これほどまでに青く、澄み渡った空を俺は今まで見たことがなかった。
太陽は力強く海面を照りつけ、それに反射した陽光がきらきらとガラスのように光っている。
そして体をなでつける心地よい潮風が、妙に気持ちよかった。
「…………はぁ」
竹を編んだ急ごしらえの救命筏の上で、俺は何度目かのため息をついた。
乗り組んでいた明治以来のオンボロ輸送船が南太平洋のど真ん中でアメさんの潜水艦に沈められてはや二日。幸運にも船から零れた筏に乗れた俺はフカの餌食にこそならなかったが、二日間飲まず食わずで
直射日光の下にさらされるのはまたつらい。
ここはお国の何百里……と言う歌があるが、まったくここは日本からどのくらい離れてるのか聞きたいぐらいだ。それどころか近くに島があるのかすら聞きたい。
と言うか、考えるのすら億劫になってきた…………。俺はそう思って天を仰ぐのを止め、体勢を直して目を閉じた。
そして、絶え間ないさざ波を聞きながら、輸送船の沈没から張りつめられていた意識がほぐれたのか、まどろみに引きずり込まれるように、俺の感覚は深い闇の底へと落ちてゆくのであった。

頭の上、海面を照りつける光を何かが遮る。
見上げると、そこには四角い何かがあった。
ああ、また人間の乗り物だな。ここ最近、似たようなものに何度も遭遇してきたので私にはすぐにわかった。
そして、あの四角い乗り物に乗る人間から見れば、私が絶対に来てほしくない客であることも。
近づかないでおこう。そう思いながら私は筏を眺めていたが、そのうち妙な違和感を覚えた。
乗り物は海流に流されているだけで全然動いていないのだ。まるで、誰も乗っていないかのように。
不思議に思い、一度水面へ出ると、すぐにそのわけがわかった。
乗り物には、人間の男の人が一人だけ乗っていた。その彼も軽く衰弱しており、三日もすればたちまち死んでしまう。
彼のような漂流者は最近急に増えてきて、別段珍しい存在ではない。それにここで彼を助けたとしても私は何の得もない。
私は、しばらく彼を眺めてから、私の中に芽生えた一つの考えを実行することにした。
それは私の中に不意に生まれた感情が、そうさせたのだった。
ゆらゆらと何かの間を漂う感覚。
夢の中なのか、はたまた死後の世界なのか、ただ、この間隔は心地よい。それだけははっきりと感じていた。
そして、どこかから聞こえる誰かの吐息と鼓動をかすかに感じていた。

すっと、電燈がつくように意識が戻ると、すでに天にはほぼ満ちているような月が出ていた。
ふと竹の筏とは違う、柔らかな感触が背中にあたるのに気づいた俺は辺りを見回す。
そこはどこかの島の砂浜の、波打ち際だった。
そこから俺の頭はすぐにどうやらこの島に漂着したらしい。と言う推論に行きつく。いくらか乾いてはいるようだが、丈夫とは言えないようなスフ製の服がじっとりと濡れているのもそのせいなのだろう。
おおかた筏がバラけたのだろう。そう思うと、俺は体を起こす。正直なところ疲労感でいっぱいだったが、もっと島の方に寄らないと満ち汐で水死してしまう。そんなマヌケな死に方だけはごめんだ。
体中がだるさを、胃が空腹を、喉が渇きを訴える。そして先ほどまで眠っていたと言うのに、まだ襲ってくる眠気。足を動かし始めてから二、三〇歩もせずに、俺は再び砂浜に倒れた。
「も……限界」情けない声を出しながら、俺はぐったりと体を横たえる。何もやる気が起きない。ただ眠たい。倦怠感が襲ってくる。
そして倒れたまま倦怠感の言いなりになる俺の眼に映ったのは、島の景色に良く合うようで、まったく違和感を覚えるものだった。
「…………女の子?」暗くてよくわからないが、シロい肌をした背の低い人影――暗い色の髪の長さからして女の子だろう――はなにかを腕いっぱいに抱えながらきょろきょろと砂浜を見回すようにしていたが、
やがて目当ての物を見つけたのか、その方向へとちことこと短い歩幅で走ってくる。
彼女は俺のすぐ前で立ち止まると、はぁ。と安堵のため息をついて、腕に抱えていたもの――ココヤシや魚、それにうさぎ――を砂浜に置くと、俺の顔のそばでしゃがんでみせた。
かなり紺に近い、ウェーブのかかった黒髪。南洋はおろか日本でもめったにお目にかかれない程の白い肌。高級な目無炭のような黒い瞳。服装こそその辺にあった布を適当に巻いて、要所を隠したような
南国らしい開放的なものであったが、なんとも南洋の島とはかけ離れた少女であった。
「あなた…………大丈夫…ですカ?」ぎこちない、片言の日本語で少女が言う。
「うん、酷くだるいけどまだ大丈夫だ」
よかった。と少女は口元に愛らしく笑みを浮かべた。
「…………ここは、どこなんだ?」
少女はいささか戸惑ったようにしていたが、すぐに口を開いた。
「どこだかは、わからない……わたし、日本の船に……乗ってて、その船が、沈んだ……気づいたら、この島に……居た」
成程。大方この少女は昭南あたりの外国人の娘だろう。どこか外国人のような雰囲気があるのもそのせいに違いない。
最近は攻撃を加えてはいけないはずの病院船すらバカスカ沈む世の中だ。疎開船か輸送船かはわからないしどうやって沈んだかも知らないが、まったく気の毒としか言いようがないだろう。
「あなた…………名前は?」
「俺は……深山……孝造だ」一等水夫だとかの肩書やらなんやらをすっ飛ばして、俺は本名だけを少女に告げた。
「わたし……シロ」少女―――シロはまた微笑んで、俺に言った。

シロのおかげで、俺が疲労と体の不調から解放されたのは比較的早かった。
幸いにしてこの島は水も食料もあり、あと何ヶ月かは余裕で暮らせる気が湧いてくるほどだ(実際にはすぐにでも脱出したいわけだが)。
だが、こうして一人波打ちぎわから視界いっぱいに広がる海原を見渡しても、船一隻、飛行機一機見えやしなかった。
星座による座標測定なんて技術もないのでここがどの辺だかはわからないが、少なくとも戦地とも両軍の補給網とも大きくかけ離れた
場所にあるということだけはわかった。
「…………全く、やってられないな」
俺は近くに落ちていた石を掴むと、わざと下手に投げてやる。石は海面を飛び跳ね、何度目かの反跳の折に海面に没した。
と、そんなことをやっても余計にむなしさが増すだけだった。
「…………こうぞう、すごい」
俺の後ろからこの無人島にいる自分以外の人間――つまりシロだが――の声がする。どうやら島の中央部からこっちに帰ってきたらしい。
「凄いか?こんなんが」
シロは俺の隣に座り込む。シミ一つ、日焼け一つない白い肌が南洋の激しい日光に晒され、正直眩しい。
「すごい……どうやったらできるノ?」
「まぁ…………簡単だな」俺は近場からもう一つ、適当な石を握って、もう一度下手に投げる。
石は三回跳ねて、海に没する。シロは目を輝かせながらその軌跡を追っていた。
「ようは下手に投げりゃいいだけだし……コツつかめば簡単だぞ」
うん。と意気込んでシロは手近な石を拾い上げて、ちょうど俺がやったように石を下手に投げてみせる。
低い進入角で突っ込んでいった石は、跳ねること無くそのままぼちゃん。と海面に没していった。
その後もシロは適当な石を拾っては次々投げていくが、まったく跳ねること無くほとんどが海中に沈んでいった。
「む~~……」シロは妙な声を上げながら、手当たり次第投げた石が沈んでいる辺りをうらめしそうに睨んでいた。
「初めてじゃこんなもんだ……。俺だって暇つぶしついでにやってたら、いつの間にか出来てたんだしな」
「ずるい……」
「このくらいしか暇つぶしの手段がなかったんだ。悪かったな」
まだふてくされるシロを放っておきながら、俺はまた海のほうを眺めはじめる。横ではシロがまた石を投げ始め、
ぼちゃん、ぼちゃん、とさながら戦艦の砲戦のごとく水柱が幾つも立ちあがっていたが、
俺はそれを目にもくれず、船を捜すべくひたすら水平線の向こうを眺めていた。
 しかし、船は現れず結局シロが手近な石を使い果たし、海から石を拾い上げてくること三回。空が赤黒く染まり始めてやっと俺もシロもついに諦め、昼間に獲っておいた晩飯にありついたのであった。
晩飯(主にシロの捕まえた野兎と俺のとってきた果物)を食い終わった後、俺はその場に寝転んで、ぼーっと星を眺めていた。
シロは夕食が終わると、いつの間にか消えていた。
女の子だ。男には言えないようなこともあるのだろう。
寝転んで見る星は子供の頃に図書館で読んだ古い星座図鑑のそれとは全く異なり、知らない星の並びでいっぱいだった。
そして、改めてここが日本から遠く離れた南洋であることを思い出してしまった。
「帰れるのかねぇ……」
ここはお国の何百里どころか、多分何千理くらいはあるはずだ。しかも友軍も米軍も忘れてるような島となると、救助がくる望みも限りなく薄い。
と言うか、この近くに島があるのかさえ疑わしい。
最悪、あの白い肌の少女とここで一生暮らすのかと考えると、気まずいし申し訳なくもなってきて、ため息をついた。
肌の色や流れ着いた経緯からして、あの子はここで一生を終えるような身分でないのは確かだ。どうにかしてでも社会に返すべきだろう……

ちゃぽん

さざ波の音に混じって、どこからか水をたたく音が聞こえる。
音はすぐに、じゃぼじゃぼと水を掻き分ける音に変わり、そして止んだ。
「…………小便か?」
そう口にして、少ししてからあまりに貧相な考えにおもわず俺はまた溜め息をついた。

ぱしゃーん

どこかで、魚の跳ねた時のような水音が響く。
おおかた近くにイルカでもいるのだろう。
「イルカ……か」そう言えば、輸送船がバシーを通った時にもイルカ、見たな。と俺は三ヶ月ほど前の記憶に手を伸ばす。
「10ktも出せない船だったから、すぐ追いこされちゃったんだよな」
なんせ日露戦争の時代にイギリスから買った船で、建造はもっと昔だと言うくらいだ。機関もとんでもなくガタガタだったし、
いつも輸送船団の足を引っ張っていた。
「で、追いこされてみんなで笑ってたっけ……」
あいつら、どうしてるんだろうな。と俺は意外といい奴らだった乗組員たちに思いを馳せる。ただ、助けられた奴が多いことを祈るばかりだった。
「…………寝るか」
そう思って俺は瞼を閉じた。やることが無いのならば寝るのが一番だろう。


それから何分経っただろうか。寝付けずにいた俺に、先ほどの貧相な発想ではないが急に何ともしがたい感覚を持って尿意が脊髄を駆け抜けた。
「くっそ……便所、便所」
といってもここは島であって、固有の便所など存在しない。
適当にその辺でしても良いのだが、近くですると後あと気分的に嫌なので俺は浜辺の方へとむかったのであった。
森の入口、浜辺の近くに生える南国の樹の下で俺はようやく事を済ませる。そしてズボンを上げながら、何の気なしに浜辺の方を見やると、シロがいた。
シロは下半身を水面下に沈め、その端整な上半身を月明かりのもとに晒していた。
(…………綺麗だ)
俺は息をのむ。しあかしすぐにおかしい。と思って俺はよく目を凝らす。そして、俺はその違和感の正体にすぐ気付いてしまったのだ。
(あんな沖……シロの足が届くわけがない!)
何なんだ?と俺が思っていると、シロの目がこちらを向いた気がした。
いや、気がした。じゃない。俺を発見したのだ。
俺は恐怖感からすぐに逃げ出そうとしたが、なぜか足が動かない。それでも必死に逃げようと足を引きずって後ずさる。
「コウゾウ……」シロの口が、そう動いた気がした。
美しかった。そして、どこか怖かった。
そして、なぜか俺は後ずさるのをやめた。なぜそうしたか、自分でも分からなかった。
じゃぼじゃぼと、水を掻き分けてシロがこちらに歩んでくる。真っ白い肌は、月明かりを受けてよけいに白く映った。
そして、砂浜に足跡をつけて、シロはおびえながらもシロから目の離せない俺の前に立った。
「孝造、来て」
いつもと違う流暢な日本語を口走らせ、海水の滴る手を差し伸べる。
だが、俺はどうすればいいのか分からなかった。
やがてもどかしく思ったのか、シロは俺の手を掴み、海へと歩いて行った。
月明かりに照らされた海は底の見えないような黒で染まっており、まるで全てを飲み込むような恐怖感を抱かせた。
そういえば。あの時もこんな海だった。
醤油に手を伸ばして見ていた海面。墨を流したような海の上で炎をあげて傾く船影。まだ内部に何百の命を積んだままの、明治以来のボロ船の最期。
「大丈夫」シロは呟く。「大丈夫だから」
ちゃぽ、ちゃぽ、と四つの足が海面を蹴る。やがて海面は踝を、膝を、腰を。と徐々に俺の体を飲み込んでゆく。
そして俺の胸が水に浸かったところで、もう首の付け根近くまで浸かっていたシロが急に「掴まって」と言う。
「お前がおぼれるぞ」
「心配ないから、早く」そう言ってシロは俺の両手を自分の首に回した。
次の瞬間、海中から何かが浮上してくる。
俺を乗せて浮上しきったそれは、ざらざらした肌を持つ巨大な海中生物の胴だった。
そして、その胴は、本来ありえないところにつながっていた。
「シロ……おまえ……」
「言えなくて、ごめんね」海中生物の尾をもつ、少女が答えた。
人魚。かつて読んだ舶来の童話に出てきた幻想の生物の名が自動的に頭の浮かんできた。
「私はこの海に住むホオジロザメ……あなたたちはフカって呼ぶんでしょうけどね。孝造の言葉が話せるのは、この言葉を海で聞いて、覚えたから」
シロは続ける。
「筏で漂ってた孝造をこの島まで運んだのも実は私……本当は木の実をおいたら逃げるつもりだったんだけど、
孝造にみつかっちゃったから、嘘ついちゃったの」
「……なんで俺を助けたんだ?」
「気まぐれ。人間の屍肉は嫌と言うほど食べてるし、それに……」
じゃぼん、とシロはフカの下半身を再び水中にやり、俺の方を向き直った。
「孝造に一目ぼれしちゃったみたい」
シロはにっこりと俺の方に微笑んでいた。月明かりに照らされる笑みは清楚で美しく、こんな綺麗なものがこの世にあるのかと感心するほどだ。
不意にシロは俺を抱きしめ、その胸に実る女の武器を押しつけながら耳元でささやく。「私と、一緒になってくれる?」
「一緒…………って」俺は絶句する。だが有無を言わさずにシロの手は俺の手をとり、海の中へと沈めた。
導かれた先はフカの腹にあたる部分に存在する、さながら二枚貝のような小高い丘を持つ、雌の器官であった。
「ココ、ココに孝造のを入れればそれで全部済むから……何もしないでいてね」
そう言うと、シロは濡れたズボンを脱がせにかかる。
俺は抵抗しなかった。
と言うか、シロの正体を知ったので抵抗する気もなかった。抵抗したところでフカに人間がかなうわけがない。
シロの片手は俺のものを手繰り寄せると、しゅこしゅことそのまま器用にしごいてゆく。フカだけにざらざらとした手の感覚が快感となって襲ってきた。
「すごい、こんなにおっきくて、かたい……」ほう、とシロはため息をつく。
「…………見たこと無いのか?」
「うん、はじめて」
初めてにしてはやけに手慣れてないか?と疑問に思いながらも俺はシロの攻めを甘んじて受け続けた。
「えいっ、えいっ……それ、えいっ」
一定の間隔で肉棒が調子よくしごかれたと思うと、肉棒から手を離して、睾丸を揉みしだく。もう片方の手もいつの間にか衣服の内側に入り込み、乳首をつまみ、いじってくる。全く気まぐれで変則的なシロの攻めに、俺はそう長くも持たなかった。
「……っ!もう駄目だ」射精前の一瞬の快感が、一気に背筋を走りぬける。男が感じる肉体的な快感で、最高の快感が。
が、その快感はすぐに苦痛へと変わった。
「まだ出しちゃダメ!」シロは指で輪を作ると肉棒の根元をきつく締めたのだ。出かけた精液は体の中に止まり、早く出してくれと痛いほどに訴えてくる。
「孝造は全部ココに出すの!」そう言ってシロは器用に尾を曲げて俺の腰にフカの腹に押し付け、俺の肉棒を自身の子をなすための洞に導いた。
洞の中は存外つるんとしており、締め付けもそれほどなかったが、優しく包み込むような感覚が心地よかった。
奥まで肉棒が侵入したのを確かめると、シロは手で作った戒めを解き放つ。
「うぁぁぁぁぁぁっっ!」
その途端、解放された精液がせき止められていた分いつも以上の勢いで飛び出し、俺はあまりの快感に声をあげて叫んでしまう。
「きたぁっ! お腹の奥にっ、あっついのがっ!」シロは体の奥に注ぎこまれる熱いものに、ぶるるっ!と体を震わせた。
そして双方繋がったまま、俺とシロはしばらく快感の海の中からあがれずにいた。
やがて俺が快感の余韻から冷めるや否や、シロは俺の体を強く抱きしめる。
次の瞬間突然に俺の唇が封じられた。
「はむぅ、ちゅ、ちゅ、ちゅぅぅ」
シロはついばむように口づけを繰り返したと思うと、より深く、貪るような接吻を繰り出してくる。
「はぷ……んじゅ、ちゅ、くちゅ、ちゅぅぅ……じゅ、じゅぅぅぅぅぅ……んく、んく……」
フカの真っ赤な舌を器用に絡めて弄び、歯垢の一つすら私のものだと宣言するように口腔内を舐めつくし、俺の唾液とシロの唾液をわざと絡ませた混合液で喉を鳴らし、獲物を食いつくしてゆく。
その間にもシロは締め付けるほどの強い力で体をつなぎとめ、二つのふくらみや柔らかい体を俺の胸板に必死に押し付ける。
いつしかシロの胎内で硬さを失っていた肉棒は、その本来の硬さを取り戻していた。
「ちゅ、ちゅ、じゅぅぅ……ぷぁっ」名残惜しそうにシロは唇を離す。濡れた唇からは月明かりに銀色に光る橋が、俺の唇目がけてかかっていた。
「もう一回、しよ?」とろんとした表情で、シロがささやいた。
その瞬間、俺は悟る。
もうこれは絶対に逃げられない。俺はフカの餌食になってしまったのだと。
「ああ……」半ばあきらめ気味に、しかしそれもいいかと思いながら俺もシロを抱きしめた。
シロは尾を左右に振り、腹部を動かす。それにつられて肉棒を柔らかく包み込んでいたシロの胎内はぎゅっ、ぎゅっ、と肉棒を絞るように締まる。
「腰、動かすよ」
言う前からシロは腰を前後にぱつん、ぱつん。と打ちつけている。
「あ、あふぅ……ん、ふぅ」シロの艶やかな声がさざ波の音とのハーモニーを奏でた。
 その白い肌には玉の汗が浮かび、上気づいた上体とともに月明かりに照らされる。
 「…………どう?わたしのナカ、きもちぃ?」
 「……まぁ、とても」
 「よかった……ここ、本当は、ひぁ、ただの、あふぁっ、卵の、通り道ぁぁぁっっ! だからぁっ!」
強烈ではないが、適度な快感が俺とシロにもたらされ、時間が経つほどに二人とも焦らされてゆく。
「んぁ……、これ、はうっ! きもちぃね……んんんっ!!!」
「うん……っ……」
シロは顔を真っ赤に染めながら、懸命にぱつん、ぱつん、と腰を打ちつけてくる。
ふと気付くと、知らないうちに俺もシロに合わせるように腰を打ちつけていた。
「孝造の、ぱんぱん、きもちぃ……」
「お前のも……」
じれったかった快感も徐々に確実なものへと変わってゆき、俺も彼女の言葉に段々答える余裕がなくなってくる。だがシロも限界が近いようだった。
「んんっ……」
これから襲いかかってくるであろう絶頂にぶるぶると全身が震えながらも、シロは俺の首筋に手を回してきた。
「ぎゅって、して?」
潤んだ眼を上目使いにしてねだるシロに、俺がはいと答えないはずがなかった。
「了……解」
俺はシロの細い上半身に手を回すと、ぎゅっと抱きしめる。
「きゃ、ひゃん、はわぁ、ひゃぁぁぁ」
もうシロの体は触れるだけで感じるほどに出来上がっていた。
もう完全に頭も快感でのぼせてしまってるのだろうが、俺の上体をがっちり掴んだまま腰を振ることだけは忘れずにいた。
俺ももう限界だった。はやる射精感は抑えられず、かなり限界の所まで来ている。
「…………俺も、もう駄目」
「じゃ、一緒に、いこ」
シロが俺を強く抱きしめる。
俺もそれに返すように強く抱きしめた。
そして、限界がきた。
「ふぁっ! また、あっついの! あっついのがきたぁぁぁぁ!!」
結局こらえ切れずに放出してしまった精液がシロの胎内の壁に当たり、シロは艶やかな声で絶叫する。
どくどくと長い間注がれた精液はシロの胎内を真っ白く汚してゆく。
 「全部、行くぞ……っ!」
 「来て! 全部、私の中にっ! 注ぎ込んでっ!」
 シロの注文通り、俺の精液はあますことなく彼女の体内へと消えてゆく。
 やがてシロは注ぎ込まれる感覚に耐えきれず、絶叫を上げながら体をこわばらせ、俺を抱いたまま上体を海面へとダイブさせた。
「はぁ、はぁ……」快感と疲労のため、俺たちは波打つ海面のすぐそばで、荒い息を立てながら二人抱き合っていた。
 「…………今ので、卵にせぇしかかっちゃった」シロはにっこりと笑った。「このまま近くの島に送ろうか?」
 「子供はいいのか?」
 「別に母親だけでも育つから。魚は単純だし」
 シロは苦笑していた。まあ、それが自然の法則なのだろうが、変に知恵のついたシロ達にはきついものがあるだろう。
 それに、こいつが俺と言う獲物を本気で逃すとは思えない。どうせ近くの島に送るとか言って適当な事ではぐらかしてここに戻すつもりなのだろう。
 「…………まぁ、いないに越したことはないだろ」俺はそう切り出した。「手伝わせてもらっていいか?」
 その答えを聞いたシロは、最初はきょとんとしていたが、そのうちに満面の笑みを浮かべて、俺を絞め殺さんまでに抱きしめる。
 俺の悲痛な声を聞き流しながら、海上の満月はにやにやと笑っていた。


1957年 8月5日 記述者:スコット=ラングリー少尉
太平洋上の某島出発後、コンパス故障により当飛行艇は遭難。その後燃料不足のため手近な島へ漂着する。
同島には日系人と思われる親子が住んでおり、両親は協力的で、一〇人ほどの女の子たちも我々飛行艇のクルーになついている。
ただ子供たち全員の年齢が見た目全く変わらないというのと、たまに子供たちの視線が熱っぽいものになるのが気になる点ではあるが…………。

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最終更新:2009年08月13日 08:56