蒼い空、流れ行く白い雲、さんさんと輝く太陽、そして何処までも広がる海!

「うーみーは広いーなーおおきーいなー♪……海のぶぅぁかやろぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!」

おバカの様に歌った後、何処までも広がる水平線に向かって大声で罵声を上げる。
端からこの様子を見りゃ馬鹿かキチガイににしか見えないが、
生憎、その端から見る人間ですら、今は居ない。無論、叫ぶ意味も無いだろう。
だが、それでも俺、海原 通(うなばら とおる)は今、海に向かって叫びたかった。

そう、俺は今、絶賛遭難中だ。それも1人でだ。


            海に行く前に言っておくッ!
     おれは今、自然の脅威って奴をほんのちょっぴりだが体験した
   い…いや…体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが……


         ,.  -‐'""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|         あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|    『俺が小船に乗って海釣りをしていて、そろそろ帰ろうかと思ったら
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ          いつのまにか知らない場所に流されてた』
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト■■■■  , タ人        な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ        おれも何が起きたのかわからなかった…
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r ー---ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \    錨の下ろし忘れだとか離岸流だとか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ    そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...      イ  もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ

 (↑AAは本人の物とは全く異なります)


と、何かどっかで聞いたような言い方だったと思うが、これで大体の事情はわかるだろう。
まあ、とにかく久しぶりにストレス発散のつもりで、趣味である海釣りに出たらこんな目に遭った訳だ。

じゃあさっさと戻りゃあ良いじゃないか? と思う方も居ると思うが、それが出来ればこんな苦労はしない。

……さっきから船のエンジンを動かそうと試みてはいるのだが、
このポンコツエンジンは燃料が十分あるにも関わらず、うんともすんとも言わないのだ。
やっぱりケチって中古品を買うんじゃなかった、安物買いの銭失いならぬ命失いでは笑い話にもならない。
おまけに、ついさっきオールを持って来なかった事に気付いたのは更に笑えない事実だ!……俺のアホウ。

んで、助けを呼ぼうにもここから陸地までかなりの距離がある為。
俺が幾ら叫んだ所で、声は波の音に掻き消されて陸まで届く筈も無い。
しかも俺は海原 通の名が号泣する位の超カナヅチの為、
陸まで泳いでいこう物なら5mも泳がぬ内にボク、どザえもんだ。
無論、同居人の八美が助けに来る可能性も期待は出来ない。今頃、あいつはバイトに勤しんで居る事だろうし……。
つーか、蛸がたこ焼き屋のアルバイトするなっての。共食い以前の問題だろ!

と、そんなツッコミは後で本人にするとして。
更に悪い事に、ラジオの電波はしっかり届くにも関わらず携帯の電波は圏外を表示している。
ええいっ、肝心な時に役に立たん携帯め! 後で他の会社に乗り換えてしまおうか?……助かったらの話だが。

さて、これからどうした物か。
取り敢えず、先ずは通りかかる船に助けを求めようと思っては居る。
この時期、俺と同じ釣り目的で小船を繰り出す人は多い、それはこの辺りにも来る可能性は高い。

のだが……さっきから幾ら待てども小船の一艘すら見えないのはどう言う事だ?
と、ふとつけっぱなしにしていたラジオへ耳を傾けて見ると……

『――今日九時過ぎ、大凪海岸沖合いで鮫らしき大きな影を見たと言う漁師からの通報があり
大凪町観光協会は安全が確認できるまで、大凪海岸全域を遊泳禁止にすると発表しました。
更に、観光協会はその鮫は凶暴なホオジロザメの可能性があると警告し、
大凪海岸付近で操業を行っている漁船にも注意を呼びかけ……』

えっと……大凪海岸って、この辺りなんですけど……?
なるほど、だからさっきから船がここを通りかからない訳か、おーけー、良く分かったよ。
ラジオよ、有難う。俺の疑問を晴らしてくれて……良かった良かっ――

「ってちっとも良くねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!」

頭を抱えて誰に向けるまでも無い叫びを上げる。

ううむ、これは余りにもヤヴァ過ぎる、今の俺は遭難あーんど鮫の恐怖に対面して居る事になる
ヘタすれば鮫に食われるor真夏の太陽によって人間の干物orボク、ドザえもんになる可能性が高いのだ。

「ええぃ、このポンコツエンジンさっさと動け動け動け!」

ベしっ! べしっ!

その可能性のどちらもお断りな俺は、
必死な思いで、動かない船のエンジンへ壊れたテレビを叩いて直す母ちゃん張りの斜め四十五度の喝を入れる、
すると……

ぱすんぱすんぱすん………ボボボボボボ………

『ちっ、めんどくせーなー』と言わんばかりにエンジンが再び始動し始め、
それに合わせて俺の乗っている小船がゆっくりと前進し始める。
やれやれ……これで助かった……と、俺が安堵した矢先

ボボボボボ………バ ス ン 

エンジンから妙な破裂音、そして不完全燃焼の油独特の異臭と共にエンジンの所々から黒煙を上げ、
そのままエンジンはご臨終となったのか、それっきり何しようともうんともスンとも動かなくなる。
当然、動力を失った小船も直ぐに止まり、潮流の所為か元いた場所まで戻されてしまう。

……うそーん! そ、そんなのアリかー!?

これでは元の木阿弥、いや、それ所か自力での帰還も不可能となってしまった。

いや、まだ諦めるな俺! 鮫退治に出る漁船が近くを通る可能性もあるじゃないか! 多分だけど。
だから鮫が現れる前に通りかかってくれ、勇敢な漁師さん!




―――だが、現実はそう甘くなかった……


助けを待ち始めて10分程経った頃だろうか、俺の視界の端に嫌な物が見えた。
それは海面から突き出た三角形状の平べったい物体、明らかにそれは大きな海洋生物の持つ背鰭、
その下の海面に僅かに見える影から、ざっと見て大きさは2メートル位はあるだろう、
恐らく、それはさっきラジオで言っていた鮫と思わしき生物と見て間違い無い。

しかも、その背鰭の主はこちらに気付いたらしく、
まるで獲物を狙い定めるかのように、俺の乗る小船の周囲をぐるぐると周回し始めた。

――ハイ、鮫の餌決定! 俺オワタ\(^o^)/

って待て待て待て! まだ諦めるな俺!
たしか、少し前に見た何かのTV番組で見聞きした事だが
鮫は鼻先にある何かの器官で微弱な電流を感知する事によって、海中の相手の動きをキャッチしている為
近付いてくる鮫の鼻先に向けて乾電池を放り投げると、場合によっては乾電池の電流に驚いて鮫が逃げ出すらしい

だから、さっきからうろついている鮫(?)の鼻先へ乾電池を放り投げる事で追い払う事も出来るかも知れないのだ!

だが、俺が今持っている乾電池といえば、ラジオの中にある単三電池が一本だけ、
と言う事はチャンスは一回コッキリという事になる…だが、やってみる価値はある!
よし、覚悟完了! 当方に迎撃の用意あり!

「どっか行けこの鮫やろぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!」

俺は意を決し、ラジオから取り出した乾電池を手にすると
精一杯の掛け声と共に、海中にいる鮫?の鼻先に向けて渾身の力でブン投げる。

ひゅーん……ぽちゃぷん

渾身の力を込めた割に勢い無く飛んでいった乾電池は、見事、鮫(?)の鼻先の海面へと落ちる。
そして、それに驚いたのか鮫(?)は一瞬動きを止めた――が!

「よっしゃ!―――……ってあれ?」

俺がガッツポーズを取る間も無く、俺の予想とは真逆に鮫(?)はやおらこっちに向けて猛進し始めた。
そして一瞬、鮫は俺の乗る小船の手前で潜行すると―――水飛沫を上げてこちらへ大きくジャンプ!

―――その落下位置は丁度、俺の乗る小船の辺りだったり

「ああ……最近の鮫って芸達者なn――――」

ざ ぽ ぱ ー ん !

そのまま、俺は間の抜けた感想を言い切らぬ内に、鮫?のフライングボディアタックの直撃を食らい。
水面に叩き付けられる音と衝撃を感じながら、意識を彼方へ旅立たせた―――


                ※  ※  ※


―――あれからどれくらい経ったのだろうか?
さっきから頬を何かがぺちぺちと叩いている様な気がする。
おまけに耳元で誰かが「起きてー起きてー」と言っている様な気もする。

多分、これは気の所為だ。
俺は海に落ちて気を失い、そのまま鮫に食われたかドザえもんになったかのどちらかの末路を辿った筈だ。
その際の痛みや苦しみを感じなかったのは幸いだ、このまま静かにあの世に旅立つとしよう。
八美、済まんな。どうやらお前さんの恩返しは中途半端に終わってしまいそうだ。

俺はそう思いつつ、しつこく起こそうとする誰かを手で振り払い、再び意識を闇に沈めようとして――

「む~……どうしても起きないなら! 必殺! カリーシュ・ダイブッ!」

ド ガ ン

「―――ぐぇぇっ!?」

憮然とした声と共に、何者かの全体重を掛けたボディプレスによって強制的に意識を覚醒させられる。
気の所為か、一瞬だけ波の様なエフェクトが見えた様な気もする。

「―――い…いきなり何しやがるこんちくしょう!」
「あ、起きた?」
「人にボディプレス掛けておいて『あ、起きた?』じゃねえだろ!……ってお前誰だ?」

暫く身体を仰け反らせた後、俺はがばっと上半身を起こすと、ボディプレスをした相手に抗議の声を上げた所で
――そのボディプレスをした相手が何者か分からず、つい聞いてしまった。

俺の身体に乗っかっていたのは
年の頃は高校生から中学生くらいと言った所か、大まかに見て身長は俺より低い位の少女。
彼女は外国人なのだろうか、白い肌に、胸に掛かる位の長さの端を束ねた金髪、
クリっとした大きめな鳶色の瞳とそしてツンと尖がった鼻の、整ってはいるがやや童顔っぽいものを感じさせる小顔。
見た目の感じとしては、何処か活発そうな美少女と言った印象。

んで、その格好が……どー言う訳かどっかの小中学生が着るようなスクール水着だったり、
しかも彼女の大きめな胸の辺りに、ひらがなで「れいみー」と書かれた名札が付いていたりする。
なにこの一部の嗜好の人を狙ったかのような格好……。

「ボクの名はここにかいてる通りレイミーって言うんだ―、よろしくー♪」

俺の問い掛けに対して少女、もといレイミーは身体を起こすと
自分の胸についた名札を指差し自己紹介してにへらと笑顔を浮べる。
うん、結構可愛い笑顔だ……って、見蕩れている場合じゃなくて。

「……あ、ああ、うん。お前がレイミーって名だと言う事は分かった
で、ここは何処だ? そして何で俺はここに居る?」

取り敢えず俺は、敢えてレイミーの格好の事は突っ込まずに置き、
今の状況と、俺がどうしてこうなったかをレイミーから聞く事にする。

「んーと、ここはボクの秘密の隠れ家ー。あ、それで何でお兄さんがここにいるかと言うとねー?
なんだかお兄さんが暇そうだったから、ボクがちょっと和ませようとあげようとしたんだけどね、
つい張りきり過ぎちゃって、うっかりお兄さんを溺れさせちゃったから、
仕方ないからボクの隠れ家へ連れていったんだー」

なるほど、秘密の隠れ家、か……
改めて周囲を見渡すと、ここは洞窟のようなだだっ広い空間で、その床の一部に水面が覗いており、
その水面からどう言う仕組みなのかは分からないが穏やかな光が差しこみ、神秘的に部屋を照らしだしている。
確かにこれは秘密の隠れ家的な感じがするが、水面以外に出入り口と言える物が一切無いのが少し気になる。
……って待てや、

「なあ、『うっかり溺れさせちゃった』って如何言う事かな? お嬢ちゃん?」
「お、お兄さん、な、なんか顔がコワいよ!?」

にっこりと、とても良い笑顔を浮べながら、俺は肝心な事をレイミーに問い詰める。
その俺の身体から滲み出る不穏な空気を感じ取ったのか、レイミーは顔色を変えて

「あ、あのね、怒らないで聞いてくれると嬉しいんだけどね?」
「ああ、なんだよ。怒らないから言えよ」

「えっと、じゃあ言うね?
あの時、お兄さんを喜ばせる為にちょっとボクの得意技を見せようとしたんだけど……。
そしたらちょっぴし目測を誤って……うっかりお兄さんへ体当たりしちゃったんだー」
「ほうほう、なるほど……って、え? 何だと?」

……体当たり?
まあ、先ほどの体当たりは結構強烈だったが
それでも俺の意識を刈り取るほどの威力は無かったと思うのだが………?

「ちょいと待て、確かに俺は、鮫のような生き物に体当たりされて気絶した憶えはある。
だが、間違ってもスク水を着た少女に体当たりを食らった憶えなんぞ、
さっきの俺を起こす時を除いて、ないと思うのだが?」

俺の言った疑問に、レイミーは頬を膨らませて口先を尖らせると

「ボク、鮫じゃ無いもーん! ボクはイルカなのー!」
「……はい?」
「だーかーらー!ボクは鮫じゃなくてイルカなの! ほら、これを見れば分かるでしょ!」

呆然とした俺の様子に、言った事が理解出来ていないとレイミーは思ったらしく
河豚の様にぶーと頬を膨らませて憤慨しながら自分の下半身を、
ポヘンだかペヒンだか言う気の抜けた音と煙と共に
尾鰭のある河豚ならぬ海豚、もといイルカの下半身へと変えて見せる。

( ゚д゚)

( ゚д゚ )

ああ、この時、まさしく俺は上の図のような表情を浮べていた事だろう。
それも当然だ、想像状の産物とばかり思っていた人魚を目の当たりにしたら、そうなるのも無理も無い。


「ねえ、分かった? 分かってくれたよね?」
「あ、ああ……わかった、君がイルカだという事は分かった、うん」
「うんうん、分かってくれたんだったらそれで良いよ」

やや呆然とした俺の返答に、再び下半身を人間の物に変えたレイミーは満足げに頷きながら胸をそらす。
なるほどなー、レイミーは鮫じゃなくてイルカさんだったんだ―。納得。
まあ、蛸が恩返しの為に人間の姿になってくるご時世だ、あっても不思議ではないだろうなー?

……って待て、本来の話がまだ終わっていない!

「と、いう事はだ……小船に乗ってた俺に思いっきりブチかましをかけて、
海へ見事に叩き落としてくれたのはお前だと言う事だな?」
「あ、え? う、うん……ご、ゴメンね?」
「ゴメンで済んだら警察も海上保安庁も保険会社も要らんわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「うあーっ、やっぱし怒った―!?」

うん、普通は怒る。いきなり海に叩き落されて、死に掛けるような目に遭わされて怒らない方がおかしい。
しかもその時に乗っていた小船と釣り道具1式も駄目にされたのだから尚更だ!
そんな俺の様子に危険を感じ取ったレイミーは直ぐさま脱兎の如く逃げ出す。

「ゴルァ! 待て逃げるなコンガキャー!」
「あわわわっ、こうなったら36計逃げるが易しっ、とぅ!」

ざんぶ!

そのまま隠れ家の中を2~3周程追い掛け回した後
おもむろにレイミーが下半身をイルカの物に変え、隠れ家の端にある水面へと飛びこむ。

―――やはり、この水面は海へと繋がっている出入り口だったか! だが、逃すか!

「逃げ切れると思うなっ! とぅ!」

ざぶん!

そして、怒りで頭に血が上った俺も、その勢いのままレイミーに続けて水面に飛びこみ――

―――間抜けな事に、今更になって自分が超カナヅチだったと言う事を思い出した。

『がぼっ!?ごぼぼっ!?!?』

当然の結果と言うべきか、俺の身体は見る見るうちに海中へと沈み。
パニックになった俺は思わず口を開けてしまい、盛大に泡を噴出すと同時に口腔へ大量の海水の侵入を許してしまう。
忽ち口腔内一杯に海水の苦しょっぱい味が広がり、俺のパニックをより助長して行く!

―――死ぬっ!このままでは溺れて死んでしまう!!

間近に迫った死の恐怖を感じ取った俺は、海中から脱出すべく手足をばたつかせるも、
周囲の海水を掻き回すだけで状況は何ら変わらず。それどころか俺の身体が余計に沈んで行く!
更に水圧の所為か、頭に締め付けるような痛みを感じ、それと同時に酸欠によって徐々に意識がぼやけてゆく。

自分でやらかした事の結果とは言え、なんて間抜けな死に様をするのだろうか…
ああ、そうだ、なんで俺の様に泳ぎがへたくそな人間の事をカナヅチと言うとな、
カナヅチを水の中にいれたら、金属製の重い頭を下にしてあっという間に沈んで行くだろ?
その様子を、泳ぎの下手な人間の溺れて沈んで行く様子と重ねて言った事が始まりなんだってさー? 
ハハ、まるで今の俺みたいだろ―?

とか、今際の際でくだらない解説をしつつ、水面に幻想的に揺らめく光を眺めていた、が―――

『んむっ!?』

―――唐突に、視界が何かに覆われ、
同時に何かが俺の身体を優しく抱き締める感触と共に、唇に暖かく柔らかい感触を感じる。
その柔らかい物が口腔内の海水を吸い出した後、今度は空気を口腔へ送り込んで行く。
気の所為か、その空気はとても良い香りを感じる。

―――たすかった

そう思いながら、目の前にある物を確認して見ると、それはレイミーの顔だった。
……と言う事は、今の俺の状況はレイミーに抱き締められた上に唇を奪われている状態!?

《落ちついて、お兄さん》

違う意味でパニックになりかけた俺の頭にレイミーの声が響く。
そう、鼓膜を介して声が聞こえているのではなく、頭に直接彼女の声が響き、聞こえて来るのだ。

《今、口移しでお兄さんへ空気を送ってる所》
「んぐぐ……?」
《え? 如何やって水の中で喋ってるかって?
私達イルカは、エコーロケーションって能力で水中でも会話出来るようになってるの、凄いでしょー?
と、そろそろボクも息が苦しくなってきたし、海面に上がるね》
「うぐぅ……」

言って、唇を離した彼女は俺を抱きかかえたまま海面に出る。

「ぷはっ、こ、ここは……?」
「んー、ここは隠れ家の入り口の辺りかな?」

海面に上がるなり、俺は肺一杯に深呼吸すると周囲を見まわし
俺を抱きかかえたまま立ち泳ぎするレイミーに問い掛ける。

その場所は俺が遭難した場所にほど近い海岸の、俺も何度か釣りをした事もある見なれた岩礁であって、
レイミーが言う隠れ家の入り口らしき物は今まで見なかったが……?

「あ、隠れ家は海面の下に隠れた洞窟だから、海中に潜らないと分からないようになってるんだよー」

俺の疑問の眼差しに気付いたのか、注釈を付け加えるレイミー。
なるほど、だからこその秘密の隠れ家って訳か。まあ、簡単に見つかる様じゃ隠れ家とは言わないからな……。

「でだ、そろそろ……俺を足の付くような浅い場所で放してくれないかな?」
「ほへ? なんで?」
「いや、その……」

不思議に俺を見つめるレイミーに、思わず俺は頬を赤く染めて視線を逸らす。
そう、俺を抱きかかえる彼女の大きな胸、それがさっきから俺の身体にふにふにと当たって柔らかい感触を伝えてくるのだ。
それに加え、さっきの口移しの事もあって、俺は急にこの状況がこっぱずかしく感じてきたのだ。

「ふふーん…そっか、わかった」

その俺の様子に何か気付いたのか、
ニマリと笑みを浮かべ納得した様に呟くレイミー。

「な、なんだよ、いきなり?」

その呟きの意味が分からず、戸惑う俺。
なんだか凄くヤな予感がする、だが、今の俺には逃げ場は存在しないっ!

「お兄さん、ボクとセックスしたいんでしょ?」
「…………」

絶句、もう絶句。いきなりの問題発言に俺は言葉を失った。
その俺の様子を、レイミーは肯定と見て取ったのか、にっこりと笑顔を浮かべ、

「良いよ、お兄さん。ボク、お兄さんに迷惑を掛けちゃったお詫びもしたかったし。
お兄さんがやりたいって言うんだったら協力してあげる」
「いや、あの……」
「ま、そんなに遠慮しないで。お兄さんのココもやりたいって言っているみたいだし」
「うひゃうっ!?」

トンデモな展開に戸惑いまくる俺の言葉を待たずに、彼女の右手が俺のズボンへ入り込み、
その柔らかくてぷにぷにとした暖かい掌が、既に怒張していた股間の息子を優しく握り込む。
股間の息子から走ったその感触に、俺は思わず上擦った声を上げた。

「ふふ、なんか先っぽからぬるぬるした物が出てきたよー? 気持ち良いのかな、お兄さん?」
「うあぁ……こ、こら……っ! や、止めぇ……」

俺の耳元へ語りかけながら、彼女のしなやかな指が俺の股間の息子を撫で上げ、扱き、断続的に快感を与えてくる。
それでも、俺はレイミーに止めるように言おうとするのだが、股間の息子から来る快感の所為で言葉にならない。
気が付けば、俺は無意識の内に彼女の背に手を回し、抱きついていた。

「我慢しなくても良いんだよ? 思いっきりボクの手を汚しちゃっても良いから」
「くぅっ……うっ……」

悪戯っぽい笑みを浮かべた彼女の言葉とともに、
俺の股間の息子を扱く手の動きが一段と速さと執拗さを増し、
息子全体を擦り上げる彼女の柔らかい掌の感触が俺を追い詰めて行く。
あ、ああ、腰に、熱いモノが込み上げて………!

「ほら、出しちゃえっ!」
「―――うっ、ああぁぁぁっっ!?」

そして、レイミーが股間の息子の亀頭をキュッと握り締めたと同時に俺は限界に達し、
脳天を貫く凄まじい快感と共に、ドクドクと息子から白濁を吐き出し、彼女の掌を汚していってしまう。
うあぁぁぁ……やっちまったぁぁぁ……

「うわっ、すっごく熱いよ、お兄さんの精液。
しかも凄い量、ボクの手があっという間にぬるぬるになっちゃうー」
「あぐあぁっ! うあっ…くぅっ!」

出している最中も尚、レイミーは乳絞りをするように股間の息子を扱き続け、より多くの精液を噴出させる。
射精直後の股間の息子を弄くられる凄まじい快感に、俺はただ悲鳴の様な声を漏らし身体を震わせるしか出来ない。



「ふふ、お兄さんの精液、ドロっとしてるね……しかもすっごい臭い、鼻がおかしくなりそう……」

そして、射精が終わった後、その余韻で陶然としている俺に見せ付けるように
レイミーは右手を自分の顔の前に差し出し、掌にべっとりと付いた海水混じりの精液の臭いを嗅いで、
俺に見せつけるかのようにピンク色の舌でニチャニチャと舐め取る。
その時に彼女が俺に見せた笑みは、今までの子供っぽさからは考えられない位に凄まじく妖艶に思えた。

「……さてと、ほら、お兄さん、ココを見て、そう、お腹の下の辺り」

言って、レイミーは僅かに身体を離し、水面の下の自分のお腹の辺りを指差す。

「ココ、よく見るとピンク色になってるでしょ……?
イルカの女の子はね、エッチな気分になるとココがピンク色になるんだよ。 知ってた?」
「…………」

言われた通りに指差した方に目を向けると、
エイミーのお腹、そう、人間で言えば骨盤のある辺りが水面から見ても分かるくらいにピンク色に綺麗に染まり。
その真中にあるスリットが僅かに左右に開き始め、中の陰唇が見えるのが確認する事が出来た。

恐らく、そのスリットが彼女のアソコ、なのだろうか……?
そう思った俺は思わずゴクリと喉を鳴らし、萎え始めていた股間の息子を奮い立たせてしまった。
……これぞ、男の悲しいサガと言う奴である。

「それじゃ、お兄さんのココもまた元気になった事だし。本番、始めちゃおうか」
「え? あ、いや、ちょ、おまっ」
「心配しなくても良いよ。ボクが全部やってあげるし、お兄さんは何もしなくても気持ち良くなれるから」

本番を始める、との言葉に慌てる俺へ、宥める様に言いながらレイミーは右手で俺のズボンのチャックを下ろし、
パンツのスリットから怒張した股間の息子を引っ張り出すと、俺の身体を抱き寄せて腰を密着させる。
その際、彼女のスリットから溢れ出た愛液なのだろうか、
海中なのにも関わらず俺は股間の息子にぬるりとした物を感じた。

無論、俺は今までに何度か逃げようと考えはしたものの。
足の付かない深い海にレイミーの浮力だけで浮いているこの状況で、カナヅチな俺がレイミーから離れれようものなら
その途端に俺は海中に沈んでしまうのが目に見えて分かり、逃亡は断念せざる得なかった。

……恐らく、レイミーもそれが分かっているからこそ、この足が付かない場所でやっているのだろう……
まあ、今更そうだと分かった所で、今の俺に逃げる手段なんて殆ど無く、最早覚悟を決めるしか他がないのだが。

とか、色々考えている俺を余所に、レイミーは無邪気に微笑みながら

「それじゃ、お兄さんのココをボクのアソコでグチュグチュしてあげる」

言って、身体を僅かに反らせつつ、
右手で股間の息子の先端をスリットの真中へ誘導させながら腰を押しつける。

「う……あっ……!?」

ヌプリと言う感触を股間の息子に感じる間も無く、俺の股間の息子は彼女の中へ抵抗無く挿りきり。
たちまち、とろとろとした濡れたスポンジの様な肉壁が股間の息子を包みこむのだが……
その感触はただ暖かいだけで、思ったほどの快感を感じなかった。

「ふふ……ここからが凄いんだよ。出したくなったら遠慮無く出して良いからね?」
「え?……」

あれ? こんな物なのかな? とか思っている俺の耳元へ。妖艶な笑みを浮かべたレイミーが囁きかける。
その言葉の意味が分からない俺が、レイミーの言う「凄い」って何の事かと首を傾げた矢先。

にゅぐにゅぐにゅぐにゅぐにゅぐにゅぐっ

「うわっ、な、何っ、う、うわうわっうわぁぁあっ!? あふぅあぁっっ!?」

俺の股間の息子を包み込んでいる肉壁が凄まじい勢いで収縮運動を始め始め、息子を弄び始めた!
肉壁がぎゅっと息子全体を締め付け、手コキの様に肉襞が前後に蠢き股間の息子の根元から先端まで揉みたてた後、
亀頭に熱い肉襞が纏わり付いてグネグネと舐り回し、
雁首や竿を包みこむ筋肉質な肉壁が締まったり緩まったりを繰り返しながら前後に動き、
そして内部から溢れ出る熱い愛液が蠢く肉壁によって股間の息子全体に塗りたくられ、ぬるぬるに汚されて行く。

「ううっ、くっ、あぁぁっっ!?]
「あっ、ん、駄目だよ、逃げちゃあ」

その凄まじい不意打ちに、危機感を覚えた俺は慌てて腰を引こうとする。
だが、それを察した彼女が両手でぎゅっと俺の身体を抱き締めると同時に
膣の入り口で股間の息子の根元を締め付け、股間の息子を引き抜けない様にする事で俺の逃亡を拒む。
それと共に肉襞が亀頭の辺りに纏わり付き、まるで亀頭を咀嚼するかの様にクチュクチュと揉みしだき始める
忽ちの内に腰の奥から熱い物が込み上げ、甘い痺れのような感覚が腰全体に広がって行く。
こ、これは……言葉の通り、いや、それ以上に……凄まじ過ぎる……っ!

「うぐっ、ぬっ、くおぉぉっっ!」

無論、俺は込み上げる物を必死に我慢をしようとはする物の、
まるでそれを嘲笑うかのように、息子に纏わり付いた筋肉質な肉壁と粘液にまみれた肉襞がグヌグヌと蠢き続ける。
それによって俺は限界に達し――

「うぁっ、うぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!」
「んん……っ! お兄さんの熱いのが、来たっ!」 

絶頂すると同時に悲鳴の様な声を上げ、背筋と両足をピンと伸ばしてレイミーにしがみ付く様に抱きつきながら、
俺は熱い放出感と共にレイミーの胎内を白濁で汚して行く!
その感触に、彼女が歓喜の声を上げ、それに呼応する様に淫肉が鈴口の辺りに吸いつき、
放出される精をポンプの様に吸い取り、奥へ奥へ飲み込んで行く。
そして更に竿に纏わり付いた肉襞が根元から先へゆっくりと締め上げて蠕動し、尿道に残った残滓を搾り出して行く。



「……いっぱい出したね。 お兄さん、ボクのアソコは気持ち良かった?]

やがて凄まじい快感を伴った長い射精が収まり、
インターパルをとる様に膣の蠕動運動が先程よりも穏やかになった後。
(それでも膣口は股間の息子の根元を締め付けて離さない)
快感の余韻で荒い息を漏らす俺へ、レイミーが問い掛けてくる。

「え。あ? う、うん……」
「ふっふー、ボクの中、凄かったでしょ? 
しかもこうやって…んっ…動かすともっとお兄さんも気持ち良くなれるし、ボクももっと気持ち良くなれるんだよ?」
「へ?……いやちょま、あっ、あぁぁぁぁっっ!?」

訳が分からないまま素直に答えた俺に、蕩けた目のレイミーは自慢げに言うと、軽く息を吸って身体に力を込める。
それと同時に再び膣が激しく蠢き始め、その上、まるで突き上げるような動作で淫肉が前後に激しく伸縮する事で、
股間の息子全体を肉壁で扱き、締め付け、揉み立て、愛液を塗りたくり、責めたてて行き、
その動きに合わせて奥の淫肉がポンプの様に亀頭へリズミカルに吸いつき、更なる快感を与えてくる!

「やめっ、うあぁっ、くぁっ! ぐぅぅぅぅっっ!!」
「んぁんっ、ボクもっ、気持ちいいよっ! もっと、気持ち良く…ひゃんっ!…なろう!」

断続的に襲いかかる快感に、俺は無意識の内に首を左右に振りながらよがり泣き、涙を零す。
しかし、レイミーはその様子を気にかける事無く、嬌声混じりに歓喜の声を上げながら俺に抱きつく腕の力を強めると、
水中を泳ぐ時の様に腰をゆさゆさと動かし、蠢く肉壁の動きの複雑さを激しさを助長する事で
俺に与える快感を増させると共に、レイミー自身も股間の息子から与えられる快感を増させて行く!

余りにも快感が凄まじ過ぎて……な、なんか、視界が霞んで見えてくる……っ!

「うぁ、うぁっ、うぁぁぁっ! い、いくっ、いってしまう!」
「んぁっ…お兄さん、イキそう? ボクもっ、イキそう。 ひぃん だから、お兄さんも一緒に、イっちゃおう!」

再び熱く込み上げてくる物を感じ始めた俺は、もう何も考えられぬままに腰を振りたくり、更なる快感を求める。
その動きに昇り詰められたのか、レイミーも嬌声を上げながらバチャバチャと水音がなる位に腰を激しく前後させ
股間の息子に纏わり付かせている淫肉の動きをより激しくさせる。
そして……

「うっ、ぐっ、あ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁっっ!!」
「ひ、あ、ひ、ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっん!」

レイミーの中へ深く突きこむと同時に俺は限界に達し、
怒涛のように押し寄せる快感で腰をブルブルと震わせながら奥へ熱い滾りを解き放ち、
それと同時に彼女も絶頂したのか、口から涎を垂らして悲鳴に近い嬌声を上げ
俺の身体をぎゅっと抱き締め、身体をビクビクと仰け反らせて気を失うと、そのまま俺もろとも沈み始めた………

――ああ、俺、死ぬかな?

                     ※  ※  ※

「お兄さん、お兄さん、起きてっ! 起きてっ!!」

誰かが、何かを叫びながら俺を揺り起こそうとしている……、
今は疲れてるんだ、もう少し寝かせて……。

「う~、こうなれば最後の手段、必殺、カリーシュ……」
「……っ! うわわわ起きた起きたっ! 起きたからそれは止めろ、本気でシヌる!」

不穏な動きに気付き、俺が慌てて飛び起きると、其処にはこれから俺に技を放とうとするレイミーの姿があった。
……って、俺、また溺れかけていたのか……?

「や、やっと起きたぁぁぁっ! 死んじゃったかと思ったぁぁぁぁっ!」
「うぉっ、おい!? 一体何がどうなってるんだ?」
「うぁぁぁぁぁぁぁん、やっと見つけた人間が ヒック、ボクの所為で、グス、死なれたら如何しようと思って ヒック、エ
でも、でも、死ななくでぼんどうによがっだよぉぉぉっっ!」
「…………」

目が合うや、涙目になったレイミーに飛び付かれた俺は訳が分からず問い掛ける。
だが、レイミーが泣きじゃくっている所為で殆ど聞き取れず、俺は暫くの間、困惑するしか出来なかった。



「で、その身体の所為で仲間からつまはじきにされて、ここに一人で住む様になったのか……」
「うん、それでボクがここに住み始めて初めて会った人間が、お兄さんだった訳」

―――暫く経って、ようやく気持ちが落ちついたのかレイミーはポつりポツリと語り始めた。
ある日、突然、人間の身体に変身できる様になった事。
しかしその所為で、群れの仲間からつまはじきにされ、追い出されてしまった事。
行く宛もなく、放浪している最中、仲間の事を思い出しては一人の寂しさに涙した事。
暫く方々を放浪した末に、つい先日辺りに彼女の言う秘密の隠れ家を見つけて、其処に住み始めた事。
そして、食料捜しをしている時にたまたま遭難していた俺を見つけて、勇気を出して友達になろうとした事。
……等などを語ってくれた。



「どうやらボク、人間と友達になる資格無いみたい。
結果的に、お兄さんの船をダメにしちゃった上に、3度も溺れさせちゃった訳だし。
……本当にダメだね、ボクって」

語った後、レイミーは笑顔を浮かべる。
その笑顔は何処までも寂しげで、悲しい笑顔。

「それじゃ、ボクは行くね? もうお兄さんに迷惑掛けたくないし……」
「俺は名は海原 通って言うんだ」
「……へ?」

立ち去ろうとしたのか、俺に背を向けて言いかけた所で、
いきなり俺に名乗り上げられ、訳が分からず振り向き首を傾げるレイミー。
その彼女に向けて、俺は優しく微笑を浮かべて言う

「友達の名は知っておくべきだろ?」
「…………」

最初は何を言っているのか理解できなかったのか、レイミーはぽかんとした表情を浮かべた後
やおらプルプルと身体を震わせ始め……

「うぼぁぁぁぁぁぁぁぁんっ あ、ありがどうございばずぅっ ど、どおるざん、
ボクと、ボクとどもだちになっでぐれるんどぇすねぇ!?」
「あ、ああ、友達になってやるけど……つーか俺の身体に鼻水擦り付けるの止めろっ!」

感極まって涙と鼻水を溢れさせながら俺に抱きつき、俺が怒るのも構わずに顔を擦りつける。
どうやらこいつ、見かけによらずすっごく涙脆いようで……うーむ、なんだか先行き不安だなぁ……。


―――そしてそれから、
俺は暇を見ては釣りをするついでに、レイミーの隠れ家のある場所へ遊びに行っている。
泳ぎを教えてもらったりしつつ刻折、発情したレイミーに搾り取られる事もあるが、それなりに楽しくやっている。

因みに、余談であるが、一度、八美を連れてレイミーのいる隠れ家に遊びに行った事があったが、
八美はレイミーがイルカと知るや、大きく取り乱した挙句、墨を吐いてその場からダッシュで逃亡、
(八美曰く、イルカは不倶戴天の天敵だそうだ)
それを嫌われたと勘違いしたレイミーに激しく泣かれ、対処に困った事をここに付け加えておく。

―――――――――――――――――――了――――――――――――――――――