俺の村では、ほぼ20年周期で
神社にお告げが貼り出される。内容は毎回同じもので
「生贄を神社裏の洞窟に捧げよ」である。
ご丁寧に指名制で若い男が選ばれる。例外は無い。
そして今回の生贄は…俺なのだった。

「気軽な気持ちで行ってらっしゃい。」
奉納する酒を渡しながら母が微笑む。俺は神社へ急ぐ。
生贄というと物騒な響きだが選ばれた者は
洞窟で一晩過ごすと無事に帰って来るそうだ。
志巻のオッチャンも阿木斗のジジイも生贄になって
翌日、平気な顔して帰ってきたらしいのだが…
二人とも口をそろえて
「運がよかっただけだ 覚悟しておけ」
と言う始末。

「まてよ、タイキ」
不意に呼び止められて思考を中断させる。
あ、そうそう。俺の名前は戸黒大樹(とぐろ たいき)
大学の休みで帰省中の21歳。
呼ばれたほうを見ると靴の裏がコンバンワ☆
俺は間一髪で避けた。前髪が蹴りの風圧で浮き上がる。
「姉貴分の私に挨拶無しってのはどういうこった?」
大学に行くために上京するまで公私にわたって
俺の上に存在し続けた女性がそこにいた。

名前は草利守奈(くさり すな)後ろで束ねた髪は
漆黒で、ほどけば腰まであるだろう。切れ長の瞳は
角度によっては赤く輝いて見える。言葉遣いは荒いが
すれ違えば全ての男が振り返るほどの美人だ。
だが声をかけた男は彼女の言葉遣いを
知らぬうちにお別れすることになる。
口より足が速いのだ。致命的に。(二重の意味で)
多少親しくなると一言入った後に蹴りが来るのだが
俺がこの蹴りを避けられる様になるのに5年かかった。

「いやー帰省したら生贄に選ばれてて挨拶する暇も
 無かったよ。ゴメン。」
「仕方の無いやつだ。おまえは。」
「ただいま スナねぇ」「おかえり タイキ」
機嫌が直ったようで、やっと笑顔を見せてくれた。
「これから神社行くから、積もる話は明日…」
「生贄なんて や め と け 」
…あれ? ま~た ご機嫌斜めになっちゃった。

「おまえは私の舎弟なんだから生贄やらなくていい!」
「心配してくれるの?スナねぇ。」
「黙れ!私の言うことが聞けないのか!」
いつもの我がままなのか違うのか見当もつかないな。
またも飛んでくる足裏を避けつつ。
「終わったら帰る前にスナねぇに報告しに行くよ。」
と言って神社方向へ走り出した。…追撃が無い?
振り返るとスナねぇが思いつめた顔で佇んでいる。
引き返そうかとも思ったが明日報告すればいいかと
気を取り直して先を急いだ。

神社に通じる石段の前で町内会長が手を振ってる。
先ほど話題に上った阿木斗のジジイだ。
儀式中の神社は宮司すら侵入を許されず。
町民総出で神社周辺を警戒する。
俺が逃げる隙間も無いわけだ。
阿木斗のジジイから「まぁがんばれ」と気楽な激励をもらい
俺は先を急ぐ。早く済ませて帰りたい。

今となっては正月しか来ない神社だが
薄暗いが空気が澄んでいて適度な緊張感をくれる。
「自然と背筋が伸びる」「居住まいを正したくなる」感じだ。
賽銭箱の誘惑を退けつつ裏手に回ると洞窟が見えた。
『立ち入り禁止』代わりの注連縄が今は無い。
よく見ると足元や壁面、天井に至るまで
得体の知れない光に覆われている。
この時点で冷や汗が頬を伝う。ニゲチャダメダ。

おっかなびっくり奥に進むと十畳ほどの広間に出た。
いくつかの出入り口のひとつ。両脇に蝋燭の明かり。
(アレが順路かな?)誘われるように歩く後ろで

小雨の降るような音がした。

慌てて振り返ると そこには
裸の女がいた。
胸まで伸びた前髪のせいで顔はわかりづらいが。
整った鼻筋のおかげで口元は見えていた。
それだけで 怖気が走るほど美人なのがわかる。
やや前傾姿勢なので隠れているが胸を張れば
髪は谷間と脇に流れてしまうだろう、成熟した乳房。
引き締まった腹部…から下を見ようとしたとき、
女は上体を反らした。髪が流れる!
自然と胸に目がいく俺を責められる男がいようか?
いや、いない!(反語)

意識が集中していたからだろうか。
風を切る音がして 襲い掛かる腕くらいの太さのソレの
表面に鱗がびっしり生えているのを確認した後
俺は意識を失った。

どうやら少し寝ていたらしいのだが。
裸で布団に入っているような感覚に首をかしげる。
そもそも立っている状態と同じ形で重力を感じる。
そういえば腕も足も動きづらい…

目を開けてみると
やはり裸の女がいるのだが、起き抜けでよく見えない。
目をこすろうとして 腕が上がらないことに気付く。
自分の体を確認しようとして、それも叶わず。
俺の体はうろこに覆われた太い何かが巻きついていて
見ることができないのだが どうやら服を着ていない。
巻きついている何かをたどっていくと
左側に大きくカーブした後、目の前の女性の股間に…

股間?

「気がつきましたか。」
目の前の光景にそぐわない静かで優しい声が響く。
「服は脱がせました。儀式の邪魔なので。」
「…」
「おや、意外と冷静ですね。泣きわめくと思ったのに」
「いやいやいや。冷静じゃないよ?」
冷静でいられる訳が無い。喉は干上がって声も変だ。
「おねーさん何者?俺どうなるの?」
目の前の生き物を「おねーさん」呼ばわりするほど
俺の混乱は頂点に達していた。

どうしてかって?

この理知的で美しい女性の太ももが
動物園でもお目にかかれないような
巨大な蛇の胴体とつながっているからだよ。

「私はこの町の蛇神。あなたは生贄。」

「生贄ってあの生贄ですか?」
「生贄が意味するものを私はひとつしか知りません。」
無慈悲な言葉に絶望した。こんなことならスナねぇの
言った通り逃げときゃよかったかな。
「…やっぱり、 食 べ る ん で す か ?」
「その まぁ 食べます。」
頬に手をやりイヤンイヤンする蛇神。髪が乱れて
神聖な二つの山が見え隠れする。絶景だ。

こんなときでも息子は正直で巻きついた尻尾を
押し上げる形でムクムクと 蛇神も気付いたらしく
「何もしてないのに元気になってますね。」
したんだけどね。気付いてないので黙っておこう。
「それでは早速いただきましょうか。」
腕の辺りの締め付けが少しきつくなったかと思うと
そこから下の拘束がゆっくりとほどかれていく。
開放されて元気いっぱいのマイサン。
異形とはいえ綺麗なおねーさんに突きつけていると考えると
恥ずかしいやら興奮するやら、余計に頭が回らない。

ギュッ!

「はぁうっっっっ!」
「これが…あなたの…」
何故か感慨深げにつぶやく蛇のおねーさん。
結構な力で握られて「もがれる!」かと思ったが
ひとしきり見つめたあと
握ったままの手を ゆっくりと上下させ始めた。
…しごいてる? ってなんか あへぇ
正直 技術的には褒められたものではないのだろう。
機械的に一定のリズムで刺激されるだけ。

でも俺 童貞ですから!(泣)くやしい ビクンビクン…

ここにきてようやく俺も彼女の「食べる」の意味がわかり
初めてが美蛇(びじゃ?びだ?)だね。しかたないね。と
あきらめて楽しもうかとも思い始めた。おねーさん綺麗だし。

蛇のおねーさんは一心不乱にマイサンを愛でる。
しごく手も勢いがついてきてデリケートな先っぽに
しばしば痛みが走る。たまらずうめき声を上げてしまう。
動きがぴたりと止まってこちらを見つめるおねーさん。
「痛くしましたか?ごめんなさい」
「…先っぽは敏感なのでせめて濡らして…」
「濡らす?」
「ツバとか付ければ気持ちよくなると思う」
俺は掌にツバをまぶしてほしいなと。そう思っただけで。
でもおねーさんの受け取り方は
「ん…わかりました…ちゅぴっ」
「はぇっ!ちょちょ!ちょ~~!」
予想の内角高めでデットボールだよ。

慌てておねーさんを見ると人の規格から外れた長い舌が
マイサンのほうに伸びていた。もうなんでもありだよ!
恐る恐るといった感じでかすめるような刺激。
それだけで股間から脳みそまで快感が駆け上る。
「…しょっぱい?」味の感想とか恐ろしいですおねーさん。
「気持ちよさそうですね。んっ…」
おねーさんは尻尾並みに舌を操れるようで
雁首のエラが張った部分に舌を巻きつけると舌を小刻みに
震わせはじめた。先ほどまでの愛撫と比べて繊細な刺激で
先っぽが敏感だということを意識した消極的なものだ。
「くっ っふぅ き きもちいい」
思わず喜悦の声を漏らす俺を見ておねーさんはニッコリ笑い
舌の動きを徐々に複雑化させていった。

ふと視界の端に何かが掠めたので目で追うと
おねーさんの尻尾の先がピコピコと揺れていた。
集中したときの癖なのだろうか。舌の動きとの連動だろうか。
『かわいいなぁ』とか思ってしまった。たとえこの尻尾が
先ほど気絶するハメになった一撃を与えたものだとしても
かわいいものは かわいいのだ。
俺は ゆっくりと おねーさんの尻尾の先を口に含んだ。

「っ!~~~~!」
舌をマイサンに巻きつけていたせいで喋れなかったのか
声無き声で驚愕をあらわにするおねーさん。
コマのヒモのように絡みつきながらも勢い良く
マイサンから舌が離れる。ほぼ逝きかけました。
「…なにをしているのですか?」
お怒り気味の雰囲気に焦りつつ、もうひと舐めしてみる。
「あふぅ って おやめなさい!」
「いや なんか かまってほしそうだったから。」
「お黙りなさい!私のなすがまま身を委ねれば良いのです!」
「気持ちよくなかった?」
「うっ」
ここで初めておねーさんが怯んだ。嘘が付けないらしい。

おねーさんが気まずそうに視線を逸らした隙に俺はもう一度
尻尾を咥えた。腕に巻きついた部分までが喜びに震え
上半身は自らを抱きしめて快感の波を受け止めている。
俺がやめる気が無いことに気付いたおねーさんは
引き続きマイサンに攻撃を加えることにしたようだ。
先ほどの行為によって唾液に濡れ光るマイサンを
俺が尻尾にするように「口撃」を開始する。

ハーモニカを吹くようにサイドを唇がすべり
まんべんなく唾液をまぶすとおもむろに亀頭を含む。
一枚だけのはずの舌が四方八方から亀頭を嬲る様子は
残念ながらおねーさんの口の中なので見えない。
時折ほっぺたがグネグネと蠢くのが非常に艶かしい。
そのあいだ両の掌で竿を刺激するのも忘れない。
先ほどまでのぎこちなさが嘘のような痴態だ。
経験のない俺は限界に達した。
「おねーさんっ でるぅ くちをはなして!」
告げたとたんに手と舌の動きがさらに早くなり
俺はおねーさんの舌が導くままに欲望を開放した。

ややあって
「ちゅぽん」という音とともにマイサンが開放される。
吐き出さないところを見るとおねーさんは俺の精液を
飲み干したようだ。息を荒げて自失している。
かくいう俺も興奮しすぎて視界に星が舞ってる。
欲望を開放したことで徐々に澄んできた思考の中で
先ほどの行為の最中に浮かんだ疑問と推測を元に
俺は今までの人生の中で最大の賭けに出た。

              ・ ・ ・ ・
「気持ち良かったよ。スナねぇ」


「んなっ!」
興奮に喘いでいたおねーさんはビシリと固まった。
こうかはばつぐんだ。
「やっぱりそうなんだ…」
はっきり言ってショックだった。何でも知ってると思ってた。
あんなに傍に居続けたのに重大な秘密を知らなかったなんて
信じてもらえてなかったのかな。なんだか寂しい。
顔を伏せてしまったおねーさんは独り言のようにつぶやく。
「どうして わかったの?」

「敬語が得意なのは幼稚園のままごとのときから知ってる。」
女教師役のスナねぇは凛々しくて、とてもかっこよかった。
何故ままごとで女教師かは聞くな。きっと理由があったんだ。

「尻尾を舐めたとき、足が敏感だったことを思い出したよ。」
中学で部活を始めたスナねぇからマッサージを仰せ付かった時
背中や肩は普通に気持ちよさそうだったのに
ふくらはぎを揉み始めたころから「うン はぁ いやぁ」
なんて声を出しはじめて俺の性の目覚めをうながしやがった。

「極めつけは、図星を指されたときの『黙れ』かな。」
ここに来る前にも、いつものやり取りをしてきたから
スナねぇが変わってないことがわかっていたから
『蛇のおねーさん』が『スナねぇ』なんだと
確信することができたんだ。

「そう…なんだ…」
おもむろに自分の頭に手をやり右手首にはめたゴムひもで
髪をまとめ、やっと俺の良く知る『スナねぇ』の姿になる。
全裸も蛇尻尾も初めてだけど。
捨てられた子犬のような表情でこちらを見つめてくる。
その顔 苦手なんだよ 知ってるだろ?

「私のこと 怖くないの?」

「むしろ安心した。これで命の保障だけはあるし。」

この人はどれだけ理不尽なことでも 過剰な暴力でも
超えてはいけない一線で踏みとどまることを体が覚えてる。

「…クックック おまえはホントに仕方の無いやつだ。」
泣きながら笑ってくれたスナねぇを
今までで一番『好きだ』と思った。

「タイキ… タイキ タイキ!」
感極まったように俺の名を連呼するのにあわせて
今だ俺を絶賛拘束中のスナねぇの尻尾がキュンキュンする。
「呼びかけながらしたかった。でもバレちゃうから…」
「そうだよ。何で最初から教えてくれなかったの?」
「…儀式だから。」
禁則事項なみに説明になってないことを言うスナねぇは
興奮しすぎて瞳が真っ赤に光っている。比喩ではなく。

「もう抑えられないよ。会えなくて…寂しくて…」
「スナねぇ… はむンっ」
キスされました。あの長い舌はどこへ行ったのか
今は人間サイズの舌で俺の前歯をこじ開けにかかっている。
抵抗する気も無かったのでそのまま受け入れると
両手で頭を抱きしめてきた。
頭を固定することで舌の自由度が比べ物にならないほど上がり
キスだけで射精しそうなほど気持ちいい。

唾液の糸を伸ばしながら唇が離れる。
スナねぇの真っ赤な目が欲望でグラグラ揺れている。
俺もこんな目をしてるのだろうか。
「スナねぇ 好きだ。」
「っ! どーしてこのタイミングなのよ。」
「今言わないと、終わった後になりそうだから…」
それだけは避けたかった。後付けだと思われたら悲しすぎる。
そんな半端な気持ちで童貞守ってきたわけではないから。
まぁ 縁も無かったが。

ひとしきり頬を押さえて真っ赤になっていたスナねぇだが
不意に真面目な顔をして俺の顔を両手で挟む。
二度目のキス。今回は最初から舌を…って
長い 長すぎる スナねぇの舌 あっという間に
喉まで来てそのまま胃のほうに下りていく。
不思議なことにまったく吐き気が無い。それどころか
先ほどとは段違いの気持ちよさだ。
「んぉぉっ!」
たまらず射精する。スナねぇの引き締まったおなかを
白く染め上げる様は扇情的で もっと汚したくなる。

「…気持ちよかった?」
「まさか食道を犯されるとは思わなかったよ…」
「これ 『つがいの口付け』って言うんだ…」
…『つがい』ということは
「さっきの返事なんだからね!」
また真っ赤になってる。やっぱりスナねぇは かわいい。

もう一度、今度は触れてるだけのキスをして
「そろそろ…『食べる』…よ?」
と ためらいがちに告げるスナねぇを抱きしめたい!
上半身が自由じゃないのが残念すぎる。
興奮にとろけた顔でゆっくりとうなずく俺を見て
スナねぇは尻尾で俺を手繰り寄せる。
勢いあまって亀頭がへそに着地するハプニングがあったが
ランデブーはおおむね成功だ。

「スナねぇ。ほどいて 抱きしめたい。」
「だーめ♪ 儀式だから。」
またそれか!…実は尻尾の締め付けがなんだか気持ちよく
感じられてきたのは俺だけの秘密だ。

スナねぇの股間は「前付き」らしく閉じた太ももの間から
かろうじて見える位置にあり。潤いも十分のようだ。
精液まみれのマイサンを伸ばした舌で拭うと
震える手でで自らの股間に導く。その手を見て思わず
「スナねぇ 好きだよ。」
「っ! 私も 好きだよ。タイキ。」
震えが止まって亀頭が入り口に達する。
ゆっくりと柔肉を掻き分けて一瞬の抵抗を抜ける。
「あぅ…ひっ!あー…」
「スナねぇ 大丈夫?」
初めてだったんだ…とか言ったら殴られるので言わない。
でも、素直にうれしい。この歳まで告白できなかったから
半分あきらめていた。スナねぇ狙いの男は沢山いたし。

「スナねぇ キスして。」
無理に動こうとするのを止める為に唇を求める。
舌を絡ませるだけで肉襞が震えて理性を舐め回す。
唾液を飲み下すたびにマイサンが体積を増す。
鼻息で顔を愛撫できる頃にはスナねぇの腰が動いていた。
「ありがっ とぅ もっ だいじょぶ。」

堪えきれないといった感じで腰を振るスナねぇは
普段では考えられないほど乱れていた。
まとめた髪が主を見つけた犬の尻尾のように暴れて
焦点の定まらない目で必死に俺の目を追いかけて
よだれの垂れた口は意味ある言葉を紡ぐのも一苦労だ。

「あっ やァ はぁん もぅ タイキィ」
再び交わされる「つがいの口付け」
舌先が噴門を撫でたとき締め付けがきつくなって
俺とスナねぇは同時に果てた。

「ンゥ ふぅ ンム…」
文字通り とぐろを巻いたスナねぇを抱きしめてキスをする。
想像以上に小さな肩が今は俺の腕の中にある。
小ぶりだが形のいいおっぱいは掌に収まる大きさで
安心と興奮を両立させる至宝のおっぱいだと断言する。
異議は却下。答えは聞いてない。

胸に押し付けられたおっぱいが不意に離れる。
「タイキ 聞いてほしいことがあるんだ。」
神妙な顔で話し始めたのは「儀式」についてのこと。

曰く
この町は大昔から各地に点在する
異形を集めた町のひとつだということ。

町に住む女性には蛇の因子が息づいており
最も強く因子が活発化した者を蛇神とすること

20年ごとに蛇神を上位存在(エキドナやメドゥーサ)に
昇華させる研修のようなものが大陸で行われること

蛇神の寿命は人と同じぐらいだが上位存在のソレは
星と等しくなる場合もあること(誰も死んでないので不明)

上位存在は世界各地に派遣され
一度決められた任地から離れることは 一生 無いこと

「それじゃあ スナねぇと もう会えないの!?」
気がついたら肩をつかんで問い詰めていた。

いつのまにか隣に居て 散々人のことを振り回して
人生丸呑みにされたような感覚が 何故か心地よくて
上京が決まった時も えらい剣幕で反対されたが
最後には笑顔で見送ってくれて

帰郷すれば いつでも会えると思っていた

俺たちの時間は 離別までの時をを埋めるだけのものだった?
別れが迫っていても 俺の望みを優先した?
今夜この逢瀬が 最初で最後の二人の思い出?

そんなことが許せるはずが無い!あきらめられるわけが無い!

「答えてくれよ。スナねぇ! ぐはぁっ…」
死角から飛んできた尾の先で意識を刈り取られそうになる。
「最後まで話しを聞け どあほう。」
どこか安心したような優しい笑みでスナねぇが続ける。

曰く
その昔 蛇神の繁栄の為に編み出された上位存在昇華研修だが
問答無用の強制参加により当初の思惑ほど成果が上がらず

家族や想い人を故郷に残してきた蛇神の集団が決起し
あわや上位存在との内部抗争にまで発展する可能性があり

研修対象を選出するに当たり新たなルールを設けることで
双方が合意したそうだ

ひとつ
扶養家族がいる者を除外する

ひとつ
つがいがいる者を除外する

ひとつ
想い人がいる者は『儀式』にて判定が下される

「つまり 独り者の蛇神は『儀式』をしないと…」
「あぁ 問答無用でお勤めだ 死ぬまでな」
「『儀式』にもルールがあってな?」
そう言ってスナねぇは太ももより下の蛇の胴体を触る。
「『儀式』の間 蛇神の姿で想い人と相対すること。」
伸びてきたスナねぇの尻尾が俺の体にやんわりと巻きつく。
「『儀式』の間 自らの尾で想い人を拘束すること。」
まとめていた髪をほどくスナねぇ。この髪型も好みだ。
「『儀式』の間 自らの出自を隠す努力をすること。」
こんな簡単な変装でも普段の印象とはがらりと変わる。
「生贄は『儀式』終了までに蛇神を愛し正体を看破すること!」
触れ合う胸 背を伝う手の平 スナねぇの抱擁

「つまり『つがい』になれば『儀式』は成立だ!」

その言葉を聴いたからか 気付けば俺もスナねぇを
きつく抱きしめていた。スナねぇの舌が頬を撫でる。
いつの間にか泣いていた。スナねぇも泣いていた。
俺もスナねぇの顔を舐め返し 舐めあいはキスに変わる。
そのまま果てるまで『つがいの口付け』を交わした。

「俺には覚悟が足りて無かったかもなぁ。」
いまさら志巻のオッチャンと阿木斗のジジイからの言葉が
思い起こされる。俺にも運があってよかった。
「クックック ところがところが…」
意味ありげに笑うスナねぇ。心なしか黒い笑み。
「志巻さんの時は大変だったらしいよ~」

曰く
拘束を終えて『食べよう』としたところ志巻のオッチャンは
事もあろうに「好きな人がいるから勘弁してくれ」と告げて
『好きな人』との思い出を熱く語り始めたそうな
運命のいたずらか『好きな人』というのが当時の蛇神で
つまり志巻のオッチャンは『好きな人』自身に延々と
ノロけてしまったらしい。自分たちのことを。
なんと独り語りは朝方まで続き「もうだめか」と思った時
『以上が俺の愛の軌跡だ。結婚してくれ 沙希!』と
志巻のオッチャンは最後を締めくくったらしい

「情熱的な告白だよ~ 夜通し愛を語るなんて…」
スナねぇは悦に入っているが俺が思うに
沙希さんって動揺するとモロに態度に出るからなぁ。
あの気さくなオッチャンは きっとはにかんだ笑顔で
「そこが好きなんだけどね。」とノロけてくれそうだが
そこら辺から志巻のオッチャンも途中で気づいたんだろうなぁ。
スナねぇと沙希さんの夢を壊さないためにも黙っておこう。

「それなら阿木斗のジジイも相当な逸話がありそうだね。」
あの陽気なジジイはどんな事件を起こしたのだろうか。
「阿木斗さんの時は別の意味で大変だったって…」
陰りのある笑みを浮かべ スナねぇは淡々と語る。

曰く
阿木斗のジジイを選んだ蛇神はルールを破った
『儀式』の最中に自らの正体を明かしてしまったのだ
『儀式』不成立 上位存在の手で二人が引き離される直前
「私に彼女の不始末を挽回する機会を下さい!」と
阿木斗のジジイは叫んだそうだ。
上位存在も無理やり引き剥がした蛇神は研修に身が入らないと
わかっていたので阿木斗のジジイからの直訴を受け取った。
その後の詳しい話は当事者だけの秘密らしいが結果的に
阿木斗のジジイが『阿木斗牧場』の経営を軌道に乗せた事で
二人の仲は許される事になったらしい。

「この話をした時、姫バァ泣いてたな…」
話していて思い出してしまったらしくスナねぇも涙ぐむ。
姫バァは暴走気味の阿木斗のジジイを朗らかな笑みで
たしなめる町内最強のばあさんだ。別名:ホホホばあさん。
阿木斗のジジイも昔は好青年だったようだが
今は若いのにまぎれて遊ぶ超特急ジジイだ。
今日 二人が笑っているのは あきらめなかったからで
あきらめられないくらい 惹かれあっていたわけで

「ん やン ちょっと」
気がついたらスナねぇの顔にキスの雨を降らせていた。
なんか こう 負けてられないような そんな気がして。
言葉に出すのは恥ずかしいから キスにした。のか?
「ふぅん もう 大丈夫 だよ。」
泣いてるスナねぇを慰めたという事で公式解釈は決定された。
平和的解決だ実に素晴らしい。

「…タイキは学校卒業したらどうするつもりだったの?」
「あれ?俺の選んだ学部 知らなかったっけ?」
「あの時はショックで全部、耳がスルーしてた。」
そういえばひとしきりグラグラ揺れた後「反対だ!」を
連呼するだけだったな。さもありなん。

「畜産だよ。」「へ?」
見開いた目が次第に嬉し涙に覆われる。

「阿木斗のジジイが 拾ってくれるってさ。」

生贄 了