。
俺の意識は闇に閉ざされてしまった。




――翌日、目が覚めるともう高く日が昇っていた。
俺はどうやら、全裸で風呂場に倒れていたようだった。
浴槽からは水が抜かれ、底の方に僅かにぬかるんだ水たまりがあるだけ。
あの子が居た証は、どこにも残っていなかった。

俺は服を着て、ベランダに出た。ひとつの予感があったからだ。
狭いながらも、ご自慢の家庭菜園。
ベランダに並んだプランターの一つに、それはあった。
――プラスチックの紙コップを土に埋め、中に飲み残しのビールを注ぐ。
植物を食い荒らす害虫を捕らえる、簡易の罠である。
覗き込めば……そこには、ナメクジが一匹、くたりとなって浮いていた。
淡いレモン色の体、他のやつと比べると少しは大きめかも知れないが、本当にただのナメクジだった。


「……馬鹿だよなあお前、俺が殺しちゃったんだぞ?
 そして……俺も馬鹿だよな、たいがい……」


それが彼女であった証拠は何一つない。
常識的に考えて、あるわけがない。
もしかしたら彼女はとっくにどこかに逃げ延びて、渋谷辺りのお洒落なカフェで真っ昼間からビールを呷っているかも知れない。いや、そうであって欲しい。
プランターの片隅に穴を掘って、小さな死骸を埋めてやりながら、馬鹿馬鹿しいと感じながらも俺は涙が止まらなかった。



あの後、会社を休んだ俺は次の日出勤と同時に退職願いを出した。
今は新しい仕事も見つかり、前よりは残業も少なくて済んでいる。
それでも、俺は家に帰ってからのビールだけはやめていない。
……ただし、場所は風呂の中ではなく、ベランダの段差に腰掛けて、だ。
安っぽいアイスの棒で作った十字架の前で、俺はいつものようにビールを開ける。
ぷしっ、と小気味良い音が響き、泡が飛んだ。


……なぁ。俺、今でも時々夢に見るんだぜ。
葉っぱの陰に産みつけられた卵の、真珠色した殻がぱちんと割れて、中から小さな小さなお前が出てくるところ。
だから、なぁ、早く帰ってこいよ。冷蔵庫に沢山ビール用意して待ってるから。
それで、今度はちゃんと、グラスで乾杯しよう。

大事に育てていた夏野菜の葉裏に、真新しい虫食いのあとを見つけ、俺は思わず微笑んだ。