「お帰りなさい。光喜さん、お待ちしてました」
「あれ? 獅子沢さんか……どうしたんだ? 今日は料理を教える日じゃないぞ?」

ある日、買い物から帰り、玄関のドアを開けると其処に獅子沢さんが立っていた。
ああ、それくらいなら別に特筆するべき事じゃない、
さっき自分で言った通り、獅子沢さんはたまに俺から料理を教えてもらいに、家に上がっている事も有るからな。
で……問題は、何故か獅子沢さんの背中にとって付けたような鳥の翼(多分作り物?)があるって事だ。
コレは……新手のコスプレなのだろうか? それとも怪しい宗教にハマってしまったのか?
まあ、どっちにしろ、どう言う訳か聞く事にするとしよう。

「獅子沢さん、不躾で悪いがその背中の翼はなんだ? 流行先取りのファッションか?」
「あ、いえ、違いますよ、光喜さん。 コレはスフィンクスです」
「は? スフィン…クス?」

――スフィンクス――
エジプトのギザのピラミッドの前でデンと伏せをしている石像、
もしくはギリシャ神話か何かで謎掛けをしてくる逸話で有名な、
人頭に背に翼の生えた獅子の体というある意味ポピュラーな幻獣。雄と雌が存在する。
ちなみに、ギリシャ神話に登場するものは謎掛けを解かれると何故か自殺する一面があり。
そして、ピラミッド前のスフィンクスの鼻が潰れているのは、昔の貴族が面白半分に銃の的にした為だったりする。

などと、頭の中で俺が知っているスフィンクスの知識を反芻(はんすう)して見たが、
獅子沢さんのコスプレの理由が分かる筈も無く。少々困惑するしかなかった。

「あ、説明しますけど。私はライオンの獣人ですよね?
そして、スフィンクスはライオンの身体の背中に翼がついてるじゃないですか。
それで、ライオンの獣人の私の背中に翼をつけてスフィンクスって訳で」
「ああ、そうか……」

俺の様子に理解出来ていないと察したのか、
説明を付け加えつつ、その場でくるりと回り背の翼を見せる獅子沢さん。
成る程、だからスフィンクスって訳か……で、だから如何した?

「今の獅子沢さんがスフィンクスだってのは分かった。
でだ、そろそろ玄関からどいてくれないかな? さっさと明日の弁当を作らないと行けないんだが……」
「あ、だめですよ、光喜さん。なぞなぞに答えてくれないとここはお通しできませんよ?」
「はぁ?」

そのまま獅子沢さんの横を抜けて通ろうとした所で、
訳の分からない理由で止められ、俺は思わず首を傾げる。


「ですから、今の私はスフィンクスです。で、スフィンクスは通り掛る人になぞなぞを掛けるんですよ。
それで、光喜さんがここを通ろうとするなら、スフィンクスである私のなぞなぞを答えて欲しいなって」
「ああ、そうか……で、もし、答えなかったり、なぞなぞの答えが間違っていたら……どうなるんだ?」
「そりゃあ、もちろん! がおーって光喜さんを食べちゃいます」

と、尻尾をご機嫌な感じにゆらゆらと振り上げて言う獅子沢さん。

――ははぁん、なる程。
獅子沢さんはギリシャ神話のスフィンクスの逸話に掛けて、遠まわしに俺を(性的に)襲おうってハラだな?
先ほどくるりと回って見せた時、パンツを履いてなかったのか僅かに見えた事からそれは確実だろう。

だがしかぁし! 俺はなぞなぞに掛けちゃ右に出るものはいないと自負しているんだ!
残念だが獅子沢さん、自殺しろとは言わないが諦めて帰る事だな?

「じゃあ、そのなぞなぞとやらを俺に言ってくれ。もし、間違えたり答えられなかったら俺を好きにして良いが。
その代わり、正解を答えたら素直にここを通してくれよ?」
「はい! 私は嘘は言いませんよ―! じゃあ、早速言いますよ?」

はてさて、一体どんななぞなぞを出して来るんだ?
朝4本昼2本夜3本のなぞなぞだったら、その場でせせら笑いながら答えてやろうやろう。

「では問題です――ジハイドロジェン・モノオキサイド、略称DHMOと呼ばれる化学物質は一体なんでしょう?」
「……は?」

獅子沢さんが発した聞き覚えの無い言葉に、俺の脳内は一瞬混乱した。
物置き…サイド? なんじゃそりゃ? 聞いた事無いぞ?
し、仕方ない、ここはヒントを聞くとしよう。

「え、えっと……ヒントをお願いします」
「仕方ありませんねー。じゃあ、ヒントです。
一つ、液体状のDHMOを吸引すると呼吸困難の症状を引き起こします。
二つ、地形、岩盤などの侵食を引き起こします。
三つ、電気事故の原因となり、自動車のブレーキの効果を低下させます。
四つ、末期がん患者の悪性腫瘍から検出されます。
五つ、防虫剤の散布に用いられる。洗浄した後もDHMOは残留し、産物に悪影響を与えます。
六つ、様々な食品に含まれており、重篤な病気の原因となります。
と、この六つ以外にもヒントがありますが、これ以上は言えません」
「…………」

しまった、ヒントを聞いた所為で余計に訳が分からなくなってしまった。
……これは分からん。 聞く限りかなり危険そう物質だが……一体なんなんだその化学物質は?

「フッフッフ、光喜さん、分かりましたか?」

困惑する俺に向けて、にやりと笑みを浮かべる獅子沢さん。
慌てるな慌てるな慌てるな光喜、これは罠だ罠だ罠だ慌てるな慌てるな慌てるな慌てるな……

俺は必死に頭の中で冷静になろうとするも、答えは思い当らず、時間だけが無常に過ぎて行く。
そして―――


「あと残り3秒! さーん、にー、いーち、はい、答えてください!」
「ぐっ……分からん……」
「はい、ぶっぶー! 正解は水でしたー」
「なっ……水ぅ!?」

余りにも意外な答えに、思わず素っ頓狂な声を上げる俺。

「はい、DHMOは日本語で一酸化二水素。つまりは水なんですよ。
分からなかったですよね? 私も最初聞いた時は全然でした。
それにしても言い方一つで、ただの水が最悪の毒性物質の様に聞こえるとは、これこそ言葉のマジックです!」

と、得意げにえっへんと胸を張る獅子沢さん。
くそう、やられた……確かに、よく考えてみればヒントの通りじゃないか……!
しかし、虎姐の次に考え無しな獅子沢さんが、何故このような引っ掛けが出来るんだ?
つか、『最初聞いた時は』と言うって事は、ひょっとすると誰かの受け売り……?

「――さて、と、光喜さん。
なぞなぞに答えられなかった場合、どうなるか分かってますよね?」

一人考えていた矢先。背の翼を動かせながら獅子沢さんが言う。
うん、中々手の込んだコスプレなんだな……って出来に感心しているより、これは早く逃げるべきか?

「ああそうだった、卵を買い忘れていたやー……って、獅子沢さん、離してくれない?」
「 駄 目 で す ♪」

しかし、それを獅子沢さんは見透かしたのか、逃げようとする俺の腕をがっしりと掴みにっこりと笑顔を浮かべる
――その目は、既に情欲に飢えた獣の物だった。
びりびりびり

「ふっふっふー、光喜さんとは久しぶりですからね、私、頑張りますよー!」
「……やっぱりこうなるんだよな……」

やたらとやる気マンマンな獅子沢さんに部屋の中ヘ引き摺りこまれるなり、そのまま押し倒され。
俺は服を引き裂かれながらも何処か諦めきった感じで呟きを漏らした。
ああ……また新しい服を買わないと……。

「んじゅ、ぴちゅ……光喜ひゃんの、おいひ……」
「くっ……」

69の体勢になった獅子沢さんの、猫科獣人特有のざらざらとした舌が俺の息子の全体を這い回る
唾液をヌトヌトと塗り付けたり、鈴口をほじり先走りを舐め取ったり、竿を万面無く舐め回したり、
亀頭全体を撫で回したり、口に咥え込んでリズミカルに吸ったり、袋を優しく揉み解したり……。
その責めに加えて、俺の鼻先に押しつけられた獅子沢さんの秘所の匂いと、溢れ出る愛液の味に、
俺の息子が真っ赤になって怒張するのは、当然の事だった。

「ふふ、光喜さんのがびくんびくんって震えてます……美味しそう」

怒張した息子を蕩けた眼差しで見つめ、上気した女の笑みを浮かべる獅子沢さん。
それにしても、虎姐といい、今の獅子沢さんといい、なんでこの時ばかりはひたすら妖艶で魅力的になるのだろうか?
……これも、獣人の本能の為せる技、なのだろうか?

「んじゃ、私ももう我慢の限界ですし、早速頂きます………んっ!」

とか考えている内に、獅子沢さんは体勢を変え、俺の胸に両手を置くと息子を秘所へ宛がうと一気に腰を下ろす。

「をうっ!?」
「んっ、光喜さん……気持ち…良い…ぁん」

息子から感じる生暖かい淫肉を掻き分けてゆく感触、
そして息子が全部納まりきると同時に、逃さないとばかりに肉壁がぎゅっと熱く包み込む!
くぅ、虎姐のは全体を優しく包む感じなのに、獅子沢さんは性格とは違って、ちょっとキツイ……っ!

「光喜さんのが……私の中でビクビク震えてます、光喜さんも気持ち良いんですね?」

胎内の息子を感じながら、俺の耳元へ囁く様に問い掛ける獅子沢さん。だが、俺はなにも答えられない。
それも当然だ、ただいま俺は押し寄せる快感を精一杯我慢している真っ最中なんだ。答えられる訳が無い。

「んじゃ、動きますよ……んっ、あっ! くっ、ひゃん」

ぬち…ぬち…ぬちぬちぬちぬちぬち

そして、獅子沢さんは俺の胸に置いた両手と足を支えにして腰を上げて、息子が脱出を果たす寸前で沈める。
最初ゆっくりだった動きは次第に速さを増し、数往復重ねる頃にはテンポ良い動きになっていた。
無論、その動きに併せて息子を包む肉壁がうねり、揉み上げ、責め弄って行く!

「うっ、くぉっ!」
「あっ、ひゃん、光喜さんっ、激し…すぎっ!」

ずちゅずちゅずちゅずちゅずちゅ

押し寄せるその快感に、俺は無意識の内に腰を突き上げ、獅子沢さんを昇り詰めさせる。
それに気を良くしたのか、獅子沢さんは腰の動きをより早めて快感を与え、また快感を求めて行く。
気がつけば、淫猥な水音と共に結合部から愛液が溢れ出し、床の絨毯をヌトヌトに汚していた。
ああ……後でクリーニングかな、これ……?

「あ、ひゃ、い、いっちゃう、光喜さんのでいっちゃう! いっちゃうよ!」
「ちょ、もう少しゆっくり……うあっ!」

俺が絨毯の状況に嘆く間も無く、
絶頂の影を感じ始めた獅子沢さんが、尻尾を揺らせながら腰の動きに捻りを加えて、激しく腰を上下させる。
それによって勢いを増した快感の波に俺は必至に我慢するも、息子を責め弄る肉壁はそれを許してはくれず、
徐々に限界まで昇り詰めさせられてゆく!

「ひっ、ぐぅぅうぅぅぅぅぅぅっ!!」
「うっ、あぁぁっっ!!」

獅子沢さんが腰を強く打ち下ろすと同時に獅子が唸る様な声を上げて絶頂し、肉壁が一際強く締め付ける。
それが引き金となり、俺の快感に対する最終防衛線はあっさりと瓦解、
そのまま絶頂に達すると、獅子沢さんの胎内へ精の滾りを勢い良く解き放ってしまう。

「いっぱい、いっぱい光喜さんのが流れこんで来ます……ああ、これで孕めないのが惜しいですね……」

中へ注ぎ込まれる精の感触に、獅子沢さんは腰を震わせながら感慨深そうに呟きを漏らす。
対する俺は射精による脱力感の為、何も言えず喘ぐ様に息をするしか出来ないでいた。

ちなみに、虎姐や獅子沢さんなどの未成年の獣人に対しては、避妊剤の毎朝の投与が義務付けられているらしい。
それも当然かと俺は思う。……何かの拍子で発情する度に妊娠されては、ある意味堪ったもんじゃないだろうし。

「ふう、ちょっと張り切り過ぎたので少し休みますね……」

言って、獅子沢さんは俺の身体から降り、横でごろりと寝転がる。
どうやら、獅子沢さんは虎姐とは違ってインターバルを取ってくれる様だ。
やれやれ……と言う事は明日に響く事はなさそうかな?

とか、俺が安心した矢先。

ガチャリ

「何か変な臭いがすると思ったら……丁度やっていた所だったのか!」
「あ、先輩、今終わったばかりですよ……先輩も如何です?」
「…………」

をいをい、なんでこんな時に虎姐が来るんだよ! 
ああくそ、逃げ出そうにも身体が言う事を聞かない!
つか獅子沢さん、あっさりと譲らないでくれっ!!

「んじゃ、お言葉に甘えてあたしも混ぜてもらおうかな!」
「いや、ちょ、ま、い、イヤァァァァァァァァァァッ!!」

そして俺が止める間も無く、好色な笑みを浮かべた虎姐に飛び掛られ………
かくて、俺の運命は1日中犯される事が決定したのだった。


              * * *

「あれ? 光喜、お前にしてはコンビニ弁当なんて珍しいじゃないか……如何したんだ?」
「どうしたもこうしたも、虎姐と獅子沢さんに1日中付き合わされてな……弁当を作る暇が無かったんだよ」
「ごめん、光喜……ちょっとやり過ぎた……」
「すみません……光喜さん」
「はは、なる程。そりゃ大変だったな……ごくろーさん」

翌日、コンビニで買ったシャケ弁当を食べている所をヒデに珍しがられ、俺は不機嫌そうに応える。
その横で虎姐と獅子沢さんが何処か申し訳無さげに縮こまりつつ、オニギリを齧っていた。

「ったく、DHMOとやらで酷い目に合ったよ……」
「へぇ。お前もそれ知ってるんだ、意外だなぁ」
「知ってて悪いかよ……? つか、『意外だなぁ』ってなんだよ。その言い片腹立つぞ?」
「ハッハ、悪りぃ悪りぃ、いやちょっと最近な、俺もその、水の別の読み方、DHMOの事を知ったばかりでな。
それをまさか偏屈なお前も知ってるとは思ってなかったんだよ、すまんな」

ったく、腹が立つなぁ……偏屈だからって知らないと決めつけるなっての!
……まあ、昨日まで全然知らなかったのも事実だけどさ。

「あ、そういや、ちょっと前に獅子沢さんもDHMOに付いてやたらと詳しく聞いてきたなぁ……。
無論、獅子沢さんに良い所見せたいから、俺が事細かに教えてやったんだけどな?」

ぴくっ

思い出した様に言ったヒデの言葉に、俺の眉が思わずピクリと動いた。

「へぇ……ちょっと前って、何時の話だ?」
「ん? そうだな、一昨日かそれくらいだったかな? で、光喜、それが如何したんだ?]

俺の静かな声の問い掛けに、何ときなしに答えるヒデ。

「そうかそうか……ふーん」
「な、何だよ、妙に頷いて……」

俺の態度に不気味がるも、彼は気付かなかった。
――俺の身体から立ち昇り始めた怒りのオーラを。
そして同時に、俺の隣にいた虎姐と獅子沢さんが身体をびくりと震わせ、その場からそそくさと退避した事を。

「アレは……うぉのれの受け売りかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
「はべらびゃぁぁぁぁぁぁっっ!?!?」

――――そして
俺の怒りのドロップキックが、ヒデの顔面にクリーンヒットするのは程無くの事だった。

―――――――――――――――――了―――――――――――――――――――

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最終更新:2008年08月06日 19:09