共学逆礼山学院。霊峰逆礼山のふもとに広がるそこは、老若男女問わず、それどころか人も獣も妖怪も、はたまた神も仏も精霊も、学ぶ意欲さえあれば受け入れるという究極の学びの園である。
 そこでは泡沫のように、常に新しい物語が生まれては消えてゆく。
 そして、今、また学院に新たな物語が生まれようとしていた――


 ――斧が振るわれるたびに、森に乾いた音が響いた。

「与作はき~を切る~。ヘイヘイホ~」

 その音をバックに、逆礼山学院建築学部木造建築学科4年目、遠藤健二の間の抜けた歌声が流れる。ちなみに、逆礼山学院には学部が百八あり、その下に学科が六万四千ある。なぜ煩悩の数と同じなのかはよくわからない。
 彼が何をしているのかというと、進級課題作成のための木材を調達しているところなのだ。実学志向の学院においては、あらゆる素材は自らの手で調達せねばならないのである。逆礼山系の大森林地帯から豊富に手に入る木材などはまだ簡単だが、ウランやらプルトニウムやらを調達しなければならない物理学部生の苦労を考えると、なかなか恐ろしいものがある。もちろん、裏ワザとして『神頼み』というのも学院では立派に通用する手段なのだが、それには「若干の」対価が必要なため、できることは自分でやるのが賢明というものだろう。

 閑話休題。
 さて、そういうわけで調達活動に精を出す健二だが、彼は学科生の中でも腕の良い学生として知られている。作業開始から三時間程度だが、すでに彼の通った後には切り倒された木が十本ほど転がっている。次の一本を切り倒せば、もうノルマ達成だ。
常人とは思えない作業効率だが、学院においてはこの程度の能力がなければ生き残っていくことはできない。比喩的な意味でなく。
 恐るべき手際の良さで作業が遂行されていく。最後の一本もじきに切り倒された。
健二が枝にロープをかけ、思い切り引くと、斜めに削り取られた部分からメキメキと音を立てて巨木が倒れる。これで今日の作業も終了。健二は、ほうと溜息をついた。
 ところが、その木は彼が思っているより横にそれて倒れた。最後ということで気が緩んだのだろうか、思わぬ失敗だ。巨木は茂みの中に入り、そして、その瞬間なにかが壊れる不気味な音が響いた。

「あっちゃあ、やっちゃったか?」

 おそるおそる茂みの中を覗くと、予想通り、そこには倒れた木の枝に粉砕された小さな社があった。この霊峰逆礼山には、神社や寺、教会にモスクにシナゴーグ、果ては旧支配者の眠る神殿やマヤ式ピラミッドまでありとあらゆる宗教建造物が無数にあり、そこが学院に通う人外の生徒の寄宿舎になっている。この社も、そのうちの一つかもしれない。
 幸い、ここの住人は留守だったようだが、帰ってきたら我が家がバラバラになっていては面白くないだろう。社の規模からいってそこまで強大な神格が住むとも思えないが、そこは腐っても神様、その怒りに触れればどんな人間もただでは済まないということは、逆礼山学院の者なら誰でも承知している。
 となれば、なんとしてでもここの住人に許してもらうほかないわけだが、さてどうしたものか。
 答えは簡単に出た。

「立てなおしちゃえば、許してもらえるよね?」

 要するに、壊れたら直せばいいじゃんという、実にシンプルな思考である。とはいえ、それを実行できるものは少ない。そこは木造建築学科の彼ならではの方法といえる。
 見れば、木の下敷きになって潰れているそれは、いかにもこじんまりとして粗末なものだ。柱もあちこち腐っているし、例え健二が事故を起こさなくともそのうち倒れていただろうことは想像に難くない。なら、ここで俺が大きくてきれいな社を立てなおせば、きっと許してもらえるはず。いや、むしろ感謝されて何かご利益がもらえるかもしれない!
 持ち前の楽天的性格でそう判断した彼は、早速作業に取り掛かった。幸い、材料の材木ならさっき切り倒した分がいくらでもある。社ぐらいいくらでも立てられそうだ。
 まずは、壊れた社を片づけ、どんな神様を祀っていたものかを知らなければならない。一口に神社といっても、祀る神によっていろいろ違いがあるのだ。そこはきちんと知っておかなくては。
 社跡を見ると、そこには二つの石像が落ちていた。対になった獣の像だ。尖った顔にすらりと伸びた四つ足。それにくるりと丸まったしっぽ。片方は口を開け、もう片方は閉じているが、それ以外に違いがわからないほどよく似ていた。

「そうか、ここはお稲荷さんだったのか」

 それは、どうみても稲荷社につきものの狐の姿だった。多分、本来はこの口を開け
ている方は宝玉を咥えていたが、取れてしまったのだろう。他に手がかりになるよう
なものもないが、これで何の社か知ることができた。

「よっし! じゃあ、作業開始だ」

 早速、稲荷社の設計図を描き、作業を始める。地鎮祭を簡略に行い、基礎を作り、
木を削って柱を立て、板壁を張る。まるで早回しの映像のような速度で社が出来上が
ってゆく。さすがは木造建築学科のエース、作業速度も半端ではない。
 午後から作業を始めて、日没までにはすでにほとんど作業は完了していた。かつて
粗末な社だけがあったそこには、立派な稲荷神社が鎮座していた。朱塗りの立派な鳥
居も建てられ、真新しい白木の社殿と紅白の対比を見せるそれは、日没間近の陰影の
中で、すでに風格とも神秘性ともいえるものを放っている。まさに、遠藤健二会心の
作であった。人間、追い詰められると限界以上の力を発揮するものである。

「ふう、これで完成だな。いやあ、さすが俺。まさかここまでできるとは思わなかっ
たけど、この出来ならここの神様も喜んでくれるだろうて」

 最後に、あの狐の像を鳥居の左右に置き、鳥居に『逆礼稲荷社』と書かれた額をか
ければ全ての作業が終了。あとは、帰ってきた住人に事情を説明し、謝罪すればミッ
ションコンプリートである。健二は、自ら作った社殿の中でその時を待つことにした。
 しかし、自らの限界以上の力を発揮した後である。疲れきった身に、ただ待つだけ
の時間は何よりも辛い。睡魔が忍び寄ってくると、意識をつなぎとめるのが難しくな
ってきた。辺りがすっかり暗くなるころには、すでに健二は爆睡状態。大の字になっ
て社殿の床に転がっていたのだった。そんなもんだから、森の中から彼を見ている二
対の鋭い目があることなんて、彼は気づきもしなかったのだ。

 手首に感じる違和感で目が覚めた。板張りの床に直に寝たせいか、背中が痛い。
 辺りはすでに深い宵闇に包まれている。

 ――いかんいかん、ついつい寝ちまった。

 これじゃお稲荷さんの心象を悪くしちまうなあ、などと考えつつ辺りを見回す。すると、
「起きられたようです、姉さま」
「みたいだね、うーちゃん」

 そこには、逆礼山学院高等部の制服を着た二人の少女がいた。外見がそっくり同じ
なので、一目で双子だとわかる。どちらも涼やかなつり目の印象的な美少女だ。細面
の輪郭に、桜色の可愛らしい唇をのせ、形の良い鼻梁と墨で描いたような優美な眉を
備えた顔は、一点の非の打ちどころもないような完成された造形美がある。それだけ
でなく、紺ブレザーの制服に包まれた肢体は服の上からでも素晴らしい均整なのがわ
かるし、ほんの少し喋っただけでもその声が女らしさと少女の愛らしさを備えた極上
の美声だとわかった。
 それだけでも彼女たちが人外の魅力の持ち主と判断することができるだろうが、そ
れより何より彼女たちが人間以外の存在であることを示すのは、長い黒髪を割って頭
にはえている獣耳と、スカートから流れるふさふさした尻尾だ。
 普通の人間なら、こんなものと出会ったら驚く。しかし、健二は平然としたものだ。
何しろ、彼もまた人外とともに学ぶ逆礼山学院の学生である。そんなものにはとっく
に耐性ができている。

「ああ、すいません。お待ちするつもりだったんですが、つい寝ちゃいまして」

 そういって身を起こ――せなかった。
 健二の両手首が、ロープで柱に繋がれていた。そこで初めて、自分が拘束されてい
ることに気づき、驚愕する。

「ななななななななななな、なんじゃぁこりゃあ!」

 思わず叫び、ロープの呪縛から逃れようと暴れるが、武骨なロープはしっかりと結
えつけられていて到底ほどけそうもない。

「無駄です。そのロープは結び目に呪力で補強がかけてあります。人の力では絶対に
ほどけません」
「そうそう。だから無駄な抵抗は諦めておとなしくしてた方がいいよー」

 人外二人がいう。健二は絶望に囚われた。どうやら、自分は学院最大のタブーであ
る「神の怒りを買う行為」をしてしまったらしい。

「そ、そんな……。たしかに社は壊しましたけど、ちゃんとこうして立て直したじゃ
ないですか! それなのにいきなり生贄にするなんてあんまりだ!」
「それは知ってるよ。ついでに、生贄じゃないから」

 呆れたように姉さまと呼ばれた方の少女が溜息をもらす。
「一応自己紹介しとこっか。あたしの名前は狛犬阿形。でもこの名前はカッコ悪いか
ら、あーちゃんって呼んでもらってる。こっちは、双子の妹の吽形。うーちゃんって
呼んだげて」
「よろしくおねがいします」

 暢気に自己紹介する二人に対して、健二は呆然としていた。

「こま……いぬ……?」
「そうだよー。あたしたちは、この社に住む狛犬」
「だ、だけど、あれどう見ても狐……」

 その瞬間、妹の吽形がよよと泣き崩れた。

「姉さま、また私たち間違われたのですね……」
「泣かないでよ、うーちゃん。覚悟はしてたっしょ?」

 泣き崩れた妹を慰める姉。実に麗しい光景であった。ただし、妹の泣き方はいかに
もわざとらしい嘘泣きであるが。

「ヒドイよっ! 確かにキツネに見えるかもしんないけど、それは像を作った人間が
ド下手だったせいで、あたしたちのせいじゃないもん! 間違われた挙句、お稲荷さ
んの社に祀られちゃったり、お供え物もずっと油揚げばっかで最近ではジャーキーよ
り稲荷寿司が好きになってきたり、やっと社が壊れて『ああ、ついにあたしたちもま
ともな神社に住まわしてもらえるのね』と思ったのにまたお稲荷さん建てられてずっ
こけたりしたけど、それでも狛犬は狛犬だもん! 狐じゃないもん!」

 一気にまくしたてられ、気押される健二。

「ええと、申し訳ありませんでした。狛犬様」
「「わかればよろしい」」

 声をそろえて言うと、一転してけろっとした様子の狛犬娘二人。どうも口ほどに気
にしているわけではないような気がする。

「じゃ、じゃあ、この稲荷社を他の神社に建て替えればいいんですよね?」
「うん、それはもちろん。だけど、それだけじゃだめだよねー?」

 にんまりと笑う姉の阿形。その後を、妹の吽形が引き継いだ。

「ええ、やはり物事はそれなりの『落とし前』というものをつけなければなりません
から」

 そのいかにも悪だくみしている顔は、どう見ても犬というより狐だった。
「建物に関してはそれで良いかもしれません。しかし、私たちの被った精神的苦痛については、しっかり責任を取ってもらいます」
「て、天罰でも下す気ですか?」
「それも良いでしょう。しかし、ボロボロだった社をこんな立派な神社に建て替えていただいておいて、ただ単に罰を下すだけでは、かえってこちらが恩知らずになってしまいます」
「はあ……」
「そこで折衷案として、あなたには私たちに犯されていただくことにしました」
「――は?」
「良い案でしょう? 女に犯されることによって、褒美としての快楽と罰としての屈辱を同時に与える。これ以上ない解決法ではありませんか?」

 その瞬間、神聖な社殿は淫涜の気に満たされた。

「御覚悟を」

 発情した二匹の獣が、健二に襲いかかった。姉は下半身に、妹は上半身に、それぞれ別れて彼を脱がせ始める。
 上半身に抱きついた妹は、その美しい肢体を健二に擦りつけながら、白魚のごとき指で彼の作業着のジッパーを外し、肌着を引き裂く。姉はズボンの留め金を外し、パンツと一緒くたに引きずり下ろす。姉妹の息の合った作業で、健二はあっというまに裸にされてしまった。抵抗する間もない早業であった。

「ふっふっふ……、なかなか良いモノをもっているじゃあないの」

 邪悪にほくそ笑む姉犬は、露わにされた健二の男性を指先で小突く。

「どうしよっかな。ジャーキーもおいしそうだけど、やっぱお稲荷さんからかなぁ」

 健二の棒と袋を見ながらいう。すでに口の端からよだれが垂れかけている。しかし、
その声は健二本人には届かない。なぜなら、上半身では彼女の妹が暴虐の限りをつくしていたからだ。
 妹犬は健二の肌着を脱がせると、露出した男の乳首に吸いついてきた。男の良く鍛えられた逞しい胸板に、少女の柔らかな唇が押しあてられる。桃色の唇に覆われた右乳首が軽く吸われた瞬間、ぞくり、と寒気が彼の背筋を伝わった。反対の乳首はといえば、そちらは彼女の指先によって弄ばれている。口で片方を吸えば、もう一方は指で摘まむ。片方を舌で舐めれば、もう一方を爪先でくすぐる。シンクロした刺激が与えられるたびに、健二は背筋に蛇の這いまわるような寒気を感じていた。
「は、うぅ……」

 思わず声が漏れる。その瞬間、それまで胸にあった彼女の唇が、いつの間にか彼のそれと同じ位置にあった。僅かに開いた口に、少女の生暖かい舌が割って入ってくる。
気がつけば、彼女の美貌は健二の目の前にあった。

 ちゅるっ――ふっ――くちゅっ――

 二人の唇の合わせ目から、舌が口腔内で動きまわる音が漏れる。すでに彼女の舌は、
健二の口を我が物顔で占領していた。彼の舌はおろか、頬の裏も歯も歯茎も、隅々まで舐めまわされている。もはや自分の口が自分のものと認識できない。完全になすがままだ。健二にできることは、吸われれば唾液を与え、舐められれば刺激に背筋を震わすだけ。大の男が抵抗することすらできず、体の内側までべろべろとはしたなく舐めまわされる様は、まさに強姦の名にふさわしい。

 そのころ、下半身では、一向に自分に気づかない健二に、姉のほうがいら立ちの声を上げていた。

「むう、うーちゃんばっかり気にして、あたしのことはどうでもいいの?」

 そんなことをいわれても、健二は下半身まで気が回らない。そもそも妹に口をふさがれていては、反応できるはずがない。
 しかし、姉犬の方はそんな道理は完全に無視して、いらだちを口で表現することにした。声を使わず。
 姉犬はぺろりと舌を出すと、微塵の躊躇もなくそれを男の下腹にぶら下がる袋に這わせた。妹犬の猛口撃に意識を飛ばしかけていた健二の意識が、その一舐めで覚醒した。ざらつく犬娘の舌が袋の縫い目をなぞると、そのたびにぞくぞくと腰が震える。
一度意識してしまうと、もう下半身の刺激を無視することなどできようはずもない。
腰のふるえに合わせ、それまでしなだれていた棒の方にも血液が流れ込み膨張を始める。

「ぺろっ、れろっ――はあ、やっと気づいたぁ? おいしーよ、君のお稲荷さん」

 大好物を味わって大喜びの少女は、さらに激しく健二の肉袋を弄る。中の二つの玉をくにくにと指で揉み、柔らかい表皮をはむはむと唇で咥え、皺の一本一本を舌先でくすぐっていく。

「はあぁぁ……、ここぉ、すっごい男の人の臭いがするよぉ……」

 食肉目の鋭敏な嗅覚が、一日中働いて流れた男の汗の中から、下半身で蒸れて熟成されたフェロモンの刺激的な臭いを感じ取る。その臭いが、発情犬娘のなけなしの理性を粉々に吹き飛ばした。

 姉犬はその鼻づらを男の股ぐらに突っ込むと、空いた方の手を自らのスカートの中に突っ込むと、下着の隙間から自らの女の部分に手を這わせる。すでにショーツにシミを作るほどに濡れていたそこが、手を這わせただけで到底足りるはずもなく、すぐにその手は激しい自慰の水音を立て始める。男の臭いをオカズにした、犬娘の発情オナニーはどんどん激しさを増し、ついにはまだできたばかりの板張りの床に雌の体液をぼたぼたとこぼすまでになった。
 至近距離で放たれる濃密な雌犬フェロモンに反応したか、健二の竿もこれまでになく熱く固くなる。触れてもいないのに、すでに先端からは先走りの液がドクドクと流れ始めていた。

「ふぁあ……、ジャーキーも、おいしそぉ……も……がまんできないぃっ!」

 がるる、と一声うなった雌犬が、健二のそびえ立つ肉の柱にむしゃぶりつく。

 じゅぷっ! ぐちゅっっ! じゅるるっ!

 雌犬はくわえ込んだ先端に熱心に舌を這わせ、溢れる男の我慢汁を吸いつくす。その刺激をまともに受けた健二は到底無事では済まされない。本当はのどの張り裂けるまで声を上げたいところだが、それは口を蹂躙し続ける妹犬が許してはくれない。喉の奥から絞り出すように声にならない声を漏らすのみだ。
 姉妹の口撃を上下から喰らった健二はもはや青息吐息。すでに我慢も限界を迎えている。精道を男の液が駆け上がり、竿がびくりと振動。そこに図ったようなタイミングで姉犬が男の芯を吸い上げる。

「ぐっ! ぐぅっ……」

 そのまま抗うこともできず、健二は射精した。姉犬はそれを嬉しそうに直飲みし、
妹犬は男の震える舌の根をくすぐり続ける。

 かつてないほど長い射精が終わると、姉妹はようやく口を離した。ぜいぜいと息を荒げ、健二は不足していた酸素をようやく補給する。服を脱がされ、手首はロープに繋がれ、上も下も雌犬の唾液でべしょべしょに汚されたその屈辱に満ちた姿には、かつての快活だった遠藤健二の面影はまるでない。抵抗の意思もとっくに消えた。そこには、なぶられる快感に身を任せ、性の快楽を貪ることしか考えられない雄が一匹いるのみだ。

 男の変化を読み取ったのだろう、妹犬はゆっくりと男の乳首を再度吸い始めた。今度は寒気ではない、本物の快感が健二の背中を流れた。

「良い具合に仕上がってきましたね。ではそろそろ……あら、姉さま?」

 妹が見ると、姉は男の脚の間でふるふると震えていた。


「~~~~~!」

 ぶるっ、と一際大きく身を震わせ、ようやく治まったらしい姉が口を開く。

「――はあ、味だけでちょっとイっちゃった」
「まあ……」

 姉の告白に呆れたような驚いたような声を出す。しかし、すぐにその眼は羨望に輝き出す。

「姉さまったら、私はまだ口吸いだけしかしていないのに……」
「あはは、ゴメンゴメン」

 いじけた様子の妹に、姉が慌ててフォローをする。

「じゃ、じゃあさ、今度はあたしが上でするから、ジャーキーはあんたに譲ってあげ
るよ。それでいいでしょ?」
「そ、それなら……」

 ごくり、吐息を飲んで妹が下半身側に、姉が上半身にやってくる。
 妹は健二の股間にまたがると、するりとショーツを脱ぐ。

「あれ? 早くない?」
「姉さまの臭いのおかげで十分濡れました。もう私も我慢できません」
「あはは、そう?」

 妹に指摘され、ようやく自分の臭いが辺りに充満していることに気づいたのだろう。
姉は恥ずかしげに鼻の頭を掻く。それから気を取り直したように、健二に向き直った。

「じゃあ、あたしも使わしてもらおうかな」

 姉犬はずぶぬれのショーツを脱ぐと、そのまま健二の顔の上にまたがった。

「ほら、君だけだぞ、舌を使ってないのは。今度は、あたしのを舐めて気持ちよくしてね」

 スカートの中の暗がりに、ひっそりと息づく濡れた肉色の花が見えた。その余りの淫靡さと芳しい性臭に、一度萎えかけた健二のものが復活する。
 健二はもはやもの言うことのない完璧な雄犬となり、待てをする犬さながら、ハアハアと息をしながらその時を待った。

「では、いきます」

 妹犬の宣言とともに、宴が本番を迎えた。
 妹犬の腰が落ちるとともに、健二の肉竿は温かい雌の胎内へと飲み込まれていった。
スカートに包まれじかに見ることはかなわないが、彼には入口のすぼまりに扱かれ、
奥の柔肉に包まれる感触が如実に伝わってくる。彼女自身の言ったとおり、そこはすっかり濡れており、彼の太いものは何の抵抗もなく彼女の中におさまっていた。

「ふ、ああぁ、おっきいぃん……」

 妹犬が嬌声を上げる。健二が感じているように、いや焦らされたことによってそれ以上に、彼女は快感を得ていた。すぐに彼女の腰が動き始める。上下に、左右に、前後に、快楽を得るための露骨な運動をするたびに、ぐちゅぐちゅという擦りあわされる音が響く。

 下半身の快楽に震える健二。だが、彼女たちはただ快楽を与えるだけではない。そのもう一つの目的は、屈辱を与えること。もっとも、すでに健二に屈辱などという高尚な感情が残っているかどうかは、はなはだ疑問だったが。

「ほら、震えてるばかりじゃ駄目だよ。あたしの舐めてくんなきゃ」

 姉犬の腰が下がる。健二の目も鼻も口も、全て彼女のスカートに包み込まれる。もはや彼のあらゆる感覚が彼女らに支配されている、そのことを象徴する行為だった。
 盲目になり下がった健二は必死で鼻づらを動かし、彼女の敏感な部分をとらえようとする。ようやく見つけたそこに、精一杯舌をのばして舐めあげた。

「ひゃっ! い、いいよ、もっとしてぇ」

 愛しいご主人さまのご希望通り、最後の力を振り絞って舌を動かす。蒸れた雌犬の媚肉を舐め、割れ目に舌を差し込み、僅かにはみ出た肉唇をはむはむとくわえる。それは、与えられたご褒美にはしっかり報いようとする忠犬の意地のなせる技だった。

 くちゅ、ぐちゅ、じゅっ、にちゃっ!

 二枚のスカートの中から、加速度的に激しくなる水音が漏れる。それは神聖であるべき社殿の中に満ち、場違いな嬌声とともに周囲の森の中に溶け込むあまりに淫らな三重奏だった。

「あっあっ、もう、ダメッ、イきますっ!」
「あ、あたしもぉっ! あたしもイっちゃうう! い、いっしょにイこぉっ!」
「は、はい、姉さま、もうすぐ――あぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「あ、へ? へにゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「―――!!」

 どぴゅっ! びゅるるっ!

 三人は同時に絶頂を迎え、まるで一つの生命体のように同調して体を震わせ、そしてひと塊りに崩れ落ちた。


 それから、しばらくの時が過ぎた。
 今や遠藤健二の名を覚えているものは、学院のどこにもいない。彼は消えた。それが、学院生にわかるただひとつの真実だった。
 しかし、いまだ消えないひとつの噂話がある。
 逆礼山系の大森林地帯。そこに、無限に広がり続ける神社があるという。正確な位置はわからない。ただ、そこはあまりに広い神社で、どこが果てだかもわからない。
何を祀った神社か、どんな縁起があるのか、なにもかもわからない。しかし、縁結びや子授け、はたまた肉体的な夫婦円満など、性愛方面では絶大なご利益があると言われ、時に学生カップルがそこを探して山に入り、そしてまれに行方不明になったりする。
 そこを訪れたことがあると頑なに主張するある学生の証言によれば、そこでは常に大工仕事をする音が響き続けているという。その謎の大工こそが、この神社を広げ続けているのだと。また、別の学生はそこで男女のまぐわう嬌声を確かに聞いたという。
 果たしてこの噂話は真実なのか。真実は逆礼山の深い深い森の中である。

《了》