僕――篝山夏慈(かがりやまかじ)がゴミを出し終え帰ろうと振り向くと、見慣れた女性が歩いてくる
のが見えた。
「あ、まいさん。おはようございます」

近所に住む、独夜(ひとりよ)まいさん。僕より一つ年上の高校3年生だ。
身長は高い方で、スタイルもよく、顔もかなり美人のうちに入るだろう。
少し色の薄いロングヘアーがよく似合う。
彼女は夏だというのに、茶色いふさふさのマフラーを巻き、半袖のTシャツから延びる腕のひじから
手首にかけて、同じく茶色くやわらかい毛に覆われている。
暑ければ脱げばいいという訳にはいかない。
彼女はヒトリガの虫人で、しかもまだ幼体、すなわち毛虫っ娘の段階なのだ。
腕や、マフラーのような毛は、身体が成熟するまで抜けることはない。

「お、ぉはょぅ…かじくん」
かなり小さい声で返事をするまいさん。
彼女は、その外見に似合わず極度の恥ずかしがり屋で、最初のうちは話しかけるだけで
固まっちゃったりして大変だった。

「今日も暑くなりそうですね」
「ぅん…毛皮が、大変」
「そうですよね~。熱中症とか気を付けてくださいね」
「ぅん…ありがと。かじくんも、き、気をつけてね」
「ありがとうございます。じゃ、失礼します」
「ぁ…ぅん、じゃあね」

赤面してうつむく彼女に手を振り、僕は家に帰った。このとき僕は気付かなかった。
まいさんが、じっと僕の後姿を見つめていたことに。

その夜。僕はふと、夜風に当たりたくなり、散歩に出掛けた。
夜だというのに蒸し暑い。心なしか天の川が陽炎のように揺らめいて見えた。
別段行く当てもなくふらつきまわり、まいさんの家の近くに差し掛かった時だった。
僕は息をのんだ。街灯の下に、一糸まとわぬ姿の絶世の美女が立っていたからだ。
背中には、蝶のような形の、しかしそれにしては少々毒々しい色彩の羽がたたまれている。
そして僕の見間違いでなければ、彼女は左右2本づつ、4本の腕を持っていた。
いずれも、失われたヴィーナスの腕がここに現れたと思わせるような、美しい腕だった。
あまりに美しく、妖しい姿。天使とも悪魔ともつかないその姿に、僕は見とれていた。

「――じく―ん」
ふいに、彼女がことばを発した。
「かじくん」
「!!」
彼女が僕を呼んだ?なぜ僕の名を?僕にはまったく覚えが…
「忘れちゃったの?私はまい。毛虫の、まい」
「ま、まい…さん?」
そんなバカな。僕の知っているまいさんは、もっと素朴で、悪く言うと地味な人だ。
でも、街灯に照らされた彼女の顔を見ると、雰囲気こそ違えど、それはまいさんに違いなかった。
「そう。まい。恥ずかしがり屋で、地味な、まい。」
「でも、その…姿…」
未だに僕は彼女の異形の裸体から目を離せずにいる。
「さえない毛虫でも、いつかは羽ばたく…夜の闇に向かって。
闇に揺らめく――」
まいさんがふいに4本の手を伸ばしてきて、
「篝火に向かって」
僕は押し倒された。
むちゅ…ぴちゃ…くちゅ……
脳髄まで溶けてしまいそうな激しい接吻。僕はショックに目を見開いた。
「ま、まいさん!!こ、ここ、路上!!人来ちゃ…!」
彼女は少し眉をひそめて言った。
「…今、このときは、周りなんか見ちゃ駄目。私だけを見ればいい…」
そういうと彼女は、背中の羽を広げ、ゆっくりと羽ばたかせ始めた。
辺りに、なにかキラキラした小さな光が舞い始めた。さながら粉雪のよう。
周囲がひときわ強い光に包まれ、僕は目を瞑った。
おそるおそる目を開けると、僕たちは、一面の炎の中にいた。

「う、うあああ!!!」
「落ち着いて。動かないで。」
「お、落ち着いてって言われても…」
驚きのあまり悲鳴を上げたが、彼女の4本の腕で拘束され、さらに腰の上に乗られ動きを封じられる。
少しずつ状況が見えてきた。
僕たちは一番大きな炎の中心にいた。しかし、痛さも、熱さも、煙たさも感じない。
炎は、何の感触も残さず、ただ僕たちを撫で上げていく。
「これは…幻?」
まいさんは問いには答えず、再び僕に口付けてきた。
「ん、んむっ…ちゅぱ…」
「…まいさ…や、やめ…」
まいさんが僕のズボンを下ろしはじめたので止めようとする。
しかし、まいさんの唾液を飲まされるたび、力が抜け、体の火照りが強くなっていく。
やがて、僕の思考能力は完全に奪われてしまった。
「…はぁ…はぁ」
まいさんは、愛液でドロドロになった秘唇を自ら大きく広げ、蠢く肉穴に僕のモノを当てがっている。

ぢゅぷっ

卑猥な音をたて、天を向いた僕のモノは真っ直ぐまいさんに飲み込まれていった。
「!!!!!!」
彼女の肉穴は、女性経験のない僕にはあまりに残酷な品だった。
気を抜くとすぐに出してしまいそうで、必死で我慢する。
「…やっと…」
絞り出すように、まいさんが語りだした。
「…やっと、ひとつに…はぁ…なれた」
「…?」
「地味で…引っ込み思案で…友達もいなかった…ずっと独りで…独りにも慣れて…」
「…」
その間も、彼女の膣内は僕のモノを締め付けてくる。正直つらい。
「でも、かじくんは、そんな私に…話しかけてくれた。おはようって。
恥ずかしがりも、無理すること無いって…言ってくれた…」
「…」
「嬉しかった…暖かかった。ずっと忘れてたから…」
「あなたは暗闇の中の…篝火だった…」
「まいさん…」
「あなたが私の気持ちに気付くのを待ってた。ずっと。でもそんなの終り。
今の私には羽がある。闇夜を飛ぶ羽が。」
「もう待ってなんかいられない。私の全てが、あなたを求めてしまうから。
ねえ…あなたの炎で…私を…」
まいさんは上体を倒し、
「焦がして」
再び僕に口付けた。
それから先のことはよく覚えていない。
まいさんは何かに取りつかれたように僕を求めてきた。
焼けるように熱い柔肉の感触と、脳を揺さぶるような彼女の喘ぎ声だけが、生々しくよみがえってくる。
何度も絶頂し、何度も口付けをした。理性などどこにも残っていなかった。
そして今、自分のベッドの中で、裸で目を覚ましたのだ。 
あれは夢だったのか?
その考えはすぐに消えた。隣には、昨夜の妖艶さなど影も見せない、あどけない寝顔があった。
よく見ると、ベッド一面に、鱗粉と思しき粉が落ちている。
帰って来てからまた絞られたのか、あるいは…

…!!

あるいは…
僕はこの部屋から出てなどいないのか?
僕は幻の中を彷徨い、幻を見ながら犯されたのか?
そのとき、僕はもう彼女から逃げられないということを悟った。
そしてそれも悪くないと思うあたり、すでに心も捕らえられ始めているようだ。