ザッ、ザッ、ザッ……

「やれやれ、何でこんな事に……」

俺は今、密林の中を結構な装備で突き進んでいる。
うっそうと草が生い茂り、木々が日の光をさえぎる、典型的な密林だ。
なんともいえない暑さと、湛えられている湿気のせいで俺の体は凄い発汗量を誇っている。

俺は森林調査のために日本からここアフリカへ数十日前に飛び立った。
なのに今俺は、全く別の目的で森の中に居た。

―――――――数日前―――――――

俺は調査隊の上の人に呼ばれてた。

「失礼しまーす、隊長、なにか御用ですか?」
「ああ、藤島、来てくれたか…実はちょっと困った事になっててな…
 1週間前に送った班なんだが…」
(あ、そういえば昨日帰ってくる予定だったっけ…)

しかし隊長の顔色はよからぬ事が起きた事を物語っている。

「あり?ひょっとしてまだ帰ってきてなくて音信不通とか…」

すると隊長は苦笑い。

「いや…帰って来たことは、来たんだが…」
「じゃあなぜそんな微妙な表情を…」
「ついてきなさい。理由分かるから…」

言うなり隊長は俺を横切って部屋から出て行く。
言うとおりついていくと到着したところは…

「医務室?まさか変なキノコでも食べて集団で当たったとか?」

冗談半分で言ってみたのだが、表情をひとつも変えないことから隊長はそれにつっこむ余裕も無いようだ。

「見ればわかる…」

そして隊長がドアを開け、俺の目に平行に並んだ何床ものベッドが飛び込んでくる。その瞬間俺は…

「なんじゃこるあぁぁ!?」

某Gパンの人ばりに叫んでました、いや、マジで。

誰だってびっくりすると思う。
ベッドは先週派遣された班の人間で満床で、
一人残らず全身ボッコボコにされてうなされてるんだもん。
その中にもう頬がまことに残念なくらい腫れ上がってる友人も居た。
一瞬誰かわからんかったが、他にそれっぽい人物もいなかったのでそいつに駆け寄った。
「おい、だいじょうぶか!?」
「ルイ…ああ、なんとかな…見舞いに来てくれたのか?」

良かった、正解してた。

「いったい、何でこんな事に…」

経緯を聞こうとするとそいつは深呼吸をして真剣な眼差しで俺を見てきた。

「…俺とお前は、親友だよな?」
「は?なぜに今そんなこt」
「親友なら今から俺の言う事、全部信じてくれるか?」

かなりシリアスなセリフだ。顔腫れてるのに。笑いそうだったが、何とか堪えて、俺は答えた。

「わかった、信じる」
「よし、じゃあ話すぞ…一切フィクションは入れてないからな」

友人は真剣な顔になったので、俺も唾を飲み込んで耳を傾けた。

「二日前だ…俺たちはちょうどいい頃合いで休憩してたんだ…まあ割と騒いでたんだけど。
 そしたらそばの茂みが揺れて、もう振り向いた瞬間にはそのあたりに居た二人が倒れてて、
 でも何に倒されたのか全然わかんなかった。姿が視えなかったんだ。
 するとみんな混乱してる間にどんどん倒されていった。最後に俺が残って、どうにか対処しようとしたんだ。
 冷静になってみてどうにか姿が見えたんだが…その視えたものにビビッてしまって手も足も出なかったんだ…
 何が視えたと思う…?
すんごいでかくて長い”舌”だぞ!?普通硬直するだろ!?
 何も無い空間から人間の5,6倍のサイズのベロが出てきたら!?
 …で、木がついたら傷と唾まみれで森の外に全員放り出されてたんだ…
 …ってアレ、何その顔?」

俺の顔を友人が覗き込む。
俺は今の話を必死に整理に整理して、ひとつの結論にたどり着いた。

「あっ、ああ、話してくれてありがとう…ところでな…ホントに申し訳ないんだけど…」
「ん?」
「ウソだろ、その話」

…しばらく沈黙…・・・・ ・・  ・・
バキッ!!!
友人の右フック!!こうかはばつぐんだ!俺の左頬はたおれた!!

「何でだよー!!約束したろうが!全部信じると!!」
「今の話をか!?ムリムリムリムリ!浮世離れしすぎなんだもん!ありえねぇもん!!物理とかその他モロモロ的に!!」

今思えば、ここで逆切れなんてしないで素直に謝っておけばよかった。
そいつは、まだ律儀にドアの傍にいた隊長にむかって、

「たいちょー!!ルイが一人で原因調べに行ってくれるんですってー!!」
「えええええぇぇ!?」

隊長はつかつかとこっちに来る。

「本当か?」
「イヤイヤ、大体単独行動は危険すぎるでしゅ…じゃねぇ焦りすぎて噛んだ!
 かんしゃポケ○ンか俺は!…危険すぎるでしょう!?」
「それがな、他の人間は恐れおののいてみんな辞退するんだよ…頼む!」

隊長に頭を下げられる。と同時に俺は気付いた。
周りの視線がグサグサ俺に刺さっている事を…
―――――――今現在―――――――

俺は今医務室に居る人間が全滅している地点まで来た。
確かに半径数メートル目立った木々が生えてないので休憩、野営にはもってこいの場所だ。

「とりあえず…テント張るか…うをっ!」

右足が何かに躓いた。飲み物の缶だった。

よく周りを見渡すと、あいつらが騒いだのか、ごみがいくつか散乱している。

「まったく…片付けるか」

テントを張る前にごみを拾っておく。あいつらが捨てたのでもなさそうなえらく土ぼこりのついた古いゴミも多々あった。
立つ鳥後を濁さず…っと。

「しっかしアイツら…絶対無事に帰ってあの腫れ上がった顔をさらにジャガイモみたいにしてやる…
 大体、集団で対処できなかったのが一人でどうにかできるわけ…イヤイヤ、待て待て、絶対ウソなんだから。
 どうせ今旬の若い女優の中で誰が一番可愛いかで揉めたんだろうな…
 そんなあほな理由で喧嘩したのが隊長にばれるのが怖いから、あんな話でっち上げたんだ。絶対そうだわ。
 バカだなあいつら…ホントにバカだわ…
 アレ、そんなバカに計られた俺って一体…」

しばらくブツブツ言いながらガサガサゴソゴソ用意をしていた。

ガサガサッ!!

「そう、ガサガサ言いながら…ってホントに言ってるし!!」

突っ込みを入れつつすぐにガサガサとほざいた茂みのほうを見た。

…何も居ない。気配はするけど。

アレ…あの話本当かもしれないような気がしなくもなくもない…
とりあえず、周りに細心の注意を払う。払いながら石を拾う。

…ガサガサッ!

「!!」

別の茂みが動き、そこに2,3個投石するも全く手応えがない。それどころか…

「痛っ!」

今動いた茂みとは全く別の角度と方向…
おそらく木の上からお返しとばかりに飛んできた石。
この瞬間気付いた…この話はノンフィクションであり、俺は、完全になめられてる。
この前倒した奴らと同じ服装を俺がしているからだろう。
そこまで下に見られるとさすがに俺も黙っていない。

「おいおい、姿を見せないで攻撃とか卑怯なんじゃないの!?…舌お化けさんさぁ!?」

三文芝居だが挑発してみる。さすがに最後のセリフは効いたんじゃないか?
ん?あれ?そもそも、今対峙してる相手って言葉通じるのか?
その瞬間、俺の脳内には化け物のイメージが構築される。

…なんか急に怖くなってきた…
しかし、俺は悪運がよっぽど強かったようだ。奇跡的に俺の相手は言葉の通じる奴だった。

[…舌お化けとは、言うじゃないか…]

上の方から、気の強そうな声がした。
見上げると、地上6,7メートルはあろうかという樹の枝の上の空間が歪む。
すると徐々に透明な輪郭が現れて、色がついていく。
現れたのは迷彩柄の軍服とミニスカを着ていて、
深緑のショートカットと頬に緑のフェイスペイントをした綺麗な褐色の肌の女の子。
遠くからでもわかる、可愛らしい顔と大きくて瞳孔が開き気味の目。

俺は人生で始めて驚きすぎて顎がはずれそうになりました。
顎は堪えたけど、風でミニスカの中身が見えそうになり、不覚にもちょっとにやけてしまった。

「貴様…どうした?」

睨まれはしたがにやけてる事は気付かれてないようだ…
しかし怖い顔してても可愛い…迫力は同居してるけど。
相当挑発しているので向こうは多分怒っているだろう。出来るだけ刺激しないように…
顔を引き締めて尋ねる。正直、これから質問しないと何も始まらないので、

「あの…誰ですか…つーか何者ですか…」
「名を尋ねたいのなら自分から名乗るのが常識ではないのか?」

…顔の可愛さと、気の強さ&言葉遣いが正反対だな…つーか怖い…

「あ、藤島ルイ、です…」

つい敬語になってしまうほどの迫力です。こんなオーラどこから出るんだろうか…

「私の名はイレイス=バニシング。この密林を護る者であり、カメレオンの化身だ」

…かめれおん、ですって???

「あの、それは高級な時計のメーカーか何かですか?」
「たわけ!貴様ら人間が爬虫類と呼んでいるカメレオンだ!!
 さっきまで姿が見えなかったのは、擬態していたからだ…」

たぶん普通に聞いてたら、支離滅裂としか思えないのだろうけど、
実際彼女が言っていることを実際見ているわけだから、嘘と思えなかった。
だから彼女はカメレオンだという体で話を続けた。
「で、そのカメレオンがわざわざ人間になっていったい何の用事が…」
「私は普段は普通のカメレオンだが、この場所を護る必要が生じた場合この姿で活動する。
 外敵、まぁ殆どがここの開発を企んでいる人間だが、そいつらを追い返すのが主な仕事だ。
 先日この森にお前と同じ服装をした連中がちょこまかとしていたのでな…
 この森に深刻な事を何かされてからではたまらないので追い払ったのだが…貴様、あいつらとは知り合いか?」

どうやらイレイスはこの森を俺たちによって駆逐されると思い込んでいるらしい。

「え、あ、まあそうなんですけど…僕たちこの密林の事は調べに来ただけで、
 べつにこの場所をどうこうしようなんて事は…」

「嘘をつけ!!!」

ビュン!!べチャッ!

刹那に俺の頬を何かが掠めた。それはピンク色でべったりしていて、彼女の口から伸びている…舌。
本当に人間の舌とは規格外でかなり重量感がある。これで本気でビンタされたら、気絶してしまうのも無理はない。
とりあえず、彼女が本当にカメレオンの化身である事まではわかった。
テレビで何回か見たカメレオンの捕食シーンを、実際に体験してしまったら、信じざるを得ない。

イレイスは舌を出したまま続ける。その表情はさっきにも増して憤怒していた。

「調査に来た人間が、そこらじゅうにゴミを投げるのか?そこらじゅうを汚すのか!?
 どうせ、もうすぐ自分達のものになるから横柄になっているんだろう?
 貴様らはいつもそうだ。言動と行動が全く合っていないんだ!!」

…あいつら、時空を超えて俺を困らしやがって…

「舌お化けなどと侮辱されたうえ、あんな不届き者共の仲間であるとわかった以上、
 お前もただで帰すわけにはいかない!!!」

そう言い終わると、凄い長さがあった下は再び音を立て、イレイスの口の中へ。(あんな長い舌どこに入るんだ…?)
こっちには釈明する暇も与えてはくれない。釈明しても無駄そうだし…
「次は、当てるぞ…!ルイとやら、さよならだ…!二度とこの森に近づくな!」

イレイスの大きな目が俺を捉える。自分の背筋が凍りつくのを感じた。

…これは、ヤバイ!

とりあえず、冷静になれ、ルイ!相手は今はちゃんと見える。
あの舌の攻撃は多分一発食らった時点で終わり。
だがしかし!あの舌は攻撃と同時に無防備にもなる。
それなら…

「食らえ!」

真正面からピンク色の一撃が迫ってくる。俺はそれを…

「なッ!?」
「あぶなかったぁ…(汗)ところで、さぁ、どうする…イレイスさん?」

イレイスが驚く声を聞く。俺が彼女の舌を顔面寸前でかわして抱えて止めたからだ。
俺は彼女の舌を抱えたまま、立場が逆転したので、強気になって思いっきり睨み返しながら啖呵を切ってやった。

イレイスが悔しそうな表情をしている間、次のステップを考える。
彼女が舌を振り回して俺を振り切る事を気付く前に、引っ張って木の枝から落とす事を思いついた。
参ったと言わせてから、話はじっくり聞いてもらえればいい。

「イレイスさん、そっちがさよなら!」

完全にやってやったと思った。
でも俺の体は、イレイスの下を引っ張った瞬間、左に吹き飛ばされた。
俺が舌を引っ張ったのと、イレイスが舌から俺を振り切ろうとしたのが、同時だったのだ。

イレイスが樹の枝から落ちていくのを見ると同時に、ちょいっと左を見ると、
巨大な樹の幹が俺に迫っていた。いや、樹の幹に俺が迫っていた。

「ぎゃああああああああ!!×2」


「いててて…」

俺は抱えてた舌がクッションになって、たいした傷もなく無事といえるレベルだった。
そして、力なく地面に横たわっている舌をたどって行くと…

「ありゃりゃ…やりすぎたかな…」

舌同様、イレイスはのびきっていた。
自分が振り落としたうえ、舌をクッションにしてしまった訳で、少し罪悪感が。

「しゃーないな…」
「うぅん…はっ!?」
「あ、起きたか」

俺はやりかけだった野営の準備を終えて、イレイスの手当てをして寝かせてやっていた。
なかなかの高さからまっ逆さまにもかかわらず、軽い打撲だけで済んでいた。で、今目覚めてきたというわけ。
イレイスは状況を把握するなり、いきなり食ってかかってきた。

「おい、どういうつもりだ!」
「いや、だって怪我人、じゃねぇな、怪我カメレオンを放っとく訳にもいかんでしょう。
 もしそれは俺の余計なお世話だって言うなら、謝るけどな」
「…いや、そこまで言おうとは思っていない…すまなかった…」

初めてイレイスのしゅんとした顔を見た。気は強いがやっぱり外見は年端もいっていないから、
迫力が無くなると普通のかわいい女の子だ。…っと、それよりちゃんと説明をだな…

「あの、さっきの話なんだけd
「私は」

またも遮られてしまった。しかしイレイスはしゅんとしたトーンのまま口を開いたので
そのまま押し通すわけにもいかなかった。

「お前に、負けたのだな…」
「い、いや、別にそんな顔するほど大層なことでは…」
「私がお前に気絶させられたという事は、この森を守れなかったということだ…仕方ない、かくなるうえは…」
「いや、だからそうじゃなくて…ってなにしてんすか!!??なぜ服をはだけるの!?」
「私の体をやる…好きにしていい。だからここの事は諦めてくれ…」
「ちょっ、えぇ!?ちょっと一回落ち着けって…」
「頼む、たのむから…お願いだからぁ…」

イレイスは、泣き始めていた。歯を食いしばって、いろんなものを堪えているように。

「おい、お前…」
「この密林には、たくさんの命が息づいている…周りの焼かれた密林から逃げてきた者たちも少なくない…
 私は、この場所と皆を守りたいと、強く願った…本当は怖い、人間を相手にするのは…
 それでも、ここの皆が、たくさん励ましてくれて、たくさんチカラをくれるから…頑張れた。
 だから、裏切りたくない…頼む、なんでもするから…」

嗚咽を漏らしながらも必死のイレイスの言葉は、俺の体の芯に響く。そしていろんな思いが甦る。
俺、そういえば今こういうことしてるのって、昔、こいつが言ったような事がしたかったからなんだって。
小さい頃山登りして、頂上からの景色に感動して自然を守りたいって思ったからだって。
気付かないうちに、隅の方に追いやって、どんどん掻き消えていったんだって。
今はもう、ただ自分が暮らすために、淡々と作業のようにしてしまっているんだって。

イレイスは、俺ができなかった事を、自分の身を賭けてまでやろうとしてる。
そりゃ、彼女は誤解して勝手に突っ走ってると言ってしまえばそれまでだけれど。
でも俺は…本当は彼女に何も文句を言う資格なんてなかったんだ。
「…お前、偉いな」
「えぅ?」
「そこまでして何かを守ろうとするなんて普通できないから、さ」
「いきなり何を…」
「俺も、最初は自然とかさ、守りたいと思ってこういうこと、やり始めたんだ。
 なのに今はもう、とっくにそんな事忘れてて、初心に帰ることもしなかった。
 …でも、たった今、お前が思い出させてくれた。俺が本当にしたかったこと。
 …ありがとな。ほら、もう泣くなよ」

ハンカチを差し出したが、イレイスは受け取ろうか取るまいか迷っていた。
多分俺のことを、信じるか信じまいか、迷ってるのかもしれない。

「…そんな嘘をついたところで、もうこれ以上何も出ないぞ…」

ゴミを捨てた奴らのカルマが俺に降りかかる。やっぱり信じてはくれなかった。

「そうだな、疑われても仕方ないよな…ごめんな」
「まだそんなしおらしい態度を取るか!…?」
「?…どうした?」

イレイスは何かを見つめて止まる。それはさっきまで俺が拾っていたゴミを入れた袋だった。

「あれは…」
「ああ、この当たり汚かったからさ、拾ってたんだ。
 お前に比べたら全然だな。あんな小さな事しかできない…いいぞ、俺のこと笑ったって」

俺は鼻で笑われると、てっきりそう思ってた。
だけどイレイスは、もう一度泣き出した。今度は俺にすがり付いて。

「疑って、嘘なんて言って、すまなかった…」
「え?信じてくれるのか?」
「…勘違いにもかかわらず襲ってきた私を手当てして、ここのみんなと同じように私を励ましてくれて、
 確かに小さな事だけど、自然を守ろうとしてくれてる…お前の事は、信じたい」
「…ありがとう」

俺の礼を聞いて少しだけ、イレイスの腕の力が強まった。
ようやく何もかも落ち着いて、俺たちは二人とも居直った。
イレイスの服はまだはけたままだったので、できるだけそっちは見ないようにはしたけど。

「お前には、迷惑をかけたな。それに何より、礼がしたい。」
「ん?いや、もういいよ、わかってもらえたし。」
「いや、それでは私の気がおさまらない。だからここは譲ってくれ。」
「…わかった。で、礼ってな…だはっ!!」

眼前には頬を赤くしたイレイスの顔。下着を着けてない小さめの胸はしっかり俺の体に密着している。
女の子のいいにおいがして、俺の体をくすぐる。

「今度は心置きなく、お前に私の女をやれる…」
「おま…もう少し自分の体を大切にしろ!」
「なぜだ?私はお前となら交尾してもいいと言っているんだぞ?互いに不名誉な事なんてない。
 それに、男に手当てしてもらって、励ましてもらって、胸を貸してもらって、落ちない女がどこにいる?
 私は、こう見えても強い男より、優しい男のほうが好きだぞ…」
「俺はいいなんて言ってないし!ってかなんでびくともしないんだチクショー!」

油断してた。完全に顔を背けて喋っていた俺は完全にイレイスに押し倒されてしまった。しかも動けないほど凄い力で。
イレイスは、さっきまでの強気がどこかへ行って、ただのデレデレしている女の子になっていた。

「さあ、無駄な抵抗はやめろ…」
「うおぉ!なにか発動しろ!俺のなにか…んぐっ!!」
「うるはいやつだ…ちゅうううぅっ…」

俺の口はイレイスの口に塞がれた。そしてあの舌で口の中が蹂躙されていく。
自由に動き回って、絡み付いて味わって、
人間の舌では出来ないような精巧な動きで俺の口内を余すところなく舐め取っていく。
イレイスの乱れた呼吸も感じる。焦点が合っていない目が俺を見つめる。
耳には恥ずかしいくらい大きなキスの音が入ってくる。
ようやくキスが終わる頃には、俺には抵抗する力はもうなかった。
顔に彼女の垂れ下がった舌から唾液がぼとぼと降ってくる。

「案外すぐおとなしくなったな。キスは久しぶりか?それとも初めてか?」
「そ、そんなことどうだって…」
「そうか、初めてか。ふふ、かわいいな…心配するな、私も初めてだから。一緒に…な?」

俺はされるがまま、下をイレイスに脱がされてしまった。悔しい事に俺の息子はキスだけで出来上がってしまっていた。
初めてにもかかわらず、男のそれを見てイレイスはうっとりとしていた。

「ああ、これがオスの…すごい…においだけでクラクラする…こんなに、おおきい…」
「あうっ!!」

おもむろに手で握られて、つい素直に反応してしまった。イレイスはにやけてこっちを見る。

「ふふ、これだけでそんなに感じるのか?…では私のとっておきでもっと感じさせてやるぞ…」

すると指が離れ、明らかに違うものに巻きつかれる。それはいろんな意味で最強の武器である、彼女の舌。
巻きついた舌は密着して息子を締め付け、裏筋をなぞる。それだけで死にそうだった。

「あはあぁっ…!やめろっ…」
「そんなに感じているくせにやめろもなにもないだろう?本番は今からだぞ?」

その途端、舌がゆっくりと上下運動を始めた。男が一人で自慰するときと同じ動き。
でもそれは、マッサージ器のように微妙に震えたり波打ったり締め付ける力を変えたりして責め立ててくる。
自分の手より何百倍も気持ちよくて、数往復しただけで白いものがこみ上げてきた。
「…っ!でるっ!!」

つい声に出してしまったのがいけなかった。
管を通っていた液体は、外から強烈な圧力を受けて、無理矢理押し戻されていった。
イレイスが舌で俺の息子を締め上げて、射精を防いだからだ。
絶頂の一歩手前で取り残された俺は中途半端な射精感に襲われて悶える。

「ふふっ、まだまだだぞ…?せっかくいつか役に立つと思ってキノコで練習してきた甲斐がないじゃないか…」

イレイスはペースを上げながら舌コキをつづける。途中で俺に限界が来ると締め付けるのも忘れない。
そのたび俺は中途半端な快感のせいで精液の代わりに涙がこぼれてくる。
ふと、イレイスの片手がスカートの中に伸びて動いているのが目に入った。向こうもかなり出来上がっているようだ。

そしてもう自分の手よりもはやいくらいの速度までガマンさせられた。息子はもう破裂寸前。
イレイスの息もかなりあがっていた。時々体もピクンと跳ねている。

「なぁ、もう出させて、くれぇ…」
「ああ、そろそろだな…もう私もガマンしきれない…んっ…!いくぞ…思う存分出せっ…」

ラストスパートとばかりに今までで最速の舌コキの快感が襲う。

「うっぐ、はあ、あああああっ!!」

とうとう俺の息子は爆発し、今までガマンしてきた分が全て吐き出される。
経験した事ないくらいの射精感。頭の中に火花が散る。
イレイスは凄い高さまで立ち上る精液をただうっとりと眺めて、全身で浴び続けていた。
かなりの時間、そこらじゅうに白いものを撒き散らして、ようやく射精が収まった。

「はあっ、はぁっ…」
「たくさん出したな…全身べとべとだぞ…あぁ、にがい…でも、キライじゃないな…」

そういいつつも全く嫌がってはいない。
そればかりかだらしなく笑って舌に付いた精液を口の中で味わっている。エロい、エロすぎる。

「お前、本当に初めてかよ…」
「ふふ、そうだぞ…こんなに乱れてしまったのは、お前のせいだ…ほら、もうこんなに濡れて…」
「うわ…」

イレイスは自分のスカートを捲し上げる。そこには綺麗な褐色の地肌にピンク色の蜜壷が愛液まみれでヒクヒクしていた。
その美しい花園とそこから発せられる甘ったるいにおいに思わず息を呑む。
そしてまだ上を向いている俺の息子の先端と、彼女の中心がぬちゅっと音を立てて触れ合う。

「さあ、いくぞ、ルイ…くあああっ…」
「うぐうううっ…!」

イレイスは迷いなく腰を落とし、俺は彼女に飲み込まれてしまった。すると真っ赤な血が結合している隙間から漏れる。

「ほら…本当に初めてだろう?おまえも、わたしもぉ…
 …あぁ、それにしても、こんなにあつくて、しびれるなんて…動くぞっ♪」
粘着音を立てながら、イレイスの腰が上下に動く。手でも舌でもない、女性器に包まれてしごかれる感触。
それに俺は素直に反応して、彼女の中でさらに怒張を膨らませてしまう。

「んぁう!なかで、ふくらんで…ふとい、あつい…」
「やばい、こんなの、こんなのぉっ!!」
「こんどはガマンする必要ないぞ…思う存分わたしのなかにだしていいぞ…」

顔は真っ赤で目は潤み、口からはだらんと舌が押さえつけている俺の体にまで垂れて、腰を沈めるたびに喘ぐ。
そんな様子のイレイスに俺もつられて、大自然の中嬌声で絶叫していた。そして…

「こうしたらもっと…気持ちよく…なれるぞ」
「お、おまえ、やめろぉ!!舐めるなぁっ!!」
「あぅん…おいしい…」

止めとばかりにイレイスはその舌を使って結合部分を舐めしゃぶり始めた。
膣に締め付けられて、舌になぞられて、腰が落とされるたび先端が彼女の一番奥に当たって、もう限界。

「…でる、でる、でるううぅ!!」
「はあ、くる…わたしのなかにくるうっ!!」

同時に絶頂。

ガクガク痙攣して、俺は彼女の奥に沸騰したような勢いの精子を満たしていく。
イレイスはそれを全て子宮で受け止めながら、どこかへ飛んでいた。
俺の放ったものが彼女のからだに打ち付けている。初めての感覚。
彼女に向けてそれを放つたび、幸せな感覚に満ちてゆく。

「ルイ…ルイ…」
「イレイ…ス…」

お互いの名前を呼び合って、そこで意識が途切れてしまった。
その後、目を覚ました頃にはもう夕刻で、お互い急いで再び服を着て向き合った。少し、気恥ずかしかった。

「…×2」
「…あの…×2」
「…そっちからどうぞ…×2」

セリフが被ってしまえば尚の事。イレイスの顔が真っ赤に。多分俺も…こんな風になってるのかな…
さんざん譲り合った挙句、イレイスから口火を切ることに。

「ルイ、お願いがあるんだ…ここを、一緒に、守ってほしい…
 おまえがいてくれればもっと安心してここを守れる。
 もちろんそっちの事情もあるだろう。だから無理にとは言わない。でももし良いなら…
 それに何より…私はおまえと、信じてる人と一緒に、居たい…」

赤い顔がさらに赤くなる。夕日に負けないくらい。無垢な告白、その返事の答えはもう出ていた。
俺は、この子にいろんなことを思い出させてもらった。
この子となら、ずっとできずにくすぶってた事が、できるかもしれない。

それに何より…

「守るのは、この場所だけじゃないぞ」
「え?」
「イレイスのことも、守るから。どんな事があっても、泣かせたりなんてしない。
 そのためにも、自分をまっすぐに生きるためにも、守るから。
 それに何より…俺も、おまえと一緒に居たいから…」

言い終わらないうちに、目の前にいたカメレオン少女は、俺の胸に最高の笑顔で泣きながら飛び込んできました…

「泣かせないって言ったろう、ルイの馬鹿…大好きだ…」

言葉も態度も強気だったけど、本当の気持ちは、俺にはじゅうぶん、伝わるのでした…
「…!!隊長!ルイが帰ってきました!!」
「みんなただいま~」
「よく無事だったな…ってその子は?」
「あぁ、その件なんだけど、俺この子と暮らすためにこっちに移住する事にしたわ」
「…はああああああぁ!?(×12くらい)」
「おまえらに紹介しようと思ってな、イレイスっていうんだ」
「そ、そうだったのか…おめでとうなルイ…話は急すぎるけど。
 それにしてもその子、確かにかわい」

ギンッ!!!

「ひぃっ!?(×同上)」
「おいおい、どうしたみんな腰抜かして?」
「いや、なんか迫力あるな、と思って…(今絶対睨まれたよな…)」
「変な奴らだな…じゃーな、これから色々忙しくなるから、ここも辞めるよ。元気でやれよ
 じゃあいこうか、イレイス(くるっ、スタスタ…)」
「…なんだったんだ?」

「してやったな、ルイ」
「ああ、これですっとしたよ。ありがとうイレイス。これからよろしくな!」
「ああ、よろしくな!」

振り向いた後、二人がいろんな意味でニヤニヤしていたのは言うまでもない…

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最終更新:2008年10月31日 17:49